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「状態」の言語化が、プロジェクトの成否を左右する

プロジェクトにおける言語化とは何か?

「言語化能力が高いと、プロジェクトの成功可能性・生産性が上がる」ということが、この記事でお伝えしたいことです。
プロジェクトにおける言語化には、「なぜ自分たちはこのプロジェクトに取り組むのか?」という理由や背景。「どうなったら成功と言えるのか?」という成功の定義。成功するために「何を、どの順番で、どのように行うのか?」といった計画などがあります。これらはプロジェクトにおける最低限の言語化です。最低限というのは、こうした言語化を行うことでプロジェクトを始められるのであって、それがプロジェクトの成功可能性を高めるものではないからです。
プロジェクトの成功か可能性を高める言語化とは何か?それは、プロジェクトの成功に影響を与える「要素の状態」の言語化です。

要素の状態とは?

「要素の状態」は、「要素」と「状態」の2つから成ります。要素は、プロジェクトを成功させるために関わる様々な要素のことです。これは取り組むプロジェクトによって変わります。システム開発プロジェクトであれば、UI、速度、信頼性、運用負荷などがあります。家電開発プロジェクトであれば、機能、軽さ、耐久性、故障のしにくさなどです。「状態」はこうした要素が「どうなっているべきか?」の定義です。システム開発であれば、成功の定義から逆算して、UIという要素が「どんな状態になっているべきか?」。家電開発であれば、耐久性がどうなっているべきか?と考え、定義します。
この状態の言語化は、あまり注目されていません。「どんな要素が必要かはわかっているけど、それがどんな状態であるべきか?」を明確に定義していないことが多いです。状態の言語化が注目されていない・されづらくなっているのには理由があります。

知覚できない状態を、事前に書くことは難しい

人は、「何をしたか?」は覚えていますが、「どうなっていたか?」は意識していません。「何をするか?」を考えますが、「どうなっているべきか?」はあまり考えません。

「する(した)こと」とは道具であり。方法です。
「する(した)こと」とは「道具・方法を“使う”」、すなわち直接動かしている・操作しているので、覚えている・覚えやすい。
「なっている(なった)こと」は直接動かしていません。「なっている(なった)こと」とは、その道具・方法を使っている「最中の状態」であり、使った後の「結果の状態」です。
最中にせよ結果にせよ、状態を知覚できるものとできないもの・しづらいものがあります。知覚には目、耳、舌、鼻、手があります。建造物は目で見え、料理はにおいや味がわかります。
知覚できない・しづらいものは意識できない・しづらい。最中の状態は特にそうです。(他者が自分の「最中」を観察してくれていれば、他者目線での知覚はできます)
こうした知覚を通じて初めてリアリティをもって感じることのできる状態を、未知で未然(まだ始まっていない)で未形(まだ形になっていない)な状況で注目する・意識するというのはとても難しいことです。

これは、様々な業界とテーマでプロジェクトを成功させたプロジェクトマネージャーへのインタビュー企画「あのプロジェクトはどう進んだのか?(あのプロ)」の経験からも裏付けることができます。プロジェクトで「何をしたか?」をたずねるとスラスラと答えてくれますが、「した結果、プロジェクトに関わるどの要素が、どうなっていかた?」とたずねると、すぐに答えることができません。考えてから答えます。「あれをやったことが、こういう状態につながっていて、それが成功に影響を与えていたと思う」といった答え方をします。これは要素の状態が「計画に書かれていなかった」、「意識していなかった」ことを意味していると考えます。

したことを直接目標に結びつけると、成功・失敗の理由がわからない

成功した・うまくいっていると、「“〇〇をした”から成功した・うまくいっている」と考えます。実際は成功に対して意味がなかったこと、効果的でなかった、影響を与えていなかった、決定的な要因ではなかったことでも、そう考えてしまいます。「“した”こと」に疑問は抱きません。抱きづらいです。
翻って、失敗した・うまくいっていないと、「“〇〇をした”から失敗した・うまくいっていない」と考えます。最も短絡的には「した」ことをやめます。これは「どれにする?」という、道具・方法を目標に直線的に結び付ける思考と言えます。(その道具・方法に固執して、思慮することなくそのまま続けると失敗する)

「どれにする?」の志向の概念図

この考え方だと成功・失敗した真の理由がわかりません。成功・失敗の理由を言語化できていない、と言えます。
「する・した」ことは、成功・失敗に影響を与える「原因」ではありますが、直接的に影響を与えているわけではありません。
成功・失敗に“直接”影響を与えるのは、「する・した」ことではなく、目標を実現するために存在する各種の要素が、目標実現に「ふさわしい状態(あるべき状態)になっている」かどうかです。

状態の言語化がプロジェクトの生産性を高める

「状態」を言葉にすること、できること。これがプロジェクトにおけるもっとも重要な言語化です。状態を言語化できると、その状態を実現するために適切な施策の取捨選択ができます。
道具と手段を目標に直接結びつけるのではなく、目標実現に影響を与える要素に結びつけることで、どの道具・手段がどの要素のどんな状態を生成したのか、影響を与えられたのかが把握できるようになります。

施策を要素に結びつける概念図

そうすると、施策の評価ができます。「する(した)こと」とは道具・方法であり、万人に共通のものです。しかし、自身の条件や環境によって、適したり適さなかったり、使えたり使えなかったりします。適した施策の選択及び適した使い方をしないと、「あるべき状態」を実現できない。要素に対して適切でないとわかれば、その施策は早々にやめることができる。やり方を工夫するという考えも生まれます。その結果、効果のなかった施策を長く実行せずに済み、無駄なコストの発生を防ぐことができ、生産性が上がります。成功可能性も上がります。

状態の言語化のし方

「状態」を考えるアプローチは2つあります。一つは、未来から。もう一つは、過去から。
未来からのアプローチは、未来の目標と成功の定義から逆算します。自分たちの成功の定義を実現するために、どんな要素が必要で、その要素はどんな状態になっているべきか?と考えます。しかし、上述した通り、まだ知覚していないことを言葉にするのは難しい。自分のプロジェクトに適した言葉を探し、創造しなければなりません。豊かな想像力、詳しい調査・学習が求められます。
過去からのアプローチは、実際にプロジェクトをスタートさせ、行った施策が、「どんな状態に影響を与えていたか?どんな状態を生成したか?」をふりかえることです。したことがどんな状態を生成したか?今、どんな状態になっているか?今の状態から、ちょっと未来のあるべき状態を想像する。これは頻度高く行う必要があります。プロジェクトが終わった後にふりかえるのでは意味がありません。
状態を表現する言葉探しは、未来からの創造と、過去のふりかえりの両方からのアプローチが必要です。未来からのアプローチだけでいけるのは天才です。
最初の表現はピッタリ(成功の定義に対して適切)ではないという前提に立ち、言葉を豊かにしながら、磨き、ピッタリしっくりくるものに仕立てていく。このように考えると良いです。
このピッタリしっくりくる言葉の表現にチャレンジし続けることが、状態の言語化能力を鍛えます。
この言語化能力は、プロジェクトマネージャーやリーダー一人が鍛えようとしても難しく、プロジェクトメンバーみんなで鍛えていくことができます。それについてはこちらの記事をご覧ください。

未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。