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オンライン資格確認を考える③

ここまでの記事は以下をご確認くださいませ。

結局、なにか変わるの?

これまではオンライン資格確認の前段にあった「どこでもMY病院構想」やPHRの話、「支払基金改革」の話を書かせて頂きました。「で、結局薬局や医療は関係あるの?」という話です。個人的には大きく『ある』と思っています。というのも、ただ厚労省が説明をしている受付業務の負担軽減、審査業務の効率化だけで2019年予算300億円、2020年768億円の公費を費やしたプロジェクトを進める必要性を感じません。もちろん支払基金改革による公費軽減もその一つですが、どう変わっていくのかを少し考えてみたいと思います。

薬剤情報の閲覧・共有について

注:ここからは私見の連続が始まります。

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薬剤情報の閲覧が、医療機関と薬局で始まり、レセプトと連動するので全て保険により処方された医薬品の情報を得ることができます。現状は薬歴やお薬手帳での既往薬や過去の投薬歴を確認していましたが、このシステムに限界を感じていた方も多いのではないでしょうか。また、一元的管理が出来ないことが処方カスケードやポリファーマシーにみられる重複投薬に繋がっていたと思います。すべての医療機関でオンライン資格確認が利用されるのは2023年を目途としていますが、仮に全運用が始まれば、大きく不要な薬剤の処方、重複投薬の回避、処方カスケードによる健康被害の抑制が出来るのではないでしょうか。

それと同時に、いままで薬局で評価されていた「重複投薬相互作用等防止加算」ならびに「薬剤服用歴管理指導料」における手帳確認の行方が気になります。さらには、処方の時点でこれらの情報が確認できるようになることも医療的には大きなメリットではありますが、やはり報酬という視点で見ると薬局で行われていた業務が大きく前方にシフトし医療機関側に移ります。

日本薬剤師会が資料として発表している全体処方箋に対する2.6%疑義照会の実施という医薬分業のメリットもシステム運用をすることで大きく変わるのではないでしょうか。

アナログからデジタルへの転換

医療におけるICT化が遅れていることは言うまでもありません。オンライン資格確認によってPHRが確立されるとこれまで、アナログだからこそ求められていた服薬情報の一元的な管理がデジタルに移行します。スタート時はレセプトベースでの薬剤情報の共有ではありますが、2022年夏を目途に電子処方箋が始まります。処方箋の電子化が始まると、薬剤情報もリアルタイムで更新されるようになります。紙ベースが0と1のデジタルベースに代わり膨大な量を一瞬で作業をする時代の始まりです。これは想像の範疇でありますが、処方の時点で併用禁忌の処方に対するアラート、突合点検のようなシステムが働き、無駄な投薬の防止も可能になるのではないでしょうか。

世界的にはPHRの統合によるEHR(電子健康記録:Electronic Health Record)が普及している国もあり、医療従事者であれば閲覧の制限はありますが、すべての国民の医療データ(過去の病歴やかかりつけ医など)を閲覧できるようになります。色々な障害や弊害はありますが、いまのICTの技術をもってすれば現時点でも実現可能なほど、ICTは進化しています。あとは「どうやって」、「いつ」運用されるのかではないでしょうか。

デジタルな時代の医療を考える

ものすごいスピードで進むハイテク化に医療はどのように対応すべきなのでしょうか。医療情報の共有化に対して賛否はありますが、より質を担保する上でデジタル化は否定できません。超高齢社会を迎える中、人口は減少して行きます。大きな課題として労働者不足という問題があります。機械で出来ることは機械がする時代がきます。では、ヒトでなければいけない仕事は何なのかを考えていく必要があります。

あと数年で引退を迎える人、10年後の人、20年後の人、そして30年以上の人もいます。私たちの薬局という業界においては対物から対人業務と言われていますが、かかりつけ薬剤師業務、服薬フォロー、○○支援料と呼ばれる加算関係はヒト、そして薬剤師にしかできない変えられない業務など思っています。そう考えると時代は大きな転換期を迎えているのではないでしょうか。薬の取り揃えなどの調剤業務がタスクシフティングされ、一元的な管理業務がICTに置き換わります。未来に続く薬局とはどういう薬局なのか、そしてその中で働く薬剤師はどういう仕事をしているのか。そんな壮大な未来をこのオンライン資格確認から想像をしてみました。

今回のまとめ

これ以上書くとさらに壮大な話になってしまいますので、ここいらで終了をしますが、オンライン資格確認はただの「資格確認」ではありません。この仕組みが今後の医療の大きなハブとなり変わっていきます。医療業界のアナログがデジタルに変わることで、多くの非効率が効率化されます。薬剤情報の管理と共有化によって、薬剤師の仕事も大きく変わるのではないでしょうか。世界的に見ると日本の医療は非常に非効率的だと言います。現状の報酬制度や薬局6万軒という環境下では「やらなくても大丈夫」という状況がまだあると感じています。

近い将来、「何ができるのか」が問われる時代に入るような予感がしています。

実際の運用に関しても課題は多くありますが、それはまたどこかで・・・


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