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使用PC紹介・その2:ハードウェアコンポーネント編(2020/07/03時点)

2020年も半分を過ぎ、7月に突入しました。皆様、いかがお過ごしでしょうか? 今日も元気にPCをバラしたりしていますか? 熱暴走でドシドシ再起動かけまくってますか? そんなバカはいない? そんなバカな!

さて、そんなわけで前回のPC紹介に引き続いて第2弾、サブ……というよりは「用途を使い分けて」使用しているPCのご紹介です。今回もハードとソフトを多少分けての2枠構成にて。

VR使用に完全特化、「VEGA2700X」

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はい、そんなわけで早速ご紹介していきます。まずは使用パーツ等のコンポーネント一覧から。

CPU:AMD RyZen7 2700X
M/B:ASRock X470 MasterSLI
MEM:G.Skill FlareX DDR4-3200 8GB*2
VGA:AMD Radeon RX VEGA 64(リファレンス・MSIパッケージ品)
クーラー:CoolerMaster MasterLiquid ML240L RGB
PSU:RAIDMAX RX-800AE-M 800W
M.2 SSD:Patriot SSD 256GB SCORCH M.2 2280 PCIe Gen.3 x2
ラジエターファン:CoolerMaster MF120L RGB 120mm(キット付属品)
ケースファン:ケース標準付属120mm(LED無し)
ケース:Cooler Master MasterBox Q500L

各製品名をクリックでAmazonの販売ページへジャンプします。一部パーツは同一品が販売されていなかった為、同等品、同メーカー品にリンクしています。

こちらのPCは前述の通り「VR使用に特化」という構成の為、特にストレージが顕著ですがパーツ点数を少なく抑えています。M.2接続のNVMe SSDですが、バス幅はx4ではなくx2となっており、読み書きの速度もそれなりに低速といえば低速。ただSATA接続よりは確実に速度は出ています。メインマシンと比較して、ケーブル類の本数は明らかにこちらのほうが少なくなっており、多少そこを狙った構成で組み立てました。各種ファン類に関しても、ラジエター用2本、ケース背面1本の3本がケーブル経由となっており、電源(PSU)、VGAクーラー含めて全部で5本。ストレージは前述の通りM.2一本のみの為SATAケーブル等は無し、LED等も一本ストリップを入れてはいますが、基本的にはM/B上に行き交う少ない本数のケーブルだけで構成されています。メンテナンスだけでなく、通常稼働時にも有利になる「パーツ点数の減少」を最大限に活かした、という狙いのPCです。

本PCに関しては、以前ケースを主役にしてご紹介しているので、そちらもご参照いただければと思います。

こちらの記事ではケース以外の各種パーツ類の紹介、後編のソフトウェア設定編に主軸を置いた形で紹介しますが、一部上記記事と重複する部分が出るかも知れません。予めご承知おきいただければと思います。

その前に:実際の設置・使用環境をバッサリと

さて、そんなVR向け特化のPCである本機、設置スペースの全体像はこんな感じです。

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(180cm幅のオフィス向けデスクに機材一式をドカンと)

元々この場所にはDJの自宅機材のみが配置されており、写真左側に写っているスピーカーもきちんと左右に配置していました。その後 #VRChat 等でアバターDJとして配信を行うにあたって、必要な機材一式を再配置した結果、こんな状態に。とりあえずディスプレイの枚数を数えて頂ければアホっぽい事になるのですが、左端のノートPC、中央上部メイン、中央下部左サブ、下部右iPad(DJ向けエフェクター用)、右手前上Androidタブレット(配信時のシーンスイッチ用)、下Androidタブレット(配信状況確認)、そして一番右にあるPC本体の上のディスプレイ(隣の部屋で配信を行っているPCのミラーリング)といった具合に、よりにもよって全部で7枚も置いてあります。ここからさらに一部ディスプレイではウィンドウを複数展開する事になる為、モニタリングとしては物理7枚、論理10窓(+VRのHMD)といった状態になります。もっとも、これは配信等を行う際の最大値で、普段遣いでは中央上下2枚、DJプレイをVRChatで流すために左のノートPC、DJプレイそのもので使うエフェクターとしてiPadくらいな感じです。今回の記事に関してはVRChatに関する内容は割愛する為、詳細な部分はまたの機会となりますが、こうして写真を見てみると、一番右に置いてあるPCが「MicroATX系のミニタワーではなく、通常ATXサイズのM/Bが入っている」とはとても思えないサイズ感です。世の中怖いです。ホント怖いです。

