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料理本探訪「神田裕行のおそうざい十二ヵ月」

私はちょっとした料理本マニアだ。リビングの本棚には二区画にわたって料理本が詰まっている。ざっと数えてみたら50-60冊くらいあった。

ただ料理を覚えたいなら「土井善晴の料理100」あたりを読み返せば1冊で足りるのに、こんなにも料理本が増殖してしまうのは何故か。

日々の料理にヒントや新鮮さを求めてしまうというというのがひとつ。そしてそれ以上に、料理本のなかには書籍から料理人たちの「コダワリ」が伝わってきて、読み物としても楽しめるような良本が多いのも大きいのだと思う。

以前、特に好きなものはどれだろうと考えたことがある。キリよく7冊挙げた。

このとき一番に思い浮かんだのが標題の「神田裕行のおそうざい十二ヵ月」。

著者は元麻布「かんだ」の神田裕行氏。店はミシュラン三つ星を何年も取り続けているという。最近は沖縄のリゾートホテルでレストランの監修もされたらしい。いつか訪ねてみたい。

書籍は「暮しの手帖」の連載を下敷きにしたもので、掲載されているのは和食(おそうざい)の王道とでも言うべきものばかり。素材の味や季節感を大事にしたレシピはどれも鮮やか。

それでいて今風にアレンジもされている。「トマト牛丼」なんか最高だ。神田さんは次のように書いている。こんなやり方があるのかと感心してしまう。

 味の好みは時代によって変わっていきます。昔から定番のおそうざいを、現代の嗜好に合わせて、味つけのバランスを考え直してみました。
 例えば牛丼。昔の日本人は甘めの味つけが好きだったので、玉ねぎ入りの甘い牛丼が定番でしたが、現代では少し甘すぎるのではないかと思います。
 そこで今回は、玉ねぎの代わりにトマトを加えました。(以下省略)

「ハレ」ではなく「ケ」の料理を重視するところも好きだ。澄ました料理ではなくて、ホッとする家庭料理を大切に、という考え方。「タレ」や「割り下」を多用するレシピは日々の生活にも取り入れやすくもある。

私なんかはどうしても見映えを気にしてしまうのだけど、本当に大切なのが何かは決まっている。

未読の方にはとくに前文だけでも読んでほしい。つい頷いてしまう言葉ばかりで、レシピ以外の頁も繰り返し読んでしまう。料理好きな方なら誰にだってお勧めしたい。是非。

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