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僕、粕田朔世。何度転生してもチャーンを回避できない

※この文章は、Saasのチャーン(解約)を回避するための教訓をタイムリープ形式で表現する上で、『愚者の渡しの守り タイムループで学ぶ戦術学入門』(アーネスト・スウィントン 武内和人 訳。国家政策研究会)をオマージュしております。

プロローグ

一日の在宅勤務を終え、僕はノートPCの電源を切った。そこで僕は悪夢を見たのだが、ビデオMTGが続いたのと、オンとオフの切り替えが難しい在宅勤務独特の疲れのせいだと思う。
夢の流れは全体的にこんな感じだ。まず、どの夢の製品も顧客も同じだが、不思議なことに、夢の中の僕はその顧客について何も思い出すことがなかった。毎回の夢で経験する出来事は、僕にとって新しい出来事であった。
つまり、夢から夢へと引き継がれたのは、以前の夢で学んだ教訓だけであり、それだけは明確に思い出すことができた。それらの教訓を思い出せたおかげで、僕は最後に契約更新を勝ち取ることができた。
最後に僕が夢から目を覚ますと、夢を連続して見ていたことを覚えていたのだった。

序章

僕の名前は粕田 朔世(かすた さくせ)。AIを使った会議の効率化・質向上Saas「Kaigee(カイギー)」のカスタマーサクセス(以下、CS)担当をして
いる。

AIを使った会議の効率化サービスはたくさん出てきているけれど、Kaigeeは映像制作機器を製造してきた企業が、新規事業として始めたもので、高性能のカメラとマイクガジェットと連動しているのが特徴だ。
長年の映像機器製造のノウハウを活かして、ビデオ会議中の表情を高精細に映し出し、高音質の音声で会話ができる。

会議の効率化という点では精度の高い文字起こし機能はもちろんのこと、特徴的なのが詠唱コマンドという機能だ。
例えば、会議中に「@(メンション)+人名、#(ハッシュタグ)+作業名、on+タスクリスト」と口にすると、タスクリストに該当する担当者と作業名が追記されるのだ。(※Kaigeeの詳しい機能は『ゼロから身につく プロジェクトを成功させる本 ~はじめてのプロジェクトマネジメント~』を見てほしい)

質向上という点では、いい発言や質問をした人を評価する機能がある。社員の質問力や会議の文脈の中で発言力を鍛え、良い意思決定の過程を参加者全員でつくりあげていくことを促し、会議という場を通じて生まれるアウトプットの質を向上させることを目指している。

Kaigeeはリリースして間もないサービスで、僕はKaigeeのCS第1号社員兼リーダーとしてプロジェクトマネージャーのBさんと同じ営業部からリリース半年前に異動。CS業務は初体験だが、Bさんに教えてもらった「キックプ譜」という対話形式で問答するとプロジェクトの計画を立ててくれるAIサービスを使用して、以下のようなCSの運用体制をつくる計画を立てた。

(拡大表示してご覧ください)

CSとしての目標は、Kaigeeの年間解約率(チャーンレート)を5%以下にするというもの。この数値を達成するには、「顧客の成功に必要な機能・サービス・ノウハウを提供できている」必要があるとした(この目標が達成されているときの状態を「勝利条件」と言う)。

勝利条件を実現するための要素には、「オンボーディングの要素」「顧客との関係性の要素」「製品の要素」がある。
オンボーディングが終了しているときの顧客のあるべき状態は、CSにいちいち聞かなくてもKaigeeを使えるようになっていること。
顧客との関係性については、僕たちCSが顧客から信頼できるアドバイザーとして認められている状態になっていること。
製品の要素については、顧客に求められる機能を提供できていること。生まれて間もない製品なのだから、顧客の要望にはしっかり応えていかないといけない。この要素とその状態のことを「中間目的」と言う。

そして、これらの状態を実現するための作業が「施策」になる。
プ譜の施策でグレーになっているものはまだできていないのだが、ぜひ取り組みたいと思っているものだ。
一番左端にある「廟算(びょうさん)八要素」というのは、所与の条件や置かれている環境などを書いておく。

プロジェクトマネージャーのBさんはもともと会社のエース営業で、その手腕に期待されてkaigeeの営業マネージャーも兼任している。まだ実績のない製品だけど、Bさんの過去のお客様のつながりで見事に一件目の受注をしてきた。僕にとって、そしてKaigeeにとって初めてのカスタマーサクセス業務になる。
顧客の成功を第一に考え、Kaigeeの活用における課題解決とサポートを提供していこう――。そんなふうに僕は理想に燃えていたのだが、よもやそれが終わらない悪夢の始まりになるとは、その時は知る由もなかったのだ・・・。

※各話の夢は、公開次第リンクを有効にします。

第1の夢

第2の夢

第3の夢

第4の夢

第5の夢

第6の夢

第7の夢


未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。