用途を特化すればするほど、内部構成はスッキリした仕上がりに

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(PCケース内部。ほぼこちらの面だけでパーツ類は完結)

それでは、実際に内部パーツ類のご紹介。ケースに関しては大々的に前回の記事で紹介をしている為、今回は軽く触れつつも他のパーツ周りにフォーカスを当てていこうと思います。まずはザックリと上の写真にて。先述した通り、パーツ点数自体の最小化、かつケーブル類の最小化を同時に行ったような形で、変態クラスの小型ケースにしては内部がスッキリしています。ケーブル類としては、以下のようになっており、必要最小限での組み込みとしています。

・ATX20+4ピン:M/B・メイン
・ATX4+4ピン:M/B・CPU
・電源・リセット・アクセスランプLED類:ケースフロントI/Oパネル
・USB3.0ピンヘッダ:ケースフロントI/Oパネル
・ビープスピーカー:M/B
・オーディオピンヘッダ:ケースフロントI/Oパネル
・簡易水冷ポンプヘッド:M/B対応端子
・ラジエター冷却ファン:M/B・CPUクーラー端子
・ケース背面排気ファン:M/B・ケースファン端子
・VGA補助電源8+8ピン:VGA
・ポンプヘッドLED:CPU向け12V4ピン端子
・SSDヒートシンクLED:12V4ピンアクセサリ向けRGB端子
・ケース下部LEDストリップ:SSD向け端子より分岐

このような構成で、内部ポートとしてはSATA、USB2.0ピンヘッダ、ARGB用5V3ピンヘッダ等は未使用。M/BとしてはチップセットヒートシンクにLEDが内蔵されていますが、一応光らせてはいるものの、VGAに隠れてほとんど見えません。元々搭載しているパーツが少ないので、完全に必要最小限のポート・ケーブルのみを使用しています。

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(ケース右側面側・裏配線スペース)

それらの影響は「裏配線スペース」にも出ており、PSUから伸びるケーブルで余った分が入っているくらいなもの。ファン分岐ケーブル等もこちら側に回してありますが、ケーブルを束ねるまでもなくスッキリとしています。尚、ケース上方に白いケーブルが走っていますが、これはCPU向けの8ピンケーブルを延長したもの。ケース構造とM/B仕様の関係でこの部分だけどうしても長さが足りなかったので、唯一の延長ケーブルとして余り物を突っ込みました。ケース自体の右側スペースが通常のケースよりも多少深く取られており、フラットケーブルを横にした状態で配線を流せる事から、ねじれなども発生しづらくなっています。尚、SATA接続の2.5インチドライブに関しては、ケース背面方向にマウントパネルが2つ縦に並んで装備されており、ここに1パネルあたり2台の2.5インチドライブを装着可能。スペースもゆったりしているので、必要となれば比較的簡単に取り付けは可能でしょう。

必要スペックを稼ぎつつ、安定性を最重要視(ASRock・CoolerMaster)

メインコンポーネントとなるM/B周りに関しては、RyZen7 2700Xを導入しつつ、ASRock製「X470 Master SLI」を選択。本製品を導入しようと検討していた同時期に、同社のバカ売れ商品となった「B450 Steel Legend」が発売されており、CPUでRyZen7 1700Xを使用していた時には同モデルのMicroATX製品を使用していました。

この製品も400番台のチップセットという事で、2700Xを走らせるには全く問題のない製品だったのですが、ちょうどコンポーネント全体を入れ替えるタイミングがあった為、M/BもこのSteel Legendと他製品とで悩んでいたタイミングでした。現在メインとして出ている「B550」系、もしくは「X570」系の「500番台チップセット」で、Steel Legendシリーズも若干の路線変更をしたようで、元々は「ミドルクラスのチップセットを使用しつつ耐久性等を持っており、他社製同価格帯に比較して圧倒的にコストパフォーマンスが高い」という特徴だったものが、「ハイエンドモデルのチップセットを採用しつつ必要な部分に注力し、全体的なデザインを踏襲したミドルハイモデル」といった性質に変わったように思います。正直な話、X570でSLが出るとは思っていなかった事と、X570モデルでは率直に言って他社製品との価格的競争力は若干ながら下がってしまったように思います。

