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【特集】前島亜美が魅せる“一人十色”の彩り|朗読劇『青空』公演記念インタビュー

「あみた」の愛称で親しまれる前島亜美さん。現在は、アニメ&アプリゲーム『バンドリ!ガールズバンドパーティ!』『D4DJ』『ロストディケイド』で声優としても活躍するほか、数多くの映画や舞台作品に出演するなど、役者としての一面を輝かせている。

今回は、2018年から出演している⽅南ぐみ主催の朗読劇『青空』への思いとともに、過去から現在、そして“未来の前島亜美像”についての考えを聴いた。

前島亜美2021宣材写真

朗読劇『青空』あらすじ

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少年の遊び相手は柴犬と野良猫だった。時代は太平洋戦争真っ只中。物資不足に陥ったお国は庶民に「家庭で飼育している犬と猫を差し出せ」と命令を下した。愛国心に満ち溢れていた少年だったが…芝犬と野良猫の命を助けたいと願った―。

動物と一緒に過ごせる限りある時間を大切に

ーー2018年から朗読劇『青空』に出演されている前島さんですが、最初にこの物語と出会った際の印象はどのようなものでしたか?

私の実家でも猫を三匹飼っているのですが、『青空』では犬や猫の気持ちが台詞として起こされていて、初めて台本を読んだ際この作品に携われることに喜びを感じながらも「戦時下を生きた動物たちは本当にこう思っていたのかもしれない」と考えると、胸が苦しくなり、涙があふれてきました。

ーー劇中では軍国少年の大和、犬の麦、猫の小太郎を中心に物語が展開していきますが、三者三様の魅力がある役ですよね。

2018年の公演では軍国少年の大和を演じたのですが、国への忠誠心と両親や動物に対する思いの間で葛藤しながらも、最終的には国の命令に背いて犬と猫を守る道を選ぶ。そんな彼の純真さに私自身も心を打たれました。

また、2019年の公演で犬の麦を演じた際には、大和に対してどのように寄り添うかを考えるうちに、普段何気なく見ていた犬の動画の見方なども変わってきて。そうした飼い主に対する動物の感情を考えながらお稽古をするのも楽しかったです。

猫の小太郎は俳優さんが演じることの多い役で、ちょっと生意気なところや人間をあまり信用していない部分に猫ならではのツンデレ感があって作品に彩りを与えてくれる存在だなと思います。

ーー人間と動物、両者の視点で見るからこそ「戦争」をよりリアルに感じるというか。時間経過とともに変わっていく彼らの関係性にもじんとくるものがありました。

物語序盤の「大和が従えている犬と猫」という印象から、終盤になるにつれて大和のために狩りをして食料を持ってくるような「大和を守る犬と猫」へと変わっていって。大好きな人間のために頑張って尽くす彼らの姿に私も心を動かされました。

また、何度台本を読んでも「犬と猫の供出命令」があまりにも強烈で心苦しく、言葉にするのも難しいのですが、本編が終わったあとに流れる当時の少年兵や包帯を巻いた軍用犬の写真の映像を見た瞬間、現実としてあったことなのだと実感して。この作品を通じてあらためて動物と一緒に過ごせる限りある時間を大切にしたいと思いました。

いち個人として舞台に上がる責任の重さ

ーー「舞台に上がる」というところでは12歳からアイドル活動をされてきた前島さんですが、過去と現在を比較して舞台に上がることへの気持ちの変化は感じますか?

まったく別の感覚になっていると思います。たとえば、東京ドームシティホールや日本青年館ホールなど、アイドル活動をしていた際に立ったことのある会場で催される舞台劇やミュージカルに出演することがあるのですが、そのときに不思議な感覚になることがあるんです。

昔はグループで活動をしていたので、ライブのときにも横にはたくさんのメンバーがいて、お客さまからの視線なども含めて緊張が分散されていたというか。もちろん当時も真摯に全力でやっていたのですが、今振り返ると一人ひとりの責任の重さは軽減されていたのかなと思います。

舞台作品も共演者の方々と作り上げていくものではありますが、いち個人として舞台に上がるようになり、すべてのお客さまからの視線を感じながら、自分の役が伝えなければならないメッセージや託された台詞があるという責任の重さをあらためて実感しています。

舞台でお芝居をやらせていただくようになって6年目くらいになるのですが、新たな作品に出会うたびに毎回新鮮な気持ちで学ばせていただいていて、いまだに“慣れ”を覚えたことがないんです。

ーー舞台演劇にはその場のお客さまと一緒に作り上げていくというライブ的な側面もあるからこそ、“慣れ”がないのかもしれませんね。

そうですね。同じ作品でも公演する地方や劇場によって空気感がまったく違うんです。思わぬところで笑いが起こったり、泣いている声が聞こえてきたり。出演者側も回数を重ねるたびに新たな表現にチャレンジするなど、一つの作品に対してお客さまと一緒に心を向けている素敵な空間だなと思います。

ーーまた、今回の朗読劇のように声優として培ってきたお芝居を生かせる舞台も多いかと思いますが、声のお仕事を研究して身についたと感じるものはありますか?

