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用心棒日月抄

本のこと。

チャンバラが好きだった。
銭形平次、遠山の金さん、大江戸捜査網、桃太郎侍、座頭市、江戸の鷹、雪姫隠密道中記、水戸黄門、必殺シリーズ・・。

そして大人になって読んだ時代劇のお気に入りのひとつが、
この「用心棒日月抄」。
藤沢周平先生の名作。出会えてよかった。
主人公は地方から江戸に来た脱藩浪人。金がない。追っ手との闘争もある。それでも暗い悲壮感がないのは、随所に描かれている主人公の人柄に依るところが大きい。
懐具合や米の心配をしたり、散らかった部屋を見て反省したり、口入れ屋(仕事斡旋業者)にいいようにあつかわれたりと、人間らしい。
剣豪でも人格者でもなく、愚痴もこぼすし嘆きもするが、誰も恨まない。
隙もあるけど人間としてちゃんとしている。うらやましい。
女性も、とても素敵に描かれている。芯がありつつ優しい。
さてこの本、最近よく聞く「異世界もの」的な感もある。
地方から来た浪人にとっては江戸の町はまさしく異世界。口入れ屋で仕事を受けて日銭を稼ぐ所は冒険者ギルドっぽい。受付嬢はいないけど、若い人にも読んでほしい。
もちろん時代劇として秀逸で、お家騒動、草の者、剣鬼、辻斬り、用心棒といった外せない要素もしっかりあり、そして、赤穂浪士まで絡むのである。
続編もよかった。また脱藩するのだ。
単身赴任って大変。

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