生土礼賛 (うぶすならいさん)展
第1章 土の誕生
わたしは土。
わたしは土。太古の昔からこの星にある。実を言うと、この星が生まれるまえからわたしは存在していたんだ。わたしは宇宙に漂う、たくさんのいろんな物質だった。それがぶつかりあって、くっつきあって、星になったんだ。物質たちは溶けて、冷えて、固まって、砕けて、流れて、混ざり合い、積み重なり、大地が生まれた。わたしは命をはぐくむ大きな土台となった。そして命は、最後にまたわたしの中へと還ってくるのだ。
星に住まう者たちと紡いできた、わたしの物語をご覧にいれよう。
わたしを構成する物質は、何百、何千、何万もの種類があり、それぞれが混ざり合っているので、あちこちで顔が違う。真っ白で滑らかな部分もあれば、黄色くてパサパサしている部分もあるし、黒く、ボロボロした感じの部分もある。水の底にあって酸素が足りなかった場所では、青い顔。よい作物ができる農地には、微生物たちがいっぱいいて、湿った濃い茶色。火山が噴火した場所では、火山灰の灰色が、何百年もかけて黒くなっていく。気温の高い熱帯では、地中の鉄が酸化するせいで、黄色か赤い色をしている。
わたしは土。きみが立つその場所の、長い長―い履歴書だ。
きみたち人間の祖先は、わたしのさまざまな色を採集し、動物の骨からとった接着剤を混ぜて、大きな絵を描いた。記録するために。祈るために。死を悲しみ、生をよろこぶために。絵画は時を超えてさまざまな出来事を伝えゆく。それはわたしの体ときみたちの心が生み出した力なのだ。
第2章 土の性質
わたしのことを「なんだ、土か。それならもう知っている」と、きみは言う。でも本当に知っているのか? わたしは時に、ハンマーで叩いても壊れないほど硬く、また時には、ぐにゃぐにゃしてやわらかい。手では持てないほど重い時もあれば、風でどこまでも飛んでいくほど軽い時もある。
わたしは宇宙の一部であり、命を生み出す者。わたしを知る者は、わたしから、生きるためのより多くの知恵を得るだろう。
第3章 土に住まう
きみたちの祖先は、わたしを加工して家を作った。枠をつくり、そこに土を押し込んで固める。それを壁にする。そうやって作られた家には驚くべき調湿効果があり、夏は涼しく、冬は温かかった。外の騒音も低減され、とても静かに過ごせた。夜はみんなぐっすり眠ることができた。わたしとともに生きる選択をした者たちは賢かった。土に住まうとは、つまり、星に守られて暮らすということだからだ。
第4章 土と芸術
わたしは、大地であると同時に、きみたちを守る家であり、また有益な材料にもなった。陶磁もガラスも、わたしの一部から作られていることを、きっときみたちは知っているだろう。
命と命のない者の間を媒介し、宇宙と人間を媒介する者、土。長い時の流れの中にあり、ずっと遠い未来を見る者、土。その姿をもっとも明らかにするのが芸術家たちだ。彼らが見せてくれる土のヴィジョンに浸ってほしい。
第5章 もっと土に触れよう!
わたしは、土。きみが望むなら、わたしはもっと異なるものにもなれる。楽器にだってなれる。街にだってなれる。今しばし、わたしと楽しく時を過ごしてくれ。そして明日になっても、明後日になっても、わたしがいつもそこにいることを、覚えておいてくれ。
終
Curators: 李丹丹 Li Dandan、穆鈞 Mu Jun、飯島剛宗 Iijima Yoshitoki、Code-a-Machine (金澤 韻 Kanazawa Kodama、増井辰一郎 Masui Shinichiro) / Exhibition Design: KUMO / Exhibition Coordinator: 孫露 Kathy Sun (明珠美術館 PAM) / Graphic Design: 宮本徹 Miyamoto Toru, 高野直 Takano Nao, 志賀康弘 Shiga Yasuhiro / Translation: 林葉 Lin Ye, 袁璟 Yuan Jing / Illustration: 宇山紡 Uyama Tsumugi
*明珠美術館WeChatでの広報
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