そんな事もあってか、また500番台のミドルレンジ「B550」の対応CPUが第3世代以上に限定されてしまった事が原因か、B450版のSLは未だにバカ売れしている様子。店頭でもたいてい在庫切れです。

で、このSLシリーズと悩んで結局導入した「X470 MasterSLI」ですが、この当時X470系のSLが無かった事と、使用しているCPUがいわゆる「X型番」だったこともあり、将来的に細かなパフォーマンスセッティングが行える事を優先して、チップセットから見て選択しました。……そのつもりだったのですが、第2世代RyZenのX型番を使用していれば、細かいパフォーマンスセッティングに関してはB型番のチップセットでも同等に対応していたという事で思わずズコーだったのですが、PCIeGen.3の本数(X470:2本・B450:1本、チップセット入出力の数、以下同)、同Gen.2の本数(X470:8本・B450:6本)、SATA3の搭載数(X470:4本・B450:2本)、USB3.0Gen.1(X470:6本・B450:2本)といった、接続・拡張端子周りにも大きな違いがあります。上記の数字は最初に記した通り、全て「チップセットとして」の数値で、実際には別チップを使用してUSBやSATAなどを増やしているのですが、チップセット直結端子が多く使えるならそれに越したことはありません。また、MasterSLIはLED照明等の派手さこそないものの、全体的なアセンブリパーツの選定やヒートシンクの配置等が工夫されており、電源周りも含めて耐久性が高い、という特徴があります。現在のASRock製M/Bラインナップとしては、「Extreme」ラインに統合となった「Master」シリーズですが、基本的な設計としては「各アセンブリの配置はSteel Legendに近く、使用コンポーネントは上位モデル譲り」といったもので、安定性や耐久性は否が応でも期待出来るボードになっています。

それに組み合わせるCPUは先述の通り「RyZen7 2700X」で、第2世代RyZenとなります。中身としては「Zen+」アーキテクチャの採用、及び14nmプロセスの製品で、その後登場した3000番台(第3世代)で「Zen2」と7nmプロセスに移行した事から、初代Zen系からの途中経過、といった位置づけになるのでしょう。CPUとしては8コア16スレッド、TDP105Wと、2000番台の最上位モデルとしては順当なコア・スレッド数、決して低消費電力とは言えないTDPという事で、今から無理やり第2世代を入れる必要は感じません。第3世代では上位モデルとして「9」が追加され、最大16コア・32スレッドまでのバリエーションが出ていますが、「7」シリーズでも3700X、3800Xというモデルで8コア16スレッドの製品が出ており、メインストリームとして使用するならこちらを選んでおけば間違いないと思います。

3000番台のRyZen7ではこの2製品のみとなっており、主な違いは動作クロックとTDP。いずれも3700Xのほうが低くなっており、価格的な部分を考慮した上でいずれかの製品を選択すると良いかなと思います。どちらの製品も7nmプロセス、チップレット設計、PCIe4.0に対応している点は変わりありません。

さて、あとはそのCPUを冷やすクーラーとなるのですが、2700Xには結構ご立派な空冷クーラーが標準で付属されており、よっぽどOC使用などでガンガン発熱させるような事がなければ、そのまま使えてしまうようなセットになっています。ただ、今回は特にVRでの長時間駆動を前提としていた為、多少オーバークール状態になろうとも水冷化する事にして、既に使用していて動作上問題なく流用が出来たCoolerMasterの240mm製品を使用。

