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Book.5 コンビニ人間(村田沙耶香)

KODAMAの読書記録5冊目。

芥川賞受賞で注目を集めた本作だが,実際に読んでみるとその理由がよく分かる。特徴のある作風で,端的に「おもしろい」。

文庫本で約160ページと比較的短いので,読書習慣の無い人でも手に取りやすい作品。

「起伏の少ない作品」

読了後に感じた印象。これは決してマイナスのイメージではない。

本作は,ヒット作品にしばしば見られる「登場人物の繊細な感情表現=ストーリーの盛り上がり」には該当しない(と私は思う)。

「風景描写」が妙に精巧で,あくまで客観的な印象の文体であるにも関わらず,景色から心情の動きを感じるのだ。特に,冒頭の表現は素晴らしく,本作の中で私が最も好きなのも冒頭である。

誰もがイメージできる日常の1ページを切り取ったような世界“だけ”で,平凡なストーリー”だけ”で,人の関心を惹きつける作品は稀有だと思う。

「徹底的に削ぎ落とした世界」と「無機質かつ一瞬感情を感じさせる描写」に著者の特徴を感じた。村田さんの作品は初めて読んだが,他の作品も気になるところだ。

「普通とは何か」を考えさせられる作品であるが,この作品の中に「解」があるわけではない。それでも,世の中に問う力が短い文章の中に込められており,読み終わった後にも様々な方向へ思考が回らされる感じがあった。

作品そのものも評価されて然るべきなのだが,コンビニ人間は作品の外にこそ実在し,身の回りにもその世界観や影響が広がっているような感覚になる。そして,こうした部分がきっと評価されたのだと思う(先入観が入るので受賞理由等は調べていない。的外れだったらご容赦願いたい)。

中学校卒業以来,「読書」というものを全くしてこなかったが,新型コロナウイルスがこうした素晴らしい作品に出会う機会を与えてくれた。記録を残すことはモチベーションに繋がるし,何に繋がるかはわからないが,できるだけ継続していこうと思う。

KODAMA