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【読書記録】傲慢と善良 これすごい。


気づいたら、一気読みだった


齋藤孝さんの本におすすめされていたこの本。
引用力がすごい名著だそう。

やっとこさ、読了。
最初は、ミステリーかなって思って読み渋りをしていたけど、違った。
内面の成長物語じゃん!
おもしろい。読みごたえがある!

そして、気づけばどこの本屋にも平積されてる。
これは、売れる本だ。
子ども心を持ち続けてしまった大人の話。
婚活小説として手にとった人も考えさせられる。

主人公の架と、真美はそれぞれ
傲慢さと善良さの性質をもち
嘘の事件から過去をさかのぼることで
自分の気持ちに素直になることを感じる。

それぞれを、善良とみて
それぞれを、傲慢とみて
振り返ると、それは全部自分自身のことだった。

人は、未体験領域に弱い生き物だ。
期待しすぎて、失望して、それで安全な所にとどまっている。
だからこそ、善良に生きてこられた。
でも、はたして本当に自分の心に素直だったのか?
それは、誰かの受け売りの素直だったのでは?

傲慢ごうまんとは

見下し。思い上がり。

それは、生きていく上で誰しも持っている。
程度の差こそあれ、自分と比較し、
同学年のみんなと優劣をつけさせられる。
嘘も方便。
それを学んでいく。
架のグループは、昔からモテていた。
女たちはうまくやっていた。
そこには、傲慢さがないといけない。
傲慢さが許されるのは、信用のある仲間内だけ。
そんな世界では生きてこなかった真美。

類は友を呼ぶ。
だからこそ、真美にとっては苦手な世界がそこにあった。

善良ぜんりょうとは

穏やかで素直。

会話のテンポの速い人は苦手。
みんなみたいに、うまく焦れない。
恋愛の入り口がわからない。
不安。
真面目でとてもいい子。
それのどこがいけないんだろう。
そういう人は、この世界ではとても生きにくい。
時に、律儀というものが人の傷をえぐってしまう。
そのことにすら、気づかぬお人よし。

真美が「善良」かと思いきや、
婚活相手、花垣の「善良」を目の前にして
真美は、嫌になる。
ここはコーヒーでしょ?なのにメロンソーダ?
無垢すぎる行動は、人をイラつかせる。

私は、何もできない赤ちゃんを思い浮かべた。
穏やかな寝顔で眠り、欲求に素直に泣く赤ちゃんを。

みんな、いろいろあるよね

婚約していたはずの真美は
真実をしり、架から逃げた。

震災でみんなが一緒に経験したリセット。
壊され、0になって、少しずつ再生していく日本。
その裏で流れている個々の人生。
婚活・結婚・出産・母と娘・マリッジブルー
依存と自立のはざまで起こる人生の物語。

人からみれば「たいした事」ではない。
でも、本人にとっては「大いにたいした事」だったりする。
そう、大変な事。大事件。大問題。
40歳間近で婚活をしている架も、
33歳で未経験だった真美もしかり。

人から見たら、よくある事。小さな事なのに。
自分を客観視することが一番難しい。
冷静に対処すれば、するりと乗り越えられるのに。
自分の中でこじらせて、タイミングを逃してきた。

真美が架に初めて抱かれたときに
ああ、こんなことだったんだ、と思った。
は、いたるところで起こる。

「たいした事」じゃなかったは体験しちゃったら早い。
それを後から、振り返ってやっと腑に落ちる。

だが、人はすぐには変わらない。
知ろうとしても、すべては結局わからない。
もがいて、苦しむ期間が必要。
やっぱり、体験には及ばない。
自分自身で気づくしかない。

歪んだ愛は、人を変える。動けなくさせる。
でも本当に愛されたら、人は変わる。動けるようになる。
やっと自分の足で歩けるようになる。
みんな、いろいろある。
冷静になって、やっと周りが見えてくる。
それまでの自分の中の常識が崩れていく。

結婚式すら、もはや家同士のものではない。
当人同士の問題なのだ。
今の日本でそう、言いきれたらどれだけ楽だろう。

読みながら、沢山思考させる本だった。
再読したら、違う発見がありそうだ。

おまけ

名古屋人の私としては、

昔は香和女子を出た子は、お嫁さん候補ナンバーワンなんて言われてたんだよ。中学からそこに通っている子は〝純金〟。高校からの子は〝18金〟。大学からの子は〝メッキ〟って呼ばれて

傲慢と善良  p164

このくだりを読んだ時に、名鉄瀬戸線沿いにあるあの大学。
西野カナが通ってた金城学院大学!って思い浮かべてしまった。
地元あるある。


また、おまけ情報としては
この物語後半に出てくる、
真美がボランティア活動中に出会った人。
地域活性化デザイナー、谷川ヨシノや
早苗と力親子が登場する別の小説があるらしい。

こういう作家の遊び心、いいな。
それをあとがきで書くあさいりょうさん。
ご紹介ありがとうございます。
こっちも、気になるので読んでみよう。

こうして、気になる本がどんどん増えていく。


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