見出し画像

「親が離婚するかもしれない」と不安な子どもたちへ

最近,親がけんかばかりしています。このままでは親が離婚してしまうのではないかと心配です。もし親が離婚したら,私はどうなってしまうのでしょうか。

1 両親が一緒にいる時間が増えて、かえってギスギスしてしまう

 コロナの影響で親が家で仕事をすることになったりして、両親がそろって家にいる日が多くなったみなさんもいるでしょう。今までは限られた時間しか一緒にいなかったのに、一日中顔を合わせることによって、夫婦喧嘩が絶えなくなり、「もうこれ以上一緒に暮らしていけない」といって離婚してしまうケースが、今とても多いです。 “コロナ離婚”とか言われています。

2 両親のケンカは、あなたのせいじゃない

 親の喧嘩を目の前で見るのって、本当につらいですよね。ましてや、自分のことが喧嘩の原因になっていたりしたら「離婚するのは自分のせいじゃないか」と思ってしまうと思います。まずお伝えしておきたいことは,どのような事情があったにしても、あなたは悪くないということです。離婚はあなたのせいではありません。夫婦間の問題です。様々な事情から、夫婦として一緒に生活することは難しいと判断し、離婚の決断をするのです。離婚をする際、親は、家族がこれからどうやって生きていくのが幸せか、子どものことも考えて一生懸命話し合いをします。

3 両親の離婚、子どもにはどう関わるの? 

 もっとも、あなたに話し合いの内容はすべて伝わってこないかもしれません。そうなると、「親が離婚したら、自分は一体どうなってしまうんだろう…。」と不安になると思います。

  そこで、親の離婚であなたの生活にどんな変化が起きるのか,一緒に考えてみたいと思います。

① 『お父さんとお母さん、どちらと一緒に暮らせるの?自分の気持ちは優先してもらえるの?』

 親が離婚することになった場合、あなたがどちらの親と住むことになるのか、これは一番気になることだと思います。
 日本の場合、両親が結婚している間は、両親それぞれが「親権者」なのですが、離婚する場合には、どちらか片方を「親権者」に決めなければなりません。「親権者」とは,簡単に言うと子どもを育てる親のことです。親が離婚した後、あなたは、親権者と一緒に生活することになります。もし、あなたの親権者になった方の親が、「今いる家ではなくて,別のところで生活する」となったら、あなたも一緒について行くことになります。行く場所によっては、転校することもあるかもしれません(ただ、学校を途中で変わることがとてもつらい場合には、親権者となる親にその気持ちを正直に伝えてもいいかもしれません。引っ越し先を地域内にして転校せずに済むようにするとか、地域外でも越境して通うとか、一緒に考えてもらうことにより、何か方法が見つかるかもしれません。)。
 このように、どちらの親が親権者になるかということはあなたにとってものすごく重要なことです。
 だから、親が離婚する際に、あなたがどちらの親と住みたいか、その理由はなぜか、あなたの気持ちをしっかり親に伝え、理解してもらうことがとても大事です。
 親が裁判所の手続きを利用して話をしているときには、あなたの気持ちを聞く手続きがあるのですが、そうでない場合には、自分から親に伝えていくことになります。
 伝え方は、口頭や手紙、第三者を通じて話をする等いろいろな方法がありますが、どうしていいかわからなくて悩むときは、一緒に考えますから、私たちに相談してください。

② 『名字は変わってしまうの?』

 日本では結婚すると、どちらかの戸籍に入り、名字を統一することになっています。
 親権者が、結婚した時に名字を変えていた場合(日本では、お母さんがお父さんの名字を名乗っていることが多いです)、離婚するときには、昔の名前(旧姓)に戻るか、離婚時に使用していた名前を名乗り続けるか選ぶことができます。
 そして、親権者は、子どもが未成年者の場合、子どもに自分と同じ名字を名乗らせる手続きを取ることができます(反対に、子どもの名字を変えないままにすることもできます)。だから、親権者が昔の名前に戻った時、あなたも名前が変わる可能性があります。ただ、あなたの知らないところで名前が変わってしまうようなことは、望まないでしょう。もし、あなたが名前を変えるのが本当に嫌なときは、親権者となる親にその意思をはっきり伝えて、よく考えてもらうことが大事だと思います。

③ 『離れて暮らす親とは会えるの?』

 離婚で「親権者」でなくなった方の親でも、あなたと親子でなくなってしまうわけではありません。
 親が離婚したとしても,お父さんはずっとあなたのお父さんですし,お母さんはずっとあなたのお母さんです。離婚によって,家族の形が変わっても,親とあなたとの絆までもが変わるわけではありません。
 子どもは「離れて暮らしている親と会いたい」と思うこともあるでしょうし、離れて暮らす親の方も「子どもと会いたい」と思うこともあるでしょう。
 そのため、親が離婚したあとも、離れて暮らしている親子が会ったり,連絡を取り合ったりすることが権利として認められています。これを「面会交流」といいます。面会交流は、いつどこで会うか等、親が話し合って決めることになりますが、それにあたっては、子どもの置かれている状態、気持ちに最大限の配慮をすることが求められています。
 離れている親と会いたいときは、あなたの希望もしっかり伝えるといいと思います。
 反対に、もし、いろいろな事情で,離れて暮らしている親と会いたくないという場合には、あなたの気持ちが尊重されますので、無理して会わなくてもよいです。

④ 『お父さんが自分と住まないのであれば、生活費や学費は出さないと言っているけど大丈夫?』

 親が離婚した場合,親権者となる親の収入だけで生活するとなると,これまでどおりの学校生活や習い事を続けられるのかという不安があるかもしれません。
 もっとも、あなたの生活費や学費などについては,離婚しても親が分担し合うことになっています。生活費の分担は「養育費」といって,それぞれの親の収入額に応じて,離れて暮らしている親が一緒に暮らしている親に支払うことになります。私立学校の学費についても,離れて暮らしている親に分担してもらうことができる場合があります。なお、養育費を負担してもらうために会いたくないのに無理に面会をしなければならないと思い悩んでいる子どもがいますが、そんなことはありません。お金のことは,「面会交流」とは全く別の話ですから,あなたが離れて暮らしている親と会わないと生活費や学費を支払ってもらえないということはありません。

4 あなたの気持ちを聞かせてください 

 親が離婚することで、子どもの生活は大きく変化します。
 離婚は親同士の話し合いと言っても、子どもだって、自分の意見を持っています。「本当は親に離婚してほしくない」,「親と一緒に暮らしたい」,「転校したくない」,「塾や習い事を辞めたくない」,「離婚後も離れて暮らす親と会う約束をしたい」,反対に「頼まれても会いたくない」など,聞いてもらいたい気持ちはたくさんあると思います。
 その気持ちを親に自分で伝えられたらいいですが、伝えたくても,「こんなこと言っていいのかな…」と迷うこともあるでしょうし,「どうせ大人が決めるんだから,言ってもムダなんじゃないか」と思う人もいるかもしれません。大人を相手に、自分の考えをうまく伝えるって、なかなか簡単なことではないですから、当然です。
 言いたいことが言えずに悩んだり、心配になったときは、私たちに相談してみてください。弁護士が、あなたの気持ちを聞いて,アドバイスをすることはもちろん、あなたの代わりに親にあなたの気持ちを伝えたりすることもできます。もちろん、あなたが私たちに相談したことは、あなたの了解なく親に伝えることはありません。

(私たちに相談をするときのメールはこちらです)  

kodomototsunagaru@gmail.com