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香川県ゲーム条例裁判第3回口頭弁論(2)

香川県ゲーム条例裁判の異例な点

 被告香川県の主張に触れる前にこのゲーム条例裁判で異例であると感じたことを述べておきます。
 まずは、裁判所の構成に女性裁判官が多いということです。女性裁判官は増えてきていますが、依然として男性裁判官の数が多いのが現状ですが、ゲーム条例裁判では、天野智子裁判長、深見菜有子裁判官、三好瑛理華裁判官と裁判所の構成がすべて女性であった口頭弁論もありました。比率として少ない女性裁判官が裁判長、右陪席、左陪席のすべてを占めるというのは中々ないのではないでしょうか。
 次に異例であると感じたことは、被告香川県の訴訟代理人です。地方公共団体が当事者となる訴訟では、その地方公共団体の顧問弁護士が訴訟代理人となります。その顧問弁護士は、様々な相談をお願いすることから地方公共団体の管内に事務所を構える弁護士が多いわけですが、香川県ゲーム条例裁判の訴訟代理人である3人の弁護士は、おそらく主任弁護士と思われる宮崎浩二弁護士が香川県に事務所を構える弁護士と、東京第二弁護士会所属の梶原明裕弁護士、愛知県に事務所を構える鈴木知洋弁護士となっています。地方公共団体の管外に事務所を構える弁護士が訴訟代理人となるのは珍しいのではないでしょうか。
 最後です。被告香川県の準備書面では、文章の中に(  )を加え、追加説明やセルフツッコミのような表現をなすことが非常に目立ちます。令和3年5月14日付け第1準備書面ではこのような表現となっていました。

第一 はじめに
 本書面では整理の便宜上(本件争点ないし問題の本質を分かりやすく整理するため)、まずは被告の主張を整理し(第二)、その後、訴状の請求の原因に対する認否・反論(第三)を行うものとする。
イ これに対し、原告らは「ネット・ゲーム依存症」が医学的な根拠をもつ疾病(病気)なのか不明であるとか、ネット・ゲーム「依存症」は疾病(病気)であり、ネット・ゲーム「依存」は事実(状態)であるなどと主張している(訴状8頁~)。
枚挙に暇がない(無数に挙げることができる)ところである。
 原告らの基本的人権に関する主張が仮に一部は認められるとして(認められることはないが、そのように仮定して考えたとして)、

疾病では裁判官に誤解されるおそれがあると考えて(病気)と追加して記載したのかも知れませんし、枚挙に暇がないという表現では裁判官が分からないと考えて(無数に挙げることができる)して記載したのかも知れませんが、「仮に一部は認められるとして」に(認められることはないが、そのように仮定して考えたとして)というセルフツッコミはどのような意図で用いられたのか理解することは困難でした。最近の準備書面ではこのように括弧内に説明やセルフツッコミを加えることが流行っているのでしょうか。

被告香川県の基本的人権に関する主張

 毎日新聞に被告香川県が幸福追求権が基本的人権に含まれないと主張したと当初報じられましたが、被告香川県の主張は一貫していました。
 すなわち、親権者が子のゲームの時間やスマートフォンの利用の可否、時間等を決定する自由なるものは、日本国憲法が保障する基本的人権ではない、親権、監護権、養育権といった民法上で認められているものは、日本国憲法において基本的人権として保障されているものではない、リプロダクティブ権は子どもをもつかどうかを決定する権利であり、主に、避妊、強制不妊、堕胎、中絶、代理母問題のような生殖医療といった事柄に関する問題で検討されるべき権利であって、原告らが主張するような子を産み育てる権利や家庭内においてゲームの時間を決定するといった個別具体的かつ枝葉末節に至る個々の子育ての在り方を決定する権利ではないというものが被告香川県の主張でした。したがって、訂正がなされる前の毎日新聞の報道は誤報であったことになります。