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逆噴射小説大賞2021:ピックアップ

パルプ小説の「冒頭800字」の面白さ(&800字の先への期待感)で競うお祭り、イコール、逆噴射小説大賞

今年で第4回。
●ハッシュタグ:#逆噴射小説大賞2021
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10月8日から受付がはじまり、日々note上に増えていくエントリー作品(現時点で270くらい)。
※募集期間は10月31日まで。アナタもまだ間に合うよ・・・!

ワシも参加者であり、すでに3作品のエントリーを終えたわけですが、一方で読者でもあるわけで、8日から毎日、ヨダレを垂らしながら他の人の800字を読み漁っています。すると、これはキテるな・・・ワオ・・・ゴイスー・・・スキ・・・とチビる作品にも多く出会うわけで、今回はそんなゴイスーの中から24作品・・・から半分に絞って・・・12作品を、投稿日時がハヤイ順にピックアップ。


1.Sewcidal Boyz

初日からヤベーのが来たと思った。電楽サロンさんは写真、音楽、ダンス、伝統芸能・・・多彩なアレってイメージなんだけども、今回はホンワカ・カワイイにデンジャー要素をミックスさせて背筋を凍らせてくるとは・・・。電楽サロンは凄腕の書き手としてどんどんパワーアップしていってる印象があって、加えて逆噴射ワークショップで真の男にグーで殴られて奴隷バーをグルグルしていくうちにモリモリのパルプマッチョマンになったと、勝手に思っている(偉そうですみません)。
エンタメ感とかキマってる感で言えば『虚面狩り』の方がゴイスーだと思うんだけど、自分は不気味な雰囲気(各種ワードセンスもイイ)の本作がスキ。


2.ラブ&リボルバー

「異常なことを淡々とやっている日常」を書くのってワシも憧れるんだけど、雰囲気だけで書いても上手くいかず、結構ムズカシイと思っている・・・で、この作品はゴイスーだった。日常の切り取り方とか、当事者のR.E.A.Lな心境とか、流れるような文章のリズム感、引き金を引くテンポ、だんだん切なくさせてくる展開などなど・・・。タイトルもストレートでキマってる。
ちなみに『チンピラ流子育て論:死体の片づけ方と道徳教育の両立について』も読み味がよくて、テーマも大好き。


3.輪郭線上のアリア

裸眼、視力1.5(片方は0.いくつ)のワシ、眼鏡の世界はようわからず、物語もチョー独特で「え? え?」とワシを混乱させる展開・・・なのに、そんなワシでもググっと引き込まれていく文章力と、不思議なのに「これはR.E.A.Lだ」と納得してしまう表現力があった。こういうの思いついて、しかも書ける人って、ジーマーでゴイスーだなあ・・・と憧れちゃったりもする。


4.俳優アントニオ・マルティネスについての記憶

城戸さん、第2回逆噴射で初めて読んだときから(あ、自分と同じモノがスキなのかな。てかゴイスーな人が現れたぞ)とワシが一方的に思っていて、連載はどれもこれも面白いんだけど、本作はそのなかでも特に胸倉を掴まれて物語の中に引っ張り込まれてしまった。「海外の単語を使うだけでそれっぽくなると思ったら違うからな」って、これまでの逆噴射小説大賞の審査コメントで(全員に対して)ちょこちょこ言われてるけど、城戸さんのはバチッとキマっていて、そこにスタントダブルってユニークなテーマ、さらに殺し屋という副業が面白さを倍々の倍、いきなり二者択一のチョーピンチで気になっちゃうサイコーな800字になっている。


5.INVOKE!

英単語タイトルから入っての、まず冒頭シーン、(え?どゆこと?)と思う面もあるんだけど、それはすぐに「なるほど!」に変わって、とにかく怪物が絶命するまでの「発声」と「現象」の繰り返しが超絶カッコよすぎてシビれる。セリフのセンスが凄くスキ。カッコよさは後の地の文でも損なわれず、シブイ読みごたえがあって、その中に上手いこと設定を織り込んでいるのがゴイスー。さらにラストの一文が驚きで、800字の先に続く展開への期待がアレコレわいてくる。


6.フォーゴ、アグア、オウロ、サントス

フツーじゃない環境(アイディア)を武器にグーパンチしてくる作品がいくつかあるなか、この作品は特にR.E.A.Lだと思った。ワンシーンのアイディア提示と事件発生・・・では終わらず、そこに生きる人々の暮らし、苦労、教訓、関係とかとか、800字でいろんなものがジンワリシットリ伝わってくる。そしてさらに黄金サルベージ&爆発ときたらもう、どうなっちゃうの?(そしてこの世界のことをもっと知りたい!)って思うに決まってるじゃないですか。