実を言うと、簡易水冷キットに関してはCoolerMaster製以外使用した事がなく、他社製品だとどれくらい違いが出るのか気になる所ではあるのですが、なんでまたCoolerMasterを選んだかと言うと、「無駄な装飾が無くてリーズナブルだった」から。ポンプヘッドや付属ファンがLEDで光ったりはしますが、やれOLEDだのやれインフィニティミラーだの、「性能に寄与しない部分で凝っててお値段高め」みたいな製品が多い中、至ってスタンダードでシンプルな製品という事で使い続けています。OLEDに関しては温度表示などができそうで便利そうっちゃ便利そうなのですが、だいたいこのへんは「必要な機能が過不足無く載っていて、コストと見合っている」という製品を選ぶようにしています。DIY水冷化する際には別かもしれませんが、少なくともCoolerMaster製の水冷キットはメインPC(ThreadRipper向け)、本PC(メインストリーム向け)の両者で充分以上の性能を発揮してくれています。

本製品もそうなのですが、負荷のかかる作業を開始してから割と早い段階で、ラジエターファンからの排気が熱を持ってきます。元々爆熱どんと来いなAMDのCPUなので当たり前っちゃ当たり前なのですが、CPU温度がある程度安定した状態でラジエターからの排熱が早々に熱を持つというのは、「CPUからポンプヘッド、ヘッドからラジエターへの熱移動が確実に行われている」という事の証左でもあります。現時点ではラジエター側で排熱が追いつかずに飽和している様子も見られず、好ましい状況でCPU温度が推移している為、信頼性という点では全く問題なさそうです。ポンプヘッドは常時最大回転数で回していますが、こちらもノイズ・異音は無く、安定して稼働しています。

ただ、これは他社製の簡易水冷キット(AiO水冷キット)にも言えることですが、おおよそ製品寿命は5年程度と言われています。稼働するポンプヘッドの寿命よりも前に、内部に封入されているクーラント(冷却液)が揮発・蒸発してしまい、冷却効率が落ちるなどの理由がメインのようで、これは致し方ない点であろうと思います。DIY水冷のように「リザーバ周辺で圧力を抜くことが出来る」という設計でも無いため、高温時の圧力を抜くための機構が大抵の場合備わっており、そこからクーラント自体も揮発してしまいます。AiO水冷を使用している場合には定期的に温度チェックを行い、冷却効率が落ちてきた様子が見られれば、大人しく置き換えを検討するようにしましょう。

さて、CPU周りやVGA含め、例によってOC状態で使っているか否かについてはソフトウェア編でお届けする事にしますが、ザックリ言ってしまえば「どちらも定格動作」で動かしています。一時的なブーストがかかる事、或いはそのブースト状態が継続する事はありますが、あくまで製品設計上の動作です。

OCメモリながら既定クロックでは動作せず(G.Skill)

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使用しているメモリはG.Skill製、AMD向けに最適化された3200MHz動作のOCメモリモジュール。8GB*2の2枚セットを導入し、16GBで動作させています。こちらも使用用途を考慮し、4スロットフルに使用するまでも無いと考えての選択だったのですが、思いの外VRChatがメインメモリも食い始めるようになったので、もう2枚追加しても良いかな、と考えるようになりました。

で、本製品は前述のとおりOCメモリ、かつAMD向けの製品という事で、XMPプロファイルでも3200MHz駆動の設定が書き込まれています。ただ、残念ながらこのクロックでは動作しない(POSTまで進めない)状態で、最終的にM/B側で安定動作クロックを探らせて、2666MHzで駆動させています。モジュールの製造タイミング的に怪しい所ではありますが、おそらくネイティブで2666MHz駆動品であるものを、OC設定で3200MHz動作可能としているのでは無いかと思います。

PC紹介第一弾でもお話した「メモリのくじ引き」に負けた格好になるのですが、CPUとしては最大で2933MHz対応となっており、メモリのスペックシート、CPUのスペックシート、実動作環境の全てでズレが出ています。ちなみにメインPCで「2666MHzメモリを2866MHzで動かしている」という状況を鑑みて、2866MHzを手打ちしてみましたが、やはり起動できない状態でした。

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(RyZen 7 2700Xのスペックシート)

単純にくじ引きに負けたというだけの理由でもなさそうで、このへんはM/Bの影響も出てきます。CPUやメモリが駆動可能なクロックであっても、M/B側の仕様、もしくは相性等で弾かれているケースも。