声のお仕事に携わるようになったころ、「言葉が滑っている」ということをよく言われていたんです。粒立っていない発音は声優界でNGになることが多いので、アニメ作品をたくさん見たり、声優さんがナレーションをされているニュース番組やドキュメンタリー番組を見ながら研究をしました。そうして綺麗な発音でしっかり言葉を届ける技術を身につけさせていただいたことで、舞台の現場でも「前島さんの言葉はちゃんと聴こえるね」と言っていただける機会が増えました。

一方で、いくら滑舌よく喋ることができても、肝心となる台詞の言葉の意味が伝わらなければお芝居として成り立たなくなってしまうので、言語力の面でも声優のお仕事を通じて身についたことは大きいと感じています。現在は声優のお仕事以外では滑舌をそこまで意識せず、ナチュラルに伝えるための表現を心がけていて、その二面性を自分のなかで両立できるようになりたいと思っています。

自分でも想像していなかったような未来の可能性を楽しみたい

ーー声優としては『BanG Dream!』の丸山彩役を2017年から演じられていますが、役者として作品やキャラクターからもらったものも大きいのでは?

彩ちゃんは天真爛漫な努力家で、いつもメンバーみんなのことを信じていて、その物腰の柔らかさや前向きさは彼女からもらったものだと思いますし、Pastel*Palettesを通じて自分自身のなかにキラキラしたものが戻ってくるような感覚になるんです。アプリゲームのなかにバンドストーリーというものがあるのですが、キャラクターたちへの愛が深すぎて、新章が公開されるたびに泣いてしまって(笑)。

また、お芝居の面ではこの4年間で彩ちゃんの音域が掴めてきて、たとえば「・・・」のような息でのお芝居もそれまで私が触れてきた演劇にはない文化だったので、最初は迷う部分もあったのですが、彩ちゃんを掘り下げていくうちに「きっとこういう音が出てくる」という感覚が身について。日常生活でも彩ちゃんの音域に逃がすことで喉への負担が減って喋るのが楽になる瞬間があります。

ーー『BanG Dream!』キャストのみなさんは本当にキャラクターとの一体感がすごいですよね。何か心がけていることはあるのですか?

『BanG Dream!』の座長である愛美さんは私が声優を始めてから最初に仲良くなった先輩で、お仕事やお芝居の相談をする機会も多いのですが、あるとき「自分の人生とキャラクターの人生は関係ないからね」と、ふと口にされたことがあって。

キャラクターの人生という軸がしっかりとあって、そこに携わる声優の自分がいる。その関係性や感覚の捉え方が私のなかでとても印象に残っていて、お芝居に悩んだときにその言葉を思い出すことで、冷静になって自分の役と向き合うことができるんです。愛美さんに出会うことができて、本当によかったなと思います。

ーーそうした出会いも含めて役者としての成長につながっているのですね。今後さらに成長を重ねていった「未来の前島亜美像」として考えていることはありますか?

声優を始めたきっかけもひょんなことだったので、本当に人生何が起こるかわからないというか。一つのことに目標を絞ってやり通すことも素晴らしいと思うのですが、私は「自分でも想像していなかったような未来の可能性を楽しみたい」と考えているんです。

アイドル時代は歌やダンスをメインに活動していたものの“本職”というものがなく、ドラマに出ればしっかりとしたお芝居を、雑誌に出ればポージングを、バラエティー番組に出れば爪あとを。そうして必死にやってきた10代の経験が今に生きていると思うんです。最近はジャンルの垣根を越えて活動されている方が増えていますが、私も自分の肩書きを決めつけず、できることをやっていきたいなと。

また、お芝居に関しても特定の媒体を決めることなく、あらゆる角度から可能性を広げていくことで役者としての実力をつけていきたいと考えています。さまざまな作品や先輩方、応援してくださるファンのみなさまとの出会いのなかで「人間力」を磨いていきながら、役者としての表現を突き詰めていくことが今の私の夢ですね。

ーー「十人十色」という言葉がありますが、前島さんの活躍を拝見していると本当に多彩で「一人十色」という言葉が浮かんできます。最後に、朗読劇『青空』の公演を楽しみにされているファンのみなさまへのメッセージをお願いします。

『青空』は動物たちの存在や日常を尊く思えるような作品となっております。また、声優としての私を知っていただいているみなさまにも「舞台ではこんな表現をしているんだ」ということを知っていただけるような機会となれば幸いです。よろしくお願いいたします。

インタビュー・文:吉野庫之介


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