7.40歳、実家住み、初独立

開幕からしてひどい罰当たりなんだけど、その暴れっぷりから主人公の長年の鬱憤が伝わってきて、文章のテンポ感もよくて、ついつい読んでしまうパワーがある。主人公は(ほぼ間違いなく)akuzumeさんで、本人の人生いろいろから醸成された作品はやっぱりR.E.A.Lのレベルが違うと思った。罰当たり行為が最後まで続けば個人的には(ウーン)て思うところだったけど、カーチャン復活で見事に痛快な話に転換して、「あ、はい。すぐに行きます」で笑ってしまって、タイトルの「初独立」がどうなっていくのか、気になる終わり方だった。3発目の作品、昆虫バトル『余命3ヶ月の親友のグローリーロード』もスキ。


8.侵入主義者はかく定めき

「それ、めっちゃわかるわー」と思わせる冒頭。あるあるを並べるだけなら自分でも書けそうなんだけど、本作はその「例えのセンス」と「語り口」が絶妙で、全体を支える文章力もゴイスー。スルスルスルスルとワシの脳に侵入してきてたと思ったら、話は「あるある」で終わらず、「そうきたか!」と唸りまくりの展開が待っていた。800字の先でどんな『ギリギリの実現』が提供されるのか・・・悪いことだとわかっているけど文章は面白いから除き見たくなるような、絶妙なバランスがゴイスー。


9.悪魔をはねても物損事故

これはこの人にしか書けない作品で賞・・・があれば、ブッチギリで大賞をかっさらっていくような作風の、ベンジャミン四畳半さん。昨年、逆噴射小説大賞2020で話題になった『スペースうそチンチラ アンデスへの旅』に続いて、今年も『チンヂラ対デスヤマビスカーチャ』や『月面コンビニ事故物件』などキメッキメ、読む人によっては急カーブで車外に放り出されそうなレベル。で、ワシ的に一番刺さったのが、本作。「ブッ飛び」と「地に足」のバランスがチョーキワドイところでギリギリ保たれていて、とにかく読んでいて面白い。800字のなかで兄弟のヤバさと悪魔のカワイイがばっちり楽しめて、弟の身を案じるワシは「つづく」で悶える。具体的にこの部分がこうで・・・などとワシが挙げはじめると本作の良さが損なわれる気がするので、とにかく読んでほしい。


10.流転せしアングラード・ラ・オルテ

エントリーされてすぐ目にとまって、読んで、面白くてあっという間に800字が終わってしまって、(これはヤベーのが来たぞ・・・)と唸った作品。コンサート中のシーンからパニック、主人公に危機、謎の人物の登場(しかも800字のなかで二人出してるしジャンボ爺さんが最高)、車のシーンへの移行、そしてケースの中身を知ったワシは「どうなるの!」・・・ギュッと圧縮されていて、どんどん先へ展開していく。下手するとゴチャっとしちゃう内容なのに、ゴイスーな文章力という頑丈なレールのおかげでスムーズに物語が進み、読む側は最初から最後までオオッ? て楽しめてしまう。


11.越海教師芝居学舎

外国の日本語クラス、オタクとか言われてちょっと虐められている生徒たち×歌舞伎。過去にいろいろありそうな水谷先生(主人公)。そして元気ハツラツな生徒クララが物語をガンガン進めていってくれそうな期待・・・などが、サワヤカかつ見事な文章で語られていき、(これどんどん面白くなっていくやつだ・・・あんなこととか起きるのかな、こういう事件でクララが凹んだりするシーンもあるのかな・・・)と800字の先を想像するのがチョー楽しい。これが完成したら小説を発売して、からの漫画家、アニメ化して・・・と人気が爆発していく現実展開を勝手に想像してしまった。


12.ユークローミアの堕天使

居石さんはSF作品もゴイスーだけど、ダークファンタジー(ジャンル分類に詳しくないのでそう呼んでよいのか自身がないけど)の本作がゴリゴリにカッコいい。セリフも、地の文も、ひとつひとつがキマりまくり。最高。もしワシが本作みたいなテーマの文章を書けば、きっとなんとなしにカッコイイ単語を考えてそれっぽく仕上げるしかなく、読み返してみて稚拙ダー!とか、ゴテゴテ読みづらくてようわからんー!と削除ボタンを押すことになるんだけど、本作は重厚かつ可読性の高い文章によって描かれるシーンがバチっと頭に浮かんで、色彩というアイディアもステキで、AAAゲームやゴシックアクション映画の冒頭みたいにゾクゾクするカッコよさもあって、スゲーなあと思いました。


以上、時間的なアレで12作品に絞って挙げたけども・・・
他にもステキでゴイスーな作品がモリモリたくさんあるし、あと2日でドドッと増える可能性もあるので、みんな、読もう!(そして書きたいと思った人はエイヤで書こう!)


おしまい

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