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プロジェクトの病態関連図

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プロジェクトで発生・遭遇する問題は多岐に渡ります。プロジェクトの問題を「病(やまい)」に見立て、似た症状のものを分類し、いくつかの「症候群」にまとめてみました。
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あいまい・多義性症候群

症状成功の定義が決まってない オーナーの意図・指示があいまい。テーマだけを現場に適当に投げている 意思決定・判断基準がない。指標と測定方法が未定 色んな人の意見ややりたいことを盛り込みすぎている どこまで展望しているかかわからない(範囲が決まってない) アウトカム、アウトプットの因果関係がよくわからない 症状の概要と症状が招く結果あいまいさは成功の定義や判断基準、視程・範囲(どこまで展望しどこまでやるか?)が明確に規定できていない状況を意味します。多義性は一つのものごとに対

俯瞰不全症候群

症状全体像を把握していない 部分にこだわりすぎている 優先順位が決まってない 症状の概要と症状が招く結果 様々な人、部署、使えるお金と時間、施策、ツール、環境、制約、競合など多くの要素が複雑に絡み合うプロジェクトでは全体像の把握が欠かせません。ある懸念事項にとらわれたり、ある施策の実行方法や品質にこだわりすぎることで、その他の部分が疎かになったり、回すべきリソースが不十分になってしまったりします。具体的なものを探すよう求めると、全体的な事物を見る能力が驚くほど落ちるように、

情報コスト高症候群

症状会議が多すぎる 会議の着地点がわからないまま終わる。議論が些末に、迷走・脱線する 議事録作成に時間がかかる プロジェクトの報告・管理ツールやルールを習得・遵守しきれていない 症状の概要と症状が招く結果 プロジェクトを進めるなかで交わされる情報量は膨大です。情報の発信者は自分の脳から受信者へ情報を移し、自分の問題解決や期待する行動を起こしてもらわなければなりません。これらの情報を表現・解釈・議論・記録・伝達する手段として、会議、プロジェクトマネジメントツール、議事録・WB

プロジェクトマネジメント経験不足

症状完璧な計画を立てなければいけないと思い込んでいる 必要な作業を全て出せているか不安 どの手段を採用すれば、何から、どの程度までやればいいかわからない タスクのスケジュールへの落とし込み方がわからない メンバーからの課題・悩みにアドバイスができない 自分より経験・知識のある人にどう動いてもらえばいいかわからない 症状の概要と症状が招く結果 プロジェクトを任された身と一(いち)メンバーとの大きな違いは、情報を解釈・表現・処理するための認知能力の種類や量・負荷が決定的に異なる

アパルトヘイト症候群

症状本症状は下記3つの症候群を包括したものです。 ●縦割・分業症候群 ●コミュニケーション不全症候群 ●フォロワーシップ不全症候群 この他、下記の症状があります。 経営層・上司、他部署が現場の状況や事情を把握していない メンバーや顧客担当者がプロジェクトを兼務していて忙しい(本業への割込構造と意識) 分科会にしたが誰もリーダーシップを取らない 主要な関与者を招き入れていない 症状の概要と症状が招く結果 「アパルトヘイト」は「分離」を意味する言葉です。同じ目標のもと集ったメン

フォロワーシップ不全症候群

症状メンバーやサブマネージャーが自分で決められない。一々相談がくる メンバーが主体的・自律的に思考・発言・行動できない 症状の概要と症状が招く結果 フォロワーシップ不全症候群は中央集権症候群と相互作用するものであり、中央集権症候群の結果でもあります。「メンバーやサブマネージャーが自分で決められない。一々相談がくる」というのは、決めさせていない、一々相談させているからです。「メンバーが主体的・自律的に思考・発言・行動できない」のは、そうさせていないからです。メンバーの提案をろ

コミュニケーション不全症候群

症状対話が不十分で、合意形成を経ていない 成功の定義やイメージが関与者間でバラバラ お互い何を考えているのわからない メンバー間の議論がかみ合わない。共通認識・共通言語がない 症状の概要と症状が招く結果 成功のためのマニュアルがなく、分業するメンバー・部署間の完成された申し送り書がないプロジェクトでは、異なるタスク・業務を担うメンバー・部署間でのコミュニケーションが重要です。コミュニケーションが十分でないために、重要な情報がある部署から他の部署へ伝達されないといったことや、

縦割り・分業症候群

症状関連部署が非協力的 担当未決定。誰かがやると思い込んでいる 各自のKPI達成のためだけに行動している。自分の部署のことしか考えていない プロジェクトの評価指標や求める品質が、所属する部署のものと異なる 症状の概要と症状が招く結果 プロジェクトは本質的に領域横断的です。複数の専門家や部署が協力して取り組むことになりますが、この複数の専門家・部署間の「調整」が問題を生み出します。このサイロシステムは本質的に包括的なプロジェクトを、専門分野別に切り刻んでしまいます。 分業して

抱え込み症候群

症状何でも自分で決めねばと思ってしまう 相談できない、できる人がいない 自分でやった方が早い。メンバーに任せられないと思ってしまう 症状の概要と症状が招く結果 プロジェクトは他者との共同作業です。他者の存在なくしてプロジェクトを進めることはできません。しかし、「何でも自分で決めようとする」ことは、検討と意思決定に要する時間を増やしてしまいます。その間、メンバーは時間を浪費する他ありません。「自分でやった方が早い」「メンバーがやれそうなところまで自分で作業する」ことも同様です

中央集権症候群

症状権限委譲していない 判断やクオリティ基準を提示・合意していない 決まったことだけを指示・通達している メンバーに自分で考えさ、判断させていない。指示・管理しかせず、任せていない いちいち確認しなければ気が済まない 症状の概要と症状が招く結果 現場で判断・決定させず、報告だけさせてすべて自分が行おうとすれば、プロジェクトのスピードは遅くなります。自分自身が見聞きせず触れていない情報は、判断を誤る可能性があります。自分一人の認知能力には限りがあります。疲労が蓄積すれば集中力

後天性蛇足・転変症候群

症状大事なこと・複雑な事情が、後からわかる 追加作業、仕様変更・修正が相次ぐ 上司やクライアントからやり直しを度々求められる 症状の概要と症状が招く結果 コスト超過、遅延、品質不足など「プロジェクトの死」に至る手前の症状は、そこに至るまでのあいまいな計画や分断されたチームによって引き起こされています。ツール導入担当者が現場の生の声を聞いていないために、あとから必要な機能がわかってしまった。クオリティの基準を共有していなかったから、あがってきたものに満足がいかなかったり、これ