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【読書記録】パパイヤ・ママイヤ(乗代雄介)

出張予定の日に乗代雄介さんの新刊が出ると聞いた。新幹線で読みたいと思い朝イチで本屋を訪ねると、あいにく配本がないという。新幹線停車駅の本屋なのに。なぜだ大宮。

仕方がない復路で読もうと思い直して、出張先で本屋に寄る。駅から徒歩1分の大箱書店。これならきっと大丈夫と入荷状況を尋ねると、やはり配本がないという。どうして富山。

諦めてAmazonすると無事翌日には届く。もともと新刊情報を教えてくれたのもAmazonだった。もうAmazonさえあればいい。でも本当は書店で平積みの新刊を手に取って、ワクワクしながら改札を抜けて、新幹線に乗る前から駅のベンチで読み始めたりしたかった。

けっきょくは別の出張に連れ出して、読み始めると止まらなくなって、片道の間に読み切ってしまった。

とにかく爽やかで甘酸っぱい。ただ美しい写真のように感じながら読んだ。これは果たして、乗代さんがいうような“白飛び“なんだろうか。露出オーバー気味に書いても白飛びしないくらい、人物が魅力的なのかもしれない。雨の日のエピソードはいくらあざとくても泣いてしまう。ラストシーンも映画のようにコントラストが鮮やかでしばらく頭から離れそうにない。

乗代さんの作品で書かれるこの手の“実直さ“や“人間らしさ“が私は好きなのだと思う。「旅する練習」や「皆のあらばしり」にも同じような共感があった。「生き方の問題」を魅力的に感じてしまうのも、人間らしさに惹かれるからか。

すべて計算ずくで書けるなら職業作家というのはすごい。装丁もなるほどという感じ。また読み直したい。

〈参考〉乗代さんの解説

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