CPUとしては「Pinnacle Ridge」が第2世代RyZen(Zen+系)に該当するのですが、他メーカーモジュールを見渡しても、全体的に「メモリ側が謳っているクロックよりも低い」という製品が多く見られます。今回のG.Skill製品では、逆に「公称通りのクロックで動く」のがほとんどだったので、環境的な問題だろうと判断しています。今回は後述する通り、M.2 SSDでx2モデルを使用していることもあり、全体的なクロックレイテンシが大きいのかも知れません。

そんなわけで、クロックこそ2666MHzですが、こちらも導入時点でのメモリエラーテスト(memtest等)含め一切の不具合が見られず、安定して動作しています。本来3200MHzで動作することを前提として作られたのであろうヒートシンクのおかげもあるのか、メモリ自体が熱を持って不安定になる、といった様子も見られません。中身のメモリモジュールはともかく、G.Skill製メモリはデザインだけでなく、スペック面でも広い対応ができており、ここ数年では鉄板製品の仲間入りをした感もあります。G.Skill自身でDRAMの製造は行っていないので、DRAMの調達が上手なんだろうなぁと。エルピーダとかマイクロンの自社DRAM搭載モジュールを使ってみたいな、なんて気持ちもありますけどネ。

SSDがPCIe x2製品である影響は割と大きそう

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(VGA上部のヒートシンク側でなく、下部のスロットを使用)

本機唯一のストレージとなるM.2 SSDには、NVMe対応のバス幅x2製品を使用しています。実はこのモジュールが私にとって初めてのM.2 SSDで、当時まだx4が割とお高い時期だった為に、安価なx2製品を導入したのでした。上の写真にもあるのですが、M/B側(X470 MasterSLI)にはVGA上部、CPUとの間部分にヒートシンク付きのM.2スロットが一つ、VGA下部、写真で白い帯のようなものが見えている部分にも一つ、計2つのスロットがあります。ただ、VGA上側はx4のみの対応となっており、VGA下がx2/SATA対応のスロットとなっている為、モジュール自体は下に取り付けています。ヒートシンクをつけたままにしているので目立ちませんが、じつはお飾り状態よー的な。下スロットの白い帯のようなものはLEDライティングで、それをコの字に挟むようにしてヒートシンクを取り付けています。LEDは12V4ピンのタイプで、アドレサブルではありません。

バス幅が単純に半分となるx2製品、当然ながら転送速度も落ちるわけなのですが、その分発熱量が低いというメリットがあります。x4製品ともなると、PCIeのVer.3時点でもコントローラチップがヒートシンク無しで100℃を叩きそうになるほど熱を持つ製品があったりしましたが、本製品はその点では温度上昇も天井も緩やかで、扱いやすい製品です。ただ、現在ではx4製品が完全に主流で、ヒートシンクや冷却機構もSSD自体、M/B側、アクセサリ等で充実しているので、無理にx2製品を選ぶ必要は感じません。かくいう私も近々x4タイプに置き換えたいなと考えているところです。というのも、元東芝こと現キオクシア(KIOXIA)の製品が販売開始となった為。東芝大好き人間なので。

ちなみにメインPC同様、こちらのPCでも容量は256GB製品を使用しています。「250GB」「256GB」等で製品によって容量の表記が揺れているのは、リザーブエリア(エラーセクタ発生時の代替セクタ)を持っているかどうかの違い、が大きな所。実際には256GBのモジュールを搭載していても、例えば6GB分をリザーブエリアとした場合、ユーザが実際に使用可能な領域は250GBのみとなります。HDDでの表記と違い、SSDで切りよくピタッとした数字で表記されている場合、大抵はこのリザーブエリアの存在の有無であると判断して問題ないかと思います。

