霊感の起源
僕は波長が合うと心霊体験することがある。
その起源っていつから?
子供の頃、そんな疑問を父親に投げたことがあった。何故父に聞いたのかというと、僕の家族のうち心霊体験を話してくれたのが父だったから。
父によると、
「多分、お前のおじいちゃんだな」
おじいちゃんは戦争体験者だった。壮絶な体験をしてきたはずだけどそれを語らず、寡黙で温かい人だった。
とても人望があったらしく、70歳を過ぎても頼まれて仕事をしていた。
そんなじいちゃんはいくつか不思議な体験をしている。その中で父が知っている限り、最も古いのは岩内大火のときの話だという。
岩内大火は1954年(昭和29年)9月26日に北海道の岩内町で起こった火災で、出火原因はアパートの住人による火の不始末。それが台風の影響が重なり、町の8割の家が焼失し、30人以上がなくなったという。戦後3番目に大きな火事で、その様子は水上勉の小説「饑餓海峡」で語られている。
この岩内大火が発生したとき、じいちゃんは自宅から離れた岩内の繁華街の辺りにいた。
そして、アパートで発生した火事の火の粉が台風による風にのって方々へ飛び、瞬く間に町が火の海と化したようだ。
父はその頃、繁華街から離れた自宅でじいちゃんの帰りを待っていたが、繁華街の方が真っ赤になっている様を見て胸騒ぎが起こっていた。
案の定、じいちゃんは火の手から岩内港の方へ逃げたが、海は台風で荒れていた。しかし、大火による熱波が死にそうなほど熱い。
周りを見渡すと逃げてきた人たちが何人もいたが、熱波に耐えられず、台風で荒れた海に飛び込んだ人が溺れていった。
どちらを選んでも、生きることは難しそうだ
とじいちゃんは思ったらしい。そして海へ飛び込んだ。
台風で荒れた海では思うように動けない。そして海水を飲み込んでしまい、溺れそうになった。
もうダメか…
そう思ったときに、視線の先に喪服を着た老婆が立っていた。
しかもその人は海の上に立っていた。
じいちゃんは何故かその老婆に向かって泳ぎ出した。
そして、その人のところにたどり着いたとき、目の前に大きな板にぶつかった。
助かった…
じいちゃんはその板にしがみ付き、何とか浜辺まで泳ぎ、たどり着いた。
そして自分の命があることを確かめてから、海の方へ振り返ったけれど、老婆の姿はなかった。
じいちゃんはその老婆が誰なのかわからないという。
この話が僕等一族の霊感の起源だと思っている。
不思議な体験はじいちゃんも父も、僕もしているけれど、不思議だったり、良い話もある。
だから、総じてじいちゃんには感謝である。
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