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あなたが任せたプロジェクトはなぜうまく進まないのか?

拙著を購読くださったことがきっかけでプロジェクトをうまく進めるための研修を依頼されることがあります。たいていはプロジェクトを任されたプロジェクトマネージャーやリーダー格の方からオファーをいただくのですが、最近は経営者や役員層といったプロジェクトオーナー側からもメッセージをいただくことが増えてきました。

「なぜ自分が任せたプロジェクトはうまくいかないのか?」

という問題を解決するための研修内容をこの記事で紹介します。

プロジェクトがうまく進んでいない事象とその原因

プロジェクトがうまく進んでいないと感じるとき、下記のような事象が起きています。
●部下、リーダーが自分で決められない。
●自分で判断ができずいちいち確認しにくる。指示待ちになっている
●自分のイメージとは異なるアウトプットが出てくる
●報告を聞いてもゴールに近づけているのかわからない
●メンバーや部署間で意見や利害が対立している

このような事象が起きる根本的な原因は3つあります。

なぜあなたが任せたプロジェクトはうまく進まないのか?

●心構えができていない
しっかり事前に計画を立て、行動を管理すればうまくいくと思っている

●知識と技術が備わっていない
プロジェクトの性質の知識と、目標実現のための仮説を表現し、振り返り、意思決定する技術や方法を身につけていない

●志向性が揃っていない
プロジェクトに関わる人々の差異を活かし、一つの方向に結集させる合意形成のプロセスを経ていない

「心構えができていない」と「知識と技術が備わっていない」ことについては下記のことをセミナーで伝え、疑似体験いただきます。

・未知で不確実な要素が多く、経験や知識、期待や思惑、価値観の異なる他者と協働するプロジェクトは、そもそも失敗するようにできているということ
・対象となるプロジェクトがどのような要素でできあがっており、要素間の関係性や構造を明らかにする方法

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「志向性(Intentionalität)」とは、フッサールが提唱した概念で「対象に向かう意思の動き」と説明されています。これをプロジェクトマネジメントの世界にもち込むと、「関係者のだれからも合意された、プロジェクトの成功の定義(それをやって本当に実現したいことは何か?)を実現するための意思の方向性」という表現になります。これが揃っていないと下記のような状態になってしまい、プロジェクトをうまく進めることができません。

●目標の成功の定義がやプロジェクトの進め方が合意されていない
●部署や人々の間の願いや想い、利害や思惑がバラバラ
●求めるクオリティー(品質)がバラバラ
●評価される軸が統一されていない
●メンバー間の情報の格差が大きい
●各種の思い込み、こだわり、暗黙の前提などに齟齬がある

志向性を揃えるには、プロジェクトに関わる人々全員が自ら考え、一人一人の意見や価値観を調整して、全員が「これならうまくいきそう」「やってやろうと思える」進め方に合意する必要があります。

しかし、多くのプロジェクトオーナーはただプロジェクトを適当にプロジェクトマネージャーに与えるだけで、それがどうなったら成功と言えるかという定義をせず、話し合いをしていません。プロジェクトがうまく進んでいるか心配でいちいち報告させるのに、現場で進めていくための権限を与えません。責任を与えても権限を与えません。現場が判断・決定するための基準づくりに参加せず、合意をしていません。自分で考え、合意された進め方・基準と権限を持たなければ、人は責任を引き受けることができません。

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こうした問題を解決する方法として、研修では「プ譜」という方法を使用します。

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プ譜はプロジェクトを進めるための仮説をつくるツールであり、合意形成するときにも使えるツールです。そしてそのツールを使うためのルールも備えています。

このプ譜をつかって下図のプロジェクトが進む個人・チームの状態を研修を通じてつくりあげていきます。

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プロジェクトが進む個人・チームをつくるプログラム

それぞれの状態をつくるために、3つの段階・プログラムを用意しています。

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①セミナー、プ譜制作ワークショップ
・プロジェクトがうまくいかない構造的理由を知る
・現状と目標のギャップを把握し、その間のプロセスの仮説を立てられるようになる
・どうなっていたら成功と言えるかという勝利条件を自分で考えられるようになる
・手段が目標に適合するよう取捨選択ができる

②合意形成ファシリテーション
・一人一人のプロジェクトの進め方のイメージを場に出し(アコモデーション)、共有する
・描いたイメージの粒度とフェーズを仕分けする
・全体の目標における個人の仕事の位置づけと、他者の仕事の関係性が把握できている
・プロジェクトの状況を評価、判断するための基準をつくる
・全員が腹落ちするプ譜をつくり上げる

③プロジェクト伴走、メンバーの学習支援
・立案した仮説を実行して記録する
・実行した結果、獲得した情報や事象を評価、検討し、意思決定を行う
・意思決定の結果を新たな仮説として更新する
・当初の仮説にとらわれず、アップデート前提の仮説としてプロジェクトを進められるようにする

このプログラムを提供するためのプロセスは下記の通りです。

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⓪はプログラムを提供する前に、プロジェクトオーナーと私が1対1で行うカウンセリングです。

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カウンセリングのなかでセミナープログラムの内容を詰めていきます。
セミナーは情報や知識のインプット、私との問答、参加者でグループをつくって行うアクティビティ、仮説を立てるアクティビティなどを用意しており、時間などの条件や状況に応じてアレンジしています。

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セミナー終了後、実際にプロジェクトを進めていきたいとなったら、合意形成のためのワークショップもサポートしています。

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合意形成の方法については下記の記事に詳しいのでご覧ください。

合意してプロジェクトがスタートした後のサポートも行っています。

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④は実際にプロジェクトを進めた後の「振り返り」を定期的に行うというものです。この振り返りの方法にも特徴があるのですが、これについては下記の記事に詳しいのでご覧ください。

⓪から④のプログラムはすべて受けなければいけない訳ではありません。①のセミナーで止まってもよいですし、②は行わず④に移行してもOKです。

プロジェクトマネジメントをテーマにした研修は数多く存在しますが、その多くはプロジェクトマネージャーを対象としたものです。しかし、未知な要素の多いプロジェクトを進めるうえで、プロマネ一人のレベルを向上させてもうまく進む可能性は低いです。
プロジェクトに関わる人々のリテラシーを上げ、主体的・自律的に思考・行動できるようにして、組織としてプロジェクトを進めるための力を底上げする必要があります。ただ、全員がPMBOKのような高度な知識を身につける必要はありません。プ譜はプロジェクトを進めるために必要な考え方を身につけ、道具として操りやすい習得・理解・共有コストの低い方法です。
プ譜についてもう少し詳しく知りたいという方は、下記のページをぜひご覧ください。

もしプロジェクトオーナーのみなさんがプロジェクトに取り組むために「ちょうどいいサイズ」の方法をお求めであれば、下記フォームよりぜひご相談ください。


未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。