第3話:見てくれよ。この元気なエンジン。
ぽブ男はこう見えて中型バイクの免許を持っている。
大学生のときには
知り合いから250ccのアメリカンなバイクを譲り受け、
毎日のように乗り回していた。
昔はほぼ毎日乗っていたバイクだが、
最近はなかなか機会がなく
1年に2,3回乗る程度になっている。
休日、ひさびさにバイクに乗るチャンスだ。
そこまで遠出をする気にはなれないが
バイクで20分程度のところに
人気のスーパー銭湯がある。
そのくらいならちょうどいい距離だし
一緒にお風呂でリフレッシュもできて
最高の休日になりそうだ。
清々しい休日ライフを求めて
ぽブ男はバイクに跨った。
ブロロロロロロ・・・・
風を切ってぽブ男は走る。
やっぱり晴れた日の
バイクは気持ちいなぁ。
ブロロロロロロ・・・・
(走り出して10分)
ブロロロ・・ロロ・・ロ・・・
ん?
エンジンの様子がおかしい。
ブロロ・・ロロ・・ブル・・
え?
いや?
あれ??
ぷすん………….
まさかのエンジントラブルである。
なんで休日にかからないんだよエンジン!
頑張れよ!頼むよ!
と、再度エンジンスタートに挑戦するぽブ男。
ブルルンブルルンブルぷすん・・・・
ブルルンブぷすん・・・
ブぷすん・・・
ぷす・・・
・・・
ついにエンジンからの
応答すらなくなった。
目的地と自宅のちょうど真ん中で
トラブるあたりが
さすがぽブ男である。
これはもう
プロに任せるしかない
と、ロードサービスへ連絡。
走行中に様子がおかしくなった
と伝えると
「あーそれはすぐには直らないかもしれませんね」
と悲しい一言。
レッカー移動となると
2〜3万がかかるらしい。
1000円弱のスーパー銭湯で
清々しい休日にするはずだったのに。。。
急に2万円払って
レッカー車で帰宅するという
油臭い休日になるなんて。。。
さすがのぽブ男といえども
切なさを抑えきれない。
こんな形で経済を回したかったわけじゃないのに。
とほほ。。。
蚊に食われながら待つこと30分。
業者さんが到着。
「こんにちはー。大丈夫ですか??」
オレンジ色の作業着姿で
気さくそうな汗だくのおっちゃんが
駆け寄ってきた。
気持ち的にはあまり大丈夫ではないが
僕はこのおっちゃんの収入に貢献しているんだ!
えらいぞ、自分!
謎の励ましを心の中でつぶやく。
ぽ)
「いやー、まいっちゃいますよね」
お)
「症状はどんな感じですか??」
ぽ)
「エンジンがかからなくて。ボタン押しても反応しないんですよ。」
そう言ってぽブ男は
オレンジのおっちゃんに
症状を見せるため
エンジンボタンを押した。
ブルルンブルルンブルルルルルル
は?
思わず顔を見合わせる
蚊に食われたぽブ男と
オレンジの汗だくのおっちゃん
沈黙の数秒。
一旦エンジンを切り、
もう一度やってみる
ブルルンブルルンブルルルルルル
もう一度、顔を見合わせる
蚊に食われたぽブ男と
オレンジの汗だくのおっちゃん
ぽ)
「エンジン、かかりましたねぇ」
原因はよくわからないが
ぽブ男が蚊に食われている
30分の中でエンジンが
回復したらしい。
もうぽブ男には
申し訳なさしかない。
せっかくオレンジのおっちゃんに
来てもらったのに。
このおっちゃんからしたら
30分かけて
汗だくになりながら
駆けつけてきたのに、
ついてみたら
よくわからない初対面のぽブ男に
元気にバイクのエンジンがかかるのを
ご紹介されただけである。
結果、レッカー移動はしないことになり
おっちゃんは帰って行った。
レッカー代はかからなかったが
キャンセル料として、
8千円ほど持って行かれるらしい。。
まあそれもこの申し訳なさが
薄れるなら仕方ない。。
颯爽とバイクに乗って、
銭湯で清々しい休日にするはずだったのに
蚊に食われながら
30分立ち尽くし、
8千円払ってオレンジの汗だくのおっちゃんに
バイクのエンジンが元気にかかるところを
ご紹介する休日になってしまった。
ものの手入れはちゃんとしようと
心に誓うぽブ男であった。
面白かったなーとか、もっと続きが読みたいなーとか、思っていただけた稀有なあなた。あなたのサポートがぽブ男の生きる力となります。なにとぞ。