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Book.3 マチネの終わりに(平野啓一郎)

KODAMAの読書記録3冊目。

以前,あるメディアで平野啓一郎さんを見かけた際,彼の掲げる「分人」という考え方に非常に共感を覚えた。

私がなぜ感銘を受けたのか。その内容は,他のnoteに記録することとする。

今回は,その時から気になっていた平野啓一郎さんの代表作「マチネの終わりに」を読んだ。

〜Memo〜

平野啓一郎さん:京大法学部在学中,文芸誌に投稿した「日蝕」が芥川賞を受賞。その後,「葬送」「ドーン」など様々な作品を執筆し,世界各国で翻訳されている。

〜Review〜

KODAMA的オススメ度:★★★★★

久々に誰にでも薦めたくなる作品に出会えたと感じた。

「愛」をテーマにした作品であり,ストーリーが特殊かと言われればそうとも感じない。しかしながら,ぐっと惹き込まれる不思議な魅力を持った1冊だった。

また,芸術や音楽に関する背景知識や繊細な描写から,著者の平野啓一郎さんのアートに関する深い造詣が感じられる。

この本を読んだのは,四国を巡る旅の最中だった(偶然であり,深い意味はない)。「沈黙が気にならない関係」とでもいうのだろうか,仲が良いが話す言葉数が多くはない友人との2人旅。

直前まで仕事に追われて忙しない生活をしていたこともあり,少し前の学生生活のように,ゆっくりと思考を巡らす時間が確保できていなかった。

久々の静けさのなかで本作を貪るように読み,「愛」はもちろん,そこから人間関係や自分自身を見直すことができた。

「蒔野」や「洋子」の感情の動き・表現の中から,「愛とは何か」という主題について,社会に問いかけるようなメッセージ性を感じる。

言語化できない感情を行間で表現するセンス・技法が卓越しており,読者の心を掴んで離さないのも,こうした創造性を掻き立てる運び方にあるように思う。

一気読み必至。久々に出会った至高の作品。作品の中に生きている平野さんからのメッセージを,自分の中で咀嚼しながら味わってほしい。

KODAMA

※四国では「私たちの感じる豊かさ」に関して思うところがありました。別の機会に書きたいと思います。写真は「日が落ちる前に!」と思って,急いで撮った四万十川。