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【インタビュー(後編)】海外ルーツの子ども支える 多文化コーディネーター アマドゥ理和子さん 〜これからの多文化コーディネーター

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住友商事プロボノチームが連載でお届けしているYSCグローバルスクールのコーディネーター、アマドゥさんのインタビュー記事も今回で最終回となります。
前編「多文化コーディネーターとは?」、中編「多文化コーディネーターになるまで」もぜひお読みください)

ひとつの「正解」があるわけではなく、その人の経験、スキル、関心を活かしてさまざまなアプローチができるのも、多文化コーディネーターの奥深いところ。
アマドゥさんの場合は、これから取り組みたいこと、私たちにできることについてどう考えているのかを今回は聞いてみました。

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―― 先ほど、学校が外部と協働する難しさについてお話しされていました。
もっと学校と直接連携できて、サポートが必要な生徒を見つけたり、現場の先生方の声を聞けたら良いのにとおっしゃっていましたよね。
それなのに、コロナ禍で先生方や行政・福祉の関係者と繋がれる勉強会もなくなってしまったと…。

今後、足立区で子ども支援をしている方々とどう繋がっていくかも含めて、どのような活動をされたいですか?

幸い、足立区の中でも支援の場が増えてきていて、外国ルーツの子どもの学習支援を行う団体もいくつか出てきています。うまく役割分担をしながら、地域全体で海外ルーツの子どもたちをサポートしていけたらと思っています。

YSCグローバル・スクールでは今後、これまでの積み重ねを生かし、海外ルーツの障害を持つ子どもやその保護者、働きたいけれど一歩が踏み出せない若者たちに手を伸ばしていくつもりです。

YSCグローバル・スクールを運営しているNPO法人青少年自立援助センターは、足立区内でひきこもり状態にある若者や生活保護受給世帯の若者などを対象とした事業をいくつか行っているのですが、海外ルーツの若者や家族が利用する場合もあり、そういう時には私も同行したりしています。今は中学校卒業後にひきこもり状態になった若者に、月1回、会いに行って、今後のことについて一緒に話したりしているんですよ。

学校への登校だけでなく、私たちのスクールのような支援の場に通うことも難しい、ひきこもり状態にある子どもや若者は他にもいるのではないかと思っています。そういう人たちに、支援を届けていきたいです。


―― より積極的なアウトリーチということですね。

そうです。ひきこもっている子どもは見つけにくいし、家族が「知られたくない」と思ってしまうこともあります。隠れた存在になりがちなので、長期間の地道な働きかけがここでも重要になってきます。

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―― 私たちのように、この問題に対して近い距離にいるわけではなかったり、まだあまり身近に感じられなかったりする人でもできる支援があれば教えていただけますか?

どんな切り口でもいいので、興味を持ってもらえたら嬉しいです。

私自身の意識の変化をふりかえってみると、この仕事に就いて、また日々の子育てを通して、政治に興味を持つようになりました。
スクール代表の田中宝紀の活動や発信が社会を変える力に繋がるのを見てきたので、特に若い世代の人たちが、もっともっと「自分ごと」として政治に興味を持ってくれるといいなと思います。選挙があれば、各候補者について自分なりに考えて投票するとか。

たとえ小さな行動でも、積み重なれば世の中を良い方向に変える力になりますし、そういう行動も「支援」になるのではないでしょうか。

具体的に外国人に関することで言えば、ネットで注文した商品が届いたら「これはどんな人たちが仕分け作業をしたんだろう?」とか、「今日のこのコンビニのお弁当は、誰が作ったんだろう?」という視点を持ってもらえたらと思います。


―― そういう工場で働いている外国人も多いのですか?

はい。物流、食品加工、自動車の生産など、見えないところで日本の生活を支えている外国人が大勢います。

農業もそうです。たとえば、「今日食べている『高知県産』のみょうがはフィリピン人実習生の労働で作られている」と知ったら、この社会でもうすでに一緒に生きている、身近な存在だと感じられるようになるかもしれません。

【参考記事】 


―― 最後に、多文化コーディネーターというお仕事の魅力は何ですか?

そうですね、ひとつ挙げるなら、自分の経験や属性をベースにして、いま困難を抱えている方のお手伝いができることでしょうか。そして困難を乗り越えた瞬間に立ち会えて、一緒に笑い合えること。こんな素敵な瞬間はそうそうありません。

一方で、社会の闇や人の心の暗部にも直面しますから、とてもつらい気持ちになることもあります。でも、教室にやって来る元気いっぱいの子どもたちの日々の成長や、保護者たちの笑顔に、こちらが励まされているように思います。

まさにこの状態が「共生」ということなのかもしれません。支援する側、される側という関係性ではなく、お互いに支え合っているんですよね。

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*スクールでは現在、ボランティアの募集は行なっておりません。

構成・執筆:住友商事プロボノチーム
編集:青少年自立援助センター YSCグローバル・スクール
写真:森佑一

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