さて、x2タイプのSSDを使用している上での問題点として、Windows10の「ファーストブート(FastBoot)」時に不具合が出る、もしくは機能しないというものがあります。今回使用している「X470 MasterSLI」をはじめ、ASRock製M/Bの場合、このファーストブートが有効な状態の場合、環境次第で「PCの電源ボタンを押してから10秒以内にWindowsのログイン画面が出る」という強烈なブート速度を叩き出すのですが、x4タイプのSSDを使用していた時には機能したものの、x2タイプに置き換えた所、このファーストブート機能が働かなくなりました。具体的な点では、今までファーストブートが機能していた時には「POST画面(デフォルトではASRockロゴ画面)が視認出来るかできないかくらいの勢いですっ飛ばされて、気づいたらWindowsが上がっている」というレベルのスピード感だったものが、x2環境では「POST画面がじっくり出て、Windowsのブートロゴもそこそこ」といった感じ。この辺はTwitterのASRockJapan公式でも言及されていたと思うのですが、どこかにボトルネックとなるパーツが入っていた場合、そこで引っかかってしまう為にファーストブートが機能しない、もしくは機能していても遅いという状態になる様子。特に困ることではないのですが、一度あの爆速ブートを体験してしまうと、どうにもウズウズしてしまうのは否定しきれず。

ちなみにこの爆速ブートですが、M/Bメーカーごとにブートシーケンスの流れが異なっているようで、メインPCで使用しているASUS製のM/B(ROG STRIX X399-E GAMING)では、TR環境、かつx4モジュール使用にも関わらず、POST画面が表示されるまでの時間とPOST画面処理にそれなりに時間がかかっており、ASRock製ボードと比較して明らかに速度が遅いという状態にあります。この「POSTで時間がかかる」という点については、「各デバイスの状態(不具合等含む)を確認している」のがPOST画面なので、その確認に時間を要しているというもの。ASRock製のM/Bの一部では、BIOS側からファーストブートを指定した状態の場合、「設定後最初の一度は全チェックを行い、2回め以降は必要最小限のみチェック、他は前回と同じであると判断してPOSTを完了させる」という流れになっているようです。パーツ追加・交換等の構成変更を行った場合には当然再度POSTチェックが入るのですが、2回目以降はやはり爆速で立ち上がります。変態と名高いASRockですが、ここ最近ではハード・ソフトの両面で「必要な事を、必要な分だけ、最小限にこなしてパフォーマンスを出す」という路線になっているようにも見えて、なかなか面白いなぁと思うベンダーではあります。
(※ちなみに最近では、Intel向けチップセット搭載の一部M/Bで「本来OC設定を打つことが出来ないCPUでもOC出来る」という、Intel側の提示する仕様を逸脱した動作が出来てしまった為にお叱りを食らったとかなんだとか)

POSTを抜けてさえしまえば、x2だろうがx4だろうがパーツの構成にあった動作をしてくれるので、POSTを抜けてWindowsが正常起動してくれれば基本的には「x4より遅い」以外に問題は無いものと思います。ただ、ほぼ同一環境の状態でx4のSSDを使用していた時にはそうそう発生しなかったBSOD(「ブルースクリーン」)がx2環境で割と高い頻度で発生するので、VGAやM/Bのドライバ周りでコケていないのであれば、これが影響している可能性もあります。いずれにせよ、ここは近いうちにx4タイプに置き換える予定。

CPUとの組み合わせとしては「同世代のフラッグシップ」となるVEGA64

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(搭載VGAはVEGA64リファレンス。パッケージはMSI)

元々はVR動作の最低動作条件から少し余裕をもたせた、「Radeon RX 580」を使用していたのですが、たまたま中古で状態の良いVEGA64リファレンスが出てきたので、試しにと乗り換えてみました。

ASRockがVGA市場に参入し、現時点では全てRadeon系だったということもあって、ASRockのRX580を導入。実はASRockのRX580ラインナップには「D型番」と「X型番」の2つがあり、どちらもOCモデルながら若干のクロック違い(X型番が高い)があり、かつ補助電源もD型番で6ピン、X型番で8ピンという違いがあります。リファレンスのRX580では8ピンとなっていた為、OCモデルにも関わらず補助電源を減らす方向に持っていけたのは、「実質的に480のリネーム」と言われた580の特性なのかもしれません(480リファレンスは補助電源6ピン)。ともあれ、2万するかしないか程度のボードでVRもガリゴリ動かすことが出来、ゲームだけでなくGPGPUとしての能力も非常に高く、コストパフォーマンスは絶大でした。問題は私がRX580を買った3日後にRX590が+2000円くらいで出たというタイミングの悪さ。泣きました。

