見出し画像

カテゴライズされてない大人とは

ある検察官の場合①

先日、前職でお世話になった検察官Mさんに7年ぶりにお会いした。

私が働いていた団体には、裁判官・検察官・弁護士が数多く管理職・幹部として出向していた。国民と法を近づけるために出来た団体で、資力のない方への無料法律相談・民事法律扶助・情報提供・国選弁護人の報酬算定・犯罪被害者支援など業務は多岐にわたり、様々な法曹関係者の力を借りながら実務を運用していた。

私は広報を担当していたので、会社でもそうだと思うが広報はその性質上幹部や理事(会社なら社長・役員)直轄で仕事をすることが多く、当時事業部長をされていたMさんは直属の上司ではないが、直接仕事をふられることも多々あり、仕事を通じてとても多くのことを学ばせていただいた。

人当たりがよく、誰にでも公平で優しく、ちょっとオタク気質で、チャーミング。団体でもゆるキャラのような存在だった。そして、すこぶる賢い。めちゃくちゃ賢い。そのキャラクターから、Mさんが厳しい取り調べをしているなんてとても想像出来なかった。

私が起業の報告をすると自分のことのように喜んでくれた。私が照れながらほっこりしていると、いきなり語り出した。

Mさん「僕もね、最後まで検察庁いないから」

私  「え、ヤメ検になるんですか?」

Mさん「そうそう。ネコカフェ併設の法律事務所をつくるの」

私  「ネコ・・・?・・・ネコ?」

(彼は無類のネコ好き。7年前もゴリゴリのシリアスな内容について対面で記者対応をしている時、部屋は緊張が張り詰めピリピリした空気。私の視界のはしに揺れるものを確認したので見ると、彼の胸ポケットからはネコの肉球型の携帯クリーナーがピロピロ揺れていた。そういうのはしまっとけよっ!)


ある検察官の場合②

ネコカフェのコンセプト・名前・カフェで出すメニュー、どんな人を雇うのか、どんなネコたちが住むのか、誰に来て欲しいのか、法律事務所ではどんな事件を主に扱うのか、そのために何年くらい検察官を退官してから弁護士事務所で修行するのか。

conceptが明確な上、事業内容の詳細も決まっていて、すぐにでも実行に移せそうな内容だった。

Mさんは特捜部や刑事部などで部長・副部長として仕事をされ、検察官としても相当に優秀で組織からも評価されている方なんだと思う。そのまま組織にいても、重要ポジションをわたり歩くのだろうし、旗からみれば競争の激しい弁護士業界に比べれば今のポジションの方が安定しているのになと感じてしまう。

でも、彼にはやりたいことがあって、思いがあって、それを実現するためには躊躇なく組織を飛び出すことを今から計画している。検察の中でも、拒否する人も多い中、時間があるときは可能な限り記者を自分の部屋に入れ話をしているのだそう。

検察に対する世間の風当たりは強いが、扉を閉ざさず、どんな質問や疑問にも真摯に対応する彼の姿勢や型にはまらないところは、前職時代から変わらないんだなと思った。


彼が体現していた広報のあるべき姿

前職で広報担当として元日本経済新聞論説委員出身の理事の方がいた。その方から、広報について以下の通り教えてもらった。

「広報の目的は、社会の構成員の理解・指示を獲得し、より強固にしていく、すなわち、社会との結びつきを強めること。

社会との結びつきが強くなれば、社会からの注文や批判が多くなるのは自然なこと。だからこそ、世間から国家機関・行政へ向けられる目は厳しいし、そうでなくてはいけない。広報によって組織を守るには、社会の理解・支持を高めるしかない。情報を出来る限り公表し、こちらの言い分を正しく十分に説明し、誤解や曲解、決めつけによる報道がないように努めること。

情報を隠すのではなく、積極的に出す、攻めの広報が最もよく組織を守るのではないか。」

それをまさしく実践していたのがMさんだった。

報道機関の厳しい追及に、上記の方針を体現しながら、決してごまかさず逃げず向き合っていた。前職の団体よりも厳しい追求がくる検察庁においても、その姿勢を崩していないそうだ。でも、一検察官がそう行動しても、決して世間には伝わらないし、検察のイメージはよくはならないかもしれない。

いくらあるべき広報を体現しても正しく報道機関が報道してくれるとは限らない。謝った情報や一部の情報を切り取られて報道されることもたくさんある。それでも、広報は上記の姿勢を崩してはいけないんだと思う。


情報を伝えたい人に対して誠実であること。組織にのまれず個人としての信念を曲げないこと。情熱を持って仕事に向きあっていること。型は破るためにあるのだと、それを実行している人。

それが私が考えるカテゴライズされていない大人だ。学歴や肩書きじゃない、こうした大人と子どもたちが多く接点を持つこと、大人たちの多様性を子どもの目線で切り取ること、これがコドモタイムでやろうとしていることだ。


今月からいよいよ写真を学ぶ+記者として取材体験するワークショップを開催していく。ドキドキすると同時にワクワクもする。


今日の起業ものがたりはここまで。

つづく。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?