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薬局運営相談実例② ~キャッシュフロー改善~

前回は企業再建協同組合から依頼を受けた「キャッシュショート」している企業の企業再建案件のお話をさせて頂きました。残念ながら色々とあり、結果としては「失敗」に終わってしまったのですが、お金絡みで次は上手く改善できた事例についてお話が出来ればと思います。

※タイトル画像はイギリスに行ったときに受け取ったお金であり私が書いたものではありません。

キャッシュフローを把握している経営者は意外と多くはない

こんなことを書くと怒られてしまいますが、キャッシュフローをきちんと把握している中小薬局経営者は多くはないです。さらにいうと財務諸表をきちんと見れる経営者も少ないと思います。
キャッシュフローについては、中小企業の場合、「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」の作成は求められていますが、「キャッシュフロー計算書(C/F)」の作成は義務ではなく、またお金の流れについては税理士というよりも会計士が専門ですので、薬局に限らず作成をしていない中小企業は多いのではないでしょうか。
もちろん、顧問税理士によっては作成をしてくれるところもあります。

キャッシュフローの悪化でサポート依頼を受けるということはほとんどないのですが、関わっているうちに6割近い企業は「キャッシュフローの悪化」という問題が見つかり、偶発的に改善に向けたお手伝いをしています。

全ての企業が決算書を開示してくれるわけではありません。もちろん強制もしません。ただ実際の運営改善を把握する上で売上状況はもちろん、損益計算書の把握はとても重要です。そして、意外と見落としがちなのが貸借対照表です。

正直キャッシュフロー計算書までの作成が必要かというと・・・ってところですが貸借対照表を理解し保有資産の把握をすることは、投資の面からも非常に重要です。

キャッシュフロー悪化の要因

ここでいうキャッシュフローはキャッシュフロー計算書で見る1年間のお金の流れの把握ということではなく、純粋なる「キャッシュの保有状況」という意味合いで使用しています。
実際にどういうことが起きているかというと、

・賞与時期になると借入を行う
・売上が黒字なのに、期末にマイナスになっている
・保有資産が多いのに現金が少ない(流動比率が悪い)
・医薬品支払サイトにあっていない現金

などがあります。
実は「短期的な借り入れ」なのに「長期借入金」となっており、整理してみると実は流動比率が悪いというケースもあります。

考えられる問題として

・節税目的で入った保険が過剰となっている
・在庫が過多となっていてキャッシュが足りない
・あまり意味のない固定資産(建物、土地、ゴルフ会員権)
・投資目的有価証券(株式)

こんなことが考えられます。

キャッシュを増やすことは実は難しい

意外とこの問題で、顧問の税理士の方と戦うことは実は多いです。
理由としては
「税理士の紹介で加入した保険に対する指摘などをしてしまうことが多い」
「節税とキャッシュをためるということは意外と反対的」

だったりするからです。

売上や利益を増やす方法は

・患者を増やす(増患)
・販管費を減らす
・施設基準などを取る

こんなことをして行きますが、これらをしたから単純にキャッシュが増えるとは言えません。

キャッシュフローの改善には

・固定資産から流動資産へ切り替える
・在庫を現金に切り替える
・素直に税金を払う

このような方法が考えられます。

意外と見落としがちなのは土地や不動産などの固定資産です。簿価と実勢価格が異なるので、実は帳簿ほどの価値がないということはよくあることです。(都心部ではその逆もあり)

実際に私たちがやることとしては、主に固定資産の整理と在庫の現金化となります。

固定資産の整理とは、持っている保険の見直しなどを行うことです。
在庫の現金化は、適正在庫・適正発注の仕組みに切り替えることです。

在庫に関する考え方を誤っている経営者も非常に多いですが、これはまた別のお話で。。。。

これで固定資産を流動資産へと切替、キャッシュを生むことができます。もちろん必要なものは残しておきます。

もう一つは医薬品交渉です。私が関わった数年前と今日では少し状況が違うので、いまではやり方が異なりますが、8年ほど前の当時、購入価格を数%引き下げることによって、数千万円のキャッシュを作ることが出来ました。

当然ながらその分は利益が出るわけですが、「利益=キャッシュ」ではないですが、利益がたくさん出たのでその利益を処理してしまうと、結局はまたキャッシュ不足に陥ります。

こういった手法はその時しか使えないので、個々で失敗してしまうと取れる戦略がなくなって行ってしまいます。(絶対に反対をしますが)

本来の依頼は業務改善や売上向上なのでそちらの方も並行して行っていきますが、意外とシンプルではありますが、こういった地味なことで企業規模によりますが数千万近いキャッシュを生むことができます。

薬局業界の流動比率がどうあるべきかは支払いサイトなどによっても異なりますが少なくとも1.5~2は欲しいものです。

お金は借りられるうちが華である

薬局バブルと言われた時代、そして確かに小売業の中でも安定的と言われる薬局です。地方地方においては薬局は優良企業であり、いくらでも貸してくれるという地域もあるかもしれません。
そうはいっても時代が厳しくなると、蛇口は締められます。

経営の多角化に失敗し、残ったのは巨額の借入だけという企業もよく聞きます。薬局業界、なんかあったら「銀行から借りる」というのは業界が明るいうちであり、本当に必要になったとき、財務諸表自体では貸してくれないのが金融機関です。

「よ~く考えよ~お金は大事だよ~」

とはとてもよくできた歌です。

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