このRX580の前は黄緑もといnVidiaのGeForceGTX970を使用しており、そこでVGA性能とVR動作の関係性を確認した上でRX580へ移行、一通り問題のない状況を堪能した上で、先の通り中古で程よいのが出てきたVEGA64へ乗り換えました。

リファレンスを使ってみたかったということもあった為、ベンダーオリジナルがある中で4万前後出してこちらに乗り換え。現在でも元気に動いてくれています。が、問題は私がこの子を買った1週間後にVEGA系ボードが思いっきり値崩れしたというタイミングの悪さ。MSIからはリファレンス準拠の外排気クーラーを搭載しながらOC化されているボードが出ていたのですが、こちらが新品で38000円を下回っていました。VGA購入のタイミングはつくづくいつも悪すぎます。誰かなんとかしてください。

さて、そんなわけでCPUと合わせると、「第2世代RyZen時点では(Radeon VIIを除いて)フラッグシップ」という環境ができあがりました。nVidia系では冗談にならないような値段を出さないとフラッグシップなんて手に入りゃしないのですが、そこはコストパフォーマンスのAMDです。VGAの性能としては、ベンチマークスコア、実際の視認状態においても GTX970<RX580<VEGA64(<RX5700XT)と順当に向上しており、VRでVGAをフル稼働、5時間も6時間もぶん回しても安定稼働してくれています。PSUは800Wなのですが、HDD等の「割と電気食うパーツ類」が載っていない事もあって、電源周りでのトラブルも無し。ただしブロアーファンは全力で回るととんでもない音を立てます。この辺はブロアーファン共通の悩みどころなのでまぁ良いとして。CPUとのバランスも良いらしく、きちんとそれぞれで処理を割り振って仕事をしてくれています。補助電源ソケット付近にある「タコメーター」と呼ばれるLED部分でVGAの消費電力をリアルタイム、かつ視覚的にわかりやすく見せてくれる為、モニタリングツールを使わずとも大雑把な負荷のかかり具合は判断出来ます。VEGA系はVIIを除いてかなり値崩れしてきているので、もう一枚乗せてCrossfire環境試してみたいかな、と思うこともありますが、ことVRコンテンツに関しては「そもそもCrossfire/SLIに対応したゲームタイトルがほぼ無い」という状況もあって、最終的には一枚で稼働中です(※nVidiaがリリースしている「nVidia FunHouse」というミニゲーム集ではSLI対応の様子。当時フラッグシップの1080Tiを2枚載せても激重、なんていう鬼畜設定があったとか)。

ケースが変態ゆえの苦難

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(どっちもATX対応? ラジエター設置可能? 何言ってんの?)

さて、構成パーツの少ない本機、だいたい最後くらいの紹介になりますが、ケースとPSUについて。上記Amazonリンクでは1000W電源となっていますが、使用中の電源は同じRAIDMAXの800WGold認定のフルプラグインです。

ケースに関してはレビューを投稿してから、何故かやたらバズってるらしいので以下記事に丸投げします。4月に投稿してかれこれ3ヶ月になりますが、毎週500PVが固いレベルでお読み頂いているようです。みんな変態PCパーツ好きなんですね

PSUに関してはドスパラさんで購入して使用していた製品で、80PlusのGold認定、フルプラグイン、800Wの大容量にも関わらず8000円を切っていたというお値打ち品。環境から見て容量の50%は確実に超えた状態での動作であると思いますが、これといったトラブルも無く安定して動いてくれています。サイズは標準ATXサイズ。

その標準ATXサイズのPSUが、こんな小さいハコに入ってたまるかって話なのですが、入っちゃうんだからどうしようもない話です。ちなみにPSU固定位置はここ。

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(ケースフロント方向にどーんと。I/Oパネル取り外し状態)

