先行研究レビュー① 低所得層向け住宅政策はいかにして可能か?――民間賃貸住宅の零細家主に着目して
今日、ちょうど自分の興味に合致する論文を見つけたので、まとめてみることにしました。
それは、低所得層向け住宅政策はいかにして可能か ? ――民間賃貸住宅の零細家主に着目して――です。
別の文献の住宅政策のどこが問題化を読んでいた時に、民間賃貸セクターが低所得層の膨大な住宅需要に対応して、低廉な木造賃貸住宅を供給したとありました。
また、この木造賃貸住宅は、付近の地価水準からすれば低家賃で、ある種家主から借家人へ「補助金」を供給していたと言えるともありました。
わたしはなぜ「補助金」が供給されたのだろうと思い、文献探索をしていたのですが、先ほどの論文低家賃の木造賃貸住宅について言及していたので、気になり読んでみました。
この論文のリサーチクエスチョンは、「民間賃貸住宅の零細家主に着目した場合、低所得層向け住宅政策はいかにして可能か ?」であり、
結論は、「第一に、住宅供給の前提として、土地規制・都市計画を厳密にかつ具体的に定める必要があるということ であり、第二に、もし仮に現在も零細家主が賃 貸供給を担っているとすれば、彼らの生活保障 からは相対的に独立した建築助成を行う必要が ある。」
論文の読み方はまだまだ勉強不足ですので、リサーチクエスチョンと結論がこれでいいのか不安がありますが、ここかなと思いました。
論文を読んでいて面白かったのは、なぜ日本に低家賃の木造賃貸アパートが多いのかという疑問への説明です。
この疑問の解消の前にまず、木造賃貸アパートは低家賃である一方、そのあまりの狭さのために単位面積当たりの家賃は高いということを把握しておく必要があります。
木造賃貸アパートが建造された地域は、歴史的に若者世代や単身者に住宅の供給をしてきたのですが、持ち家の郊外化や、住宅公団、民間デベロッパーによる土地の買い占めにより、地価が上昇していました。
これを受けて、地主や家主は、土地利用密度と地代家賃の上昇によって対応しようとします。
しかし、借家人は低所得者が多いため家賃負担能力に限界があり、土地利用密度と地代家賃の上昇は、負担能力に見合うまで部屋を狭くするなど住居水準を切り下げるという形で実現されます。
ついでに、日本では、最低居住基準という考え方が弱く、部屋の質への規制が弱いです。
そのため、4畳半風呂なしなどのアパートが増えました。
こういった低所得者向けの住居は、公共賃貸住宅によって提供されるべきという考え方があります。
しかし、日本は歴史的に、中間層の持ち家や民間市場の賃貸を優先してきたため、社会的弱者向けの公共住宅は不足しており、民間の低家賃の木造賃貸住宅が社会的弱者の居住を提供しました。
次に面白かったのは、こういった木造賃貸住宅がより収益を望めるビルなどに建て替えられずに、低所得者に住宅を供給し続けた構造です。
家賃収入を自分の生活の基盤している家主は、空き部屋が出て家賃収入が減るのを嫌がります。
低家賃で低利潤なので、少し空き部屋が出たら赤字になります。
このことを嫌がる家主は、建物を建て替える時期に来ても、空き部屋が出ないように入居募集を継続します。
なぜなら、一人でも入居者がいると立て替えしづらく、建て替えようとすると、空き部屋の出る期間は長くなりがちです。
このため、かなり建物がボロボロになっても入居者を募集し、低家賃で低所得層への居住の提供が行われます。
このように、低家賃で低所得者に部屋を貸している家主ですが、その多くは1棟や2棟ぐらいしかアパートを持たない零細家主です。
しかも、この木造賃貸住宅は容易に商売を始められるので、過度な競争が起きて利益率が下がりやすいです。
しかも、インフレ率などを考慮に入れていない家主が多く、経営の苦しい零細家主が多いです。
こういった零細家主に、低所得者の住居確保を依存していても、なかなか居住改善は実現しません。
そのため、公共の住宅が必要だと思います。
この論文は、2000年代前半までのデータを活用しているので、最新の情報を探し、公共の住宅について日本がどうするべきか考えてみたいです。
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