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Book.4 ある男(平野啓一郎)

KODAMAの読書記録4冊目。

「マチネの終わりに」から2年後,平野啓一郎さんの待望の新作とのことで話題になった記憶がある。


淡々と進むストーリーの中に,どこか違和感を覚える作品。この違和感が程よい緊張感とともに作品へ引き込むスパイスのようであり,巻末に向けて小さな違和感たちが巻き取られていく展開からは,著者の緻密な性格を感じる。

「ある男」は,前作「マチネの終わりに」と同様,「愛」を主題として取り上げた作品ではあるが,切り口は全く異なる。「愛とは何なのか」「恋人・家族とは何か」という壮大な問いはそのままに,例えば,世界を舞台にした前作とは逆に,非常にローカルな舞台をメインとしつつ描いている点はとても興味深い。

また,前作の感想では「著者の芸術・音楽に対する深い造詣を感じた」と述べたが,本作では「社会構造や法律」を違和感なくストーリーに落とし込んでいる点に感銘を受けた。おそらく,芸術や音楽は生活が,社会構造や法律は学生時代の学びが影響しているのであろうが,非常に博識であることが伺える。


もちろん,本作のみでも十分に魅力を感じることができるが,「マチネの終わりに」を読んだ上で本作を読むと,上記の内容が分かって面白い。ぜひセットで読んでほしい。


KODAMA