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"すべてのこどもたちに、本と出会う喜びを"―「こどもの本総選挙」をご存じですか?

はじめまして。私たちはNPO法人こどもの本総選挙事務局です。
こどもの本総選挙事務局は、その名の通り「こどもの本総選挙」というイベントの実施運営をする団体です。

ところでみなさん、「こどもの本総選挙」がどんなイベントがご存じでしょうか……? 

あなたのお子さんも参加してるかも? 実はけっこう大規模なイベントなんです

正式名称は「小学生がえらぶ!”こどもの本”総選挙」。これまたその名の通り、日本中の小学生が”今まで読んだ中で1番好きな本”を投票し、その結果を発表するというものです。今まで2回開催してきました。

「日本中」といっても、どれくらいの規模なのか。それはもう、本当に日本中なのですが、具体的に言いますと、昨年実施した第2回では、なんと25万以上もの投票が集まりました。投票に際し、1,000校以上の小学校(日本の小学校全体の1割にあたります)が協力してくださっています。あなたのまわりのこどもたちも、実は投票しているかもしれません。

そのこどもの本総選挙が、この度第3回を実施することになりました。2021年5月5日(こどもの日!)が投票開始。結果発表は来年2月11日を予定しています。その間、全国の小学校や公共図書館、あるいは書店に協力いただき、こどもたちからの投票を集めていくのです。

さて、そんな「こどもの本総選挙」を運営する団体が、どうしてnoteを始めたのか。今日はこのnoteを始めるにあたっての所信表明を兼ねて、私たちの思いを綴らせていただきます。

「本が1番好き!」ではない子にこそ、総選挙の結果を届けたい

そもそも、こどもの本総選挙をなぜ運営しているのか。そこからお話したいと思います。

ここ数年、「こどもの読書離れ」という言葉を耳にするようになりました。おそらくYoutubeやゲーム、アニメなど、こどもたちの生活時間を豊かにするエンターテイメントがたくさん増えたこと、そのことがこどもたちの読書時間を削っているとされているのだと思います。
しかし、「こどもの読書離れ」というのは、誤解を生じてしまう表現だと、私たちは考えています。なぜなら、小学生の読書量については、むしろ学校現場での努力が実り、増えているからです。
ここにひとつのデータがあります。

全国学校図書館協議会が2019年に行った「第65回学校読書調査」によると、小学生の月あたりの平均読書量は、2000年代後半から格段に増加しています。1ヶ月間に1冊も本を読まないという小学生の数も同時期から減少しています。

ここだけ見ると、「こどもの読書離れ」というのは間違った情報であると思われるかもしれません。しかし、そう考えるのは早計です。同調査をさらに見てみると、小学生では読書量が増加している一方で、中学生の増加率は小学生ほどではなく、高校生に関してはほぼ横ばいです。つまり、小学校で読書する習慣を持ったこどもたちの中に、その後本を読まなくなるこどもたちが相当数いるということなのです。

その原因は明確ではありませんが、やはり今のこどもたちのまわりに、たくさんのエンターテイメントが存在していることは無視できません。ただし、私たちはゲームやYoutubeを否定するつもりはありません。どちらも本にはない良さがあると思いますし、現に事務局メンバーだって、ゲームやインターネットに慣れ親しんで育ってきています。

大切なことは、ゲームやYoutubeがある世界の中で、「それでも、本もけっこうおもしろいよ!」ということをこどもたちに伝えていくことであると、私たちは考えます。本よりも好きなものがたくさんあるというこどもに、どうすれば本の存在、そしてそこに広がる世界の魅力に気づいてもらえるのか……そうした問題意識から生まれたのが、こどもの本総選挙なのです。

すべてのこどもたちにメッセージを伝えることを目指して

こどもの本総選挙事務局がNPO化した際に、チームとして大切にしていきたい思い=ミッションを決めました。

「すべてのこどもたちに、本と出会う喜びを」

それが私たちの掲げるミッションです。「すべてのこどもたち」――それは普段から本を読むようなこどもたちだけでなく、いつもは学校図書館や書店に足を運ばないようなこどもたちにも、ということです。