「お前、そこ吸気ファンの席だろうが」と正座で説教したくなる位置にドーン。ちなみに上側が3ピンコンセント向き、下側が各種プラグインケーブルソケット。3ピンコンセントはケース後方からケーブルが伸びていて、PSUから延長するようなスタイルで接続します。VGAとの位置関係でまるで測ったかのようにピッタリな場所にいますが、これまた前述の記事で解説している通り、PSUの縦方向位置は調節可能な為、天板部ラジエターの位置関係や、そもそも空冷でトップスペースが大きく取ることが出来る場合、PSU位置を上に持ち上げることでさらに長いVGAの導入も可能です。ケースサイズ自体は、メーカーに言わせれば「ミドルタワー」らしいのですが、こんなちっさい「ミドル」があってたまるかレベル。ミニタワー、或いはマイクロタワーと呼ぶのが丁度いいサイズです。実際に、フレームをほぼ共通で使っていると思われるMicroATX向けのモデルも出ており、こちらは非常にスタンダードな内部構成になっています。尚、本製品でもM/BがITXなどの小型であれば、PSUを背面下部に設置可能との事。3ピンコンセントの配線を考えると頭が痛くなるので考えないことにしました。

返す返すも本稿に関しては別記事にて細かくご紹介しているのでそれを参照して頂くとして、「ちっさいがゆえの悩み」と「ちっさい癖に悩ませるな」という悩みどころを一つずつ。

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(プラグインでも先に繋いでおいてね設計)

まずは「ちっさいがゆえの悩み」として、だいたい想像がつくかと思いますが、PSUの各種ケーブル接続に関して。こんな感じでスペースがギリギリなので、やってやれないことは無いでしょうが「PSU固定状態でケーブルの抜き差し」はしたくない状態です。実際にこのケースに組み込む際にも、事前に全て必要なケーブルを接続した上で内部に固定しました。また、いかんせんこんな状態なので、容量の大きな長尺のPSUだとそもそも干渉して入らない可能性も。その場合はラジエター向きの変更や、背面の120mmファン部にラジエターを取り付けてトップスペースを広く取るなど、色々と工夫が必要になります。

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(ちっさいケースの癖になんで延長させるんや)

もうひとつはケース特有の悩みどころ。上写真のトップ付近に走る白いケーブル、CPU向け8ピン電源の延長なのですが、PSU位置と向きの関係で、ミドルタワーどころかフルタワー並みに距離があります。特に今回のM/Bではリアパネル側に8ピンソケットがある為、いよいよ長くなります。ちっさいケースなら延長も何も無しでスポーンといけるでしょーと思ったら大間違い。このケースを導入するなら、延長ケーブルも一応用意しておきましょう。そんなに高いモンでも無いので。

と、ここまで書いておいて、「もしかしてPSUを上下逆向きにつければ延長なしで届くんじゃない?」とか思いついちゃったが運の尽き。そのうち試すかも知れません。一応現物改めて確認しましたが、背面左上から伸びる3ピンコンセントのケーブルはそれなりに長さがあったので、斜めに引き回せば下向きになったPSU側のコンセントには届きそうです。

使用用途を限定する事で大幅にコストを抑えた仕様、とはいえ通常使用にも充分なパフォーマンス

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(それぞれの面になんか書いてみましょうか。「どうでもいい話」とか)

さて、そんなわけでVR使用に特化した形で組み上げたPC、今回はハードウェア編としてご紹介しました。最初の時点で使用用途をかなり限定している事もあって、使用パーツそのものも少なく、それに伴って必要になったコストもかなりの割合で抑えられています。世代的には1世代前となりましたが、まだまだ現役どころか、あと2~3年は持つんじゃないかと思うくらいにはなんでもやってくれます。VRでの同時配信は流石に辛いかもしれませんが、通常のゲームの配信、あるいはWebカムで手元を映した状態のDJ配信などではビクともしない安定性とパフォーマンスを発揮してくれます。新品中古混じってはいますが、たぶん8万も行ってないんじゃないかな、くらいの予算で組み立てることが出来ました。BTOのゲーミングPCで(デスクトップでも)10万オーバーがポンポン出てくるのを見れば、かなり安価に組み立てられたかなと思います。

また例によって、ここから安定化や最適化、OC動作状況などの設定・確認・検証としてソフトウェア周りからのアプローチがあるのですが、それは後日のソフトウェア編にて。


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