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諸悪の原因は、かき氷です。(2)

「や、やぁ!」

殿に代わってご友人と挨拶する足軽。

「な、なぁ、ルイ。保育園のお友達か?」

小声で殿の耳元でささやく足軽。

「あぁ。そうだよ。」

何ともクールな返答が返ってきました。

殿のご友人とあれば、足軽のご友人。

「どうも、どうも~!」

と無駄にテンションの高い足軽がずずいっと前に出ようとしたら、隣にご友人のお母様がおられました。

「あら、同じ時期に健診だったんですね!」

若々しいお母様に足軽、

「えぇ。3番目がちょうどこの時期でして・・・。」

「えぇ!お子さん3人もいらっしゃったんですか?」

えぇ!3人いる母に見られてませんでした?!

逆に驚きながら、

「えぇ・・・。実は、ルイは、三男なんです・・。」

「そーだったんですか!」

ホントに私、クラスの保護者の方から浮いているんだな・・・。

何故か痛感しました。

いやいや、健診12戦目の私。

歩兵から足軽隊長まで上り詰めた私。

出すぜベテラン感!

こなすぜスマート健診!

確固たる決意を固めた矢先、またもや呼ばれました。

「ルイ君~。」

あ、今度は、歯科検診ですね。

さぁて、殿、参りまするぞ。

「あっちに何か面白いことがあるらしい。」

またもや偽の情報で殿を連れ去りました。

歯科検診の中待合、今か今かと順番を待っていたら、

「ねぇ、おしっこ。」

また、殿が尿意を催しました。

「え・・・。さっき行ったよね?」

「でも、おしっこ!」

あああ・・・あわあわ。

「す、すみません、トイレ行ってもいいですか?!」

両手でTの字を作り、トイレのTなのか、タイムアウトのTなのかよくわからない文字を近くの保健師さんに見せました。

保健師さん、ホイッスルを拭くかの如く、

「どうぞ~」

とトイレを指さす。

殿を抱え足軽隊長トイレへダッシュ。

健診の順番を待っておられるお子様方の間を殿を抱えくノ一のごとく駆け抜けていく。

「と、トイレより戻りましたぁ。」

中待合に戻ったころには、さらに大量に汗をかいている足軽隊長が出来上がりました。

ささ、殿、お口を開けてくだされ。

歯医者嫌いの殿が用を足したスッキリ感のせいか、すんなりと口を開けました。

歯科検診終わり、またもや健診待合所へ戻される我ら。

殿、あともう一息ですぞ!

なんだか、殿の機嫌の雲行きが怪しくなってきているのが、分かる。

「あ、ルイ君じゃ~ん。」

は!またもやご友人!!

「どうも、どうも~!」

無駄にテンションの高い足軽、殿をサポート。

そして、繰り返されるお母様との上記のやり取り。

毎日ひぃこらひぃこら息子追いかけてますけど、これ三男なんです!

よっぽど、育児ベテラン感が出ていないんだな。

改めて痛感しました。

よし、さっきは、あらぬところで、『T』を取ってしまったが、最終決戦では、

出すぜベテラン感!

こなすぜスマート健診!

また、闘志に燃えました。

「ルイ君~。」

来た!呼ばれた!さぁ、行くぜ殿!!

と、との・・・?

「ね、眠いよぉ。」

半目だ‥。殿が半目だ・・・。

「起きるんだ、起きるんだ!今、ここで寝ると戦に負けるぞ~!!!」

よくわからない、足軽の呼びかけに殿、何とか持ち直しました。

「は~い、じゃあ、積み木を積んでくださ~い。」

と、殿。。半目で見にくいかもしれやせんが、これが、積み木というやつです。

軍師様がおっしゃる通り、木を積んでくだされ!!

殿の背後から念を送り続ける足軽。

何だかもう眠気のヴォルテージが上がってきている殿。

ふらつく手で木が摘みあがりました。

その後も保健師さんからの質問に、朦朧とした様子で答える殿。

「じゃあ、最後にもう一度お名前を教えてくださ~い。」

お、お名前ですか。

殿、名を!!!

殿をガン見の足軽。

「お・・。」

お?

「おしっこ!!」

またか!!

足軽が『T』の字を作るより、先に、殿が厠へと駆け抜けていきました。

もう3度目の厠です。在りかは分かっています。

よし、殿!先に厠へ行ってくだされ。

もう、本日3度目の殿の厠に疲れ果てた足軽は、ヘロヘロと待合所を潜り抜け、厠の前に到着しました。

が・・・。

何故か、泣き声?

うん?

「殿、ご無事か?!」

勢いよく厠の扉を開けると、上下びしょ濡れの殿が立っておりました。

「も、洩れちゃった~。」

失敗したことに泣き出す殿。

3度目のトイレダッシュに足がもつれて間に合わなかった足軽。

トイレ待合所のすぐ横。注目浴びる我ら。

「お母ちゃん、着替えは?」

「き、着替えね・・・。」

ベテラン母なら持っているであろう着替えの一枚や二枚。

「も、持ってません・・・。」

殿に絶句されました。

トボトボとまた健診会場に戻ると、

「さっきの、お名前だけ答えてくれるかなぁ?」

と保健師さん。

な、名前ですか・・。と、殿・・・、名を名乗ってくだされ・・・。戦も名乗り合いから始まると・・・。

恐る恐る殿を見つめると、

「もう、寝る・・。」

殿のスイッチが切れました。

そして、尿で濡れた服のままで足軽の膝の上に転がる殿。

「殿、名だけ名乗ってくだされ~~。」

足軽の言葉がむなしく響きましたが、そのまま、どのようにゆすっても起きず。

あぁ~~~・・・。

「こ、こりは、いかに・・・?」

保健師さんを見上げると、

「では、また後日、様子を見させてもらいます。」

13戦目が決定した瞬間でした。

片手に殿、片手にマザーズバック。

登場した出で立ちと変わらぬ姿で退場しました。

あぁ・・・やはり今回も、

微塵も醸し出せなかったベテラン感・・・。



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