そのために私たちが大切にしているのは、本についての話題が、普段本に接することの少ないこどもにも伝わるようにするということです。過去2回のこどもの本総選挙では、結果発表イベントを大々的に実施し、キー局の情報番組やNHKのニュースをはじめ、さまざまな媒体でその模様を紹介していただきました。もし、毎朝見ているニュースで「全国の小学生が選んだ1番の本はこれ!」と紹介されたら、普段本をあまり読まないこどもでも、その本を読んでみたくなるのではないか? そう私たちは考えています。

話題性がふくらむように、結果発表には様々な工夫を凝らしています。たとえば、結果発表イベントでは特に得票の多かった10タイトルを発表し、その本の著者の先生方などを表彰するということをしています。
第1回の結果発表イベントでは、実際に10タイトルそれぞれに投票してくれたこどもたちを「こどもプレゼンター」として会場に招待し、アカデミー賞さながら(?)に、順位の発表と先生方の表彰を行いました

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第1回の結果の様子。こどもプレゼンターが賞状を手渡しました。
右は1位に輝いた『ざんねんないきもの事典』の監修・今泉忠明先生

第2回はコロナ禍の影響もあり、リアルでのイベント実施は見送りましたが、その代わりにYoutubeで結果発表の動画を配信しました。かなりの方が今まで視聴していくださっています。

結果発表の翌日からは、ここで紹介された上位10冊について、全国およそ2000店舗の書店店頭で「こどもの本総選挙フェア」として、展開していただいています。情報番組などで投票結果を見聞きしたこどもたちが、すぐに本屋さんでその本を購入できるという仕組みにしているのです。

第2回こどもの本総選挙_くまざわ書店三河安城店(愛知県)

書店店頭での展開の様子。展開用POPなども事務局でご用意しました。

こどもたちの「好き」をつなげていくために、大人のみなさんとつながりたい

こどもの本総選挙の取り組みは、出版業界はもちろん、協力いただいた学校や図書館の司書のみなさまから、高く評価していただいています。コロナ禍の中実施した第2回こどもの本総選挙の結果発表イベント(動画配信)の実現のために展開したクラウドファンディングでも、たくさんの支援・応援の声が届き、事務局メンバー一同、大変励まされました。

しかし、「こどもの本総選挙」という取り組みについて、改善の余地もまだまだあります。

たとえば、結果発表。
イベントで発表するのは10タイトルだけですが、こどもたちが実際に投票した書誌をカウントしていくと、なんと30000以上という数になります。なかには1人の子が選んだ唯一無二の「一番好きな本」というものもたくさんあります。イベントでは紹介できなくても、それはそれで大変尊い一票です。
寄せられた投票用紙を読んでいくと、どの投票用紙にもそれぞれこどもたちが思い思いの本のタイトルとそれを選ぶ理由が記されています。中には投票用紙の紙幅の許す限りめいっぱい、その本を推す理由を書いてくれた子もいました。

そんなこどもたちの思いを発信していく方法は、10タイトルを発表する他にもまだまだあるはずです。それにせっかくそれだけの数の本が選ばれているのなら、それはもっと小学生に紹介していきたい。そのことはきっと、こどもたちの「次の一冊」へというモチベーションにもつながるはずです。

もうひとつの課題は、こどもたちだけではなく、大人のみなさんとつながっていくということです。こどもの本総選挙は、こどものためのイベントではありますが、こどもたちだけのものではありません。実施にあたっては、たくさんの大人のみなさんが協力してくださっています。しかし、まだまだ大人の間での知名度は低く、出版業界や教育現場に携わる方でさえ、知らない方のほうが多いというのが実情だと思います。

今後、もっとこどもの本総選挙を大きなものに育て、本当にすべてのこどもたちに本と出会う喜びを伝えていこうとするのであれば、よりたくさんの大人のみなさんのサポートが必要です。
そこで私たちは、このnoteという場を活用して、こどもの本を発信していくということと、大人のみなさんとつながっていくということにチャレンジすることにしました。

第3回こどもの本総選挙の実施にあわせ、このイベントがもっとたくさんの人に知ってもらえる存在になりますように、そして本というものがいつまでもこどもたちに寄り添う存在であり続けられますように。そういう願いを込めて、記事をつくっていきたいと思います。

どうか温かく見守っていただけるとうれしいです。

NPO法人こどもの本総選挙事務局
理事長  岡本 大

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