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2022年度調剤報酬改定議論をまとめてみた

2022年度診療報酬改定に向けた年内の議論が概ね終了しました。調剤は「その3」まで行われ、その他「在宅医療」「後発医薬品」等について議題に上がりました。最終的な項目については、大臣折衝による改定率決定によって具体的になってきますが、現時点でわかる状況をまとめてみます。

「プラス」or「マイナス」改定率の行方

12月22日に大臣折衝が予定されているということですが、診療側は「プラス以外ありえない」と要求し、支払側は「マイナスを強く要求する」と間反対な要望となっています。しかしながら、すでに国策マターとして「不妊治療の保険適用」「看護師の処遇改善」がプラス分に入っています。これが予算として「プラス0.5%」相当とすでに言われています。
前回の本体技術料が「プラス0.55%」ということを考えるとすでにプラス枠が埋まってしまっているということが考えられます。

併せて医科・歯科・調剤の財源の振り分けが「1:1.1:0.3」と暗黙知で振り分けられています。先にあげた2つの項目は診療報酬該当分であり、全体の8~9割を占めるであろうプラスなので、この通りに行くと調剤に割り振る分がなくなる構図が見えています。

それを回避するために上がったのが「外枠」改定です。「敷地内薬局」「調剤基本料3(大手チェーン対応)」を改定率の枠から外すことで、マイナス分を少なく見せ、プラス改定に見せる手法が2018年度改定ぶりに用いられようとしています。

日本薬剤師会としては、「外枠なしの改定」と発言をしていますが、外枠部分の主は大手企業なので、実際の思惑はわかりません。

※以下、研修用資料から抜粋のため表現等が異なります。

調剤基本料

ターゲットは「敷地内薬局」
全ての委員が問題視、12月10日 診療報酬改定の基本方針にも記載。

日本薬剤師会:敷地内薬局を持つ同一グループに対しても何らかの評価の引き下げ、見直しの検討
※現実的には難しく、基本方針策定の「各種意見」には掲載なし

敷地内薬局の判断が難しい⇒「同一敷地内と見れる薬局は全て敷地内と判断してもいいのでは」
このような意見も出ている。

【課題】
日本薬剤師会として敷地内薬局の広がりに楔を打ちたいところだが、敷地内薬局は「病院」「診療所」と2つの形態に分かれる。また現在は除外規定「平成30年度以前に開局」があるものをどうするのかの課題が残る。全敷地内薬局を対象とすると、中小・個店を巻き込んだ大きな影響となる。

調剤料

調剤作業料・調剤設計料の2分化か? 一包化加算の見直しへ
対物から対人への業務転換が進められる中、既存の調剤技術料の比率をより薬学管理に移行しなければいけない。

日本薬剤師会:調剤料の中には、作業的業務と処方確定をするための薬学的判断が含まれている。調剤料を「作業分」と「薬学管理分」に整理し評価をしていくことが必要。調剤料を見直していくことは、現場への負担も大きく慎重に行う必要がある。

その他の意見
・調剤料の点数設定については、日数によって変更するのは医療提供施設の点数設定になじまない。
・(日本医師会として)これまでも調剤料が日数によって増える仕組みはおかしいと指摘してきている。
・病院では一包化、粉砕などの同じ業務には報酬がつかない。

一包化加算・・・機械化が進んでいる中、日数が増えるごとに点数も増える仕組みでいいのか。

日本薬剤師会:機械化が進んでいるところもあるが、まだ機械化できていない薬局もある。作業料ではなく、患者に適切に飲んでもらうという薬学的管理が一包化である。

地域支援体制加算 

地域連携薬局との整合性が問われる
認定薬局制度が始まり、国の目指すビジョンが明確になった。今後地域支援体制加算と、地域連携薬局の整合性を問う必要がある。

日本薬剤師会:整合性について類似する点も多いが地域連携薬局は始まったばかりの制度であり、まだ1度も更新がされていない。地域の貢献度などを観察しつつ、状況が見えてきたら改めて考えるべき。

その他の意見
地域連携薬局が地域において必要とされる要件であれば報酬上の評価が必要
一人薬剤師では必要な研修、他職種会議への参加などは困難。
・地域連携薬局が進むように、実績要件を緩和し「連携加算1・2」とする推進策の検討も必要
・連動させるのが一番現実的である

後発医薬品調剤体制加算

新政府目標として2023年度末「全都道府県で80%以上」

保連データでは全体の使用率は80%を超えているが、都道府県別では20支部前後が未達成。これらが目標達成したときに得られる効果は約60億円、一方現在の加算は令和2年度で325億円

費用対効果の問題 (同様の指摘を財務省も提示)

現在の後発品推進策は、まだ後発品が普及していない状況では『有益』であったが、現在ではその役目を終えようとしている。段階的に廃止をしていくステージに来ている。

■支払側からの提案

① 加算対象の更なる厳格化 (調剤における80%未満の加算の廃止)
② 減算対象の拡大 (調剤においては下限40%の引き上げ、医療機関の減算規定の創設)
③ それらの上で、後発医薬品に対する体制加算を段階的に廃止していくこと

後発品に置き換えるだけではなく、同等の効果が得られるのであれば新薬よりも類似の後発品を使用する合理性はあり、カットオフ値の引き上げも検討していいのでは。

薬剤服用歴管理指導料

6種類以上の指導に対する評価の検討
薬学管理料における種類数ありきではないが、種類数が多くなると確認項目、指導・薬歴時間が長くなる。6種類以上の投薬に対して、薬剤服用歴管理指導料の増額を検討してはどうか。

意見
・全てが初回投薬という訳ではなくDO処方もある。一律的な評価はディスインセンティブになる
・対物から対人への業務転換が進む中、ほぼ95%算定されている報酬であり議論と逆行する。

かかりつけ薬剤師指導料 

かかりつけ算定患者における非かかりつけ薬剤師対応時の評価
かかりつけ薬剤師が一時的に不在時、薬局内での連携において対応している。かかりつけ薬剤師が不在時の対応について評価をしてはどうか。

日本薬剤師会:かかりつけは引き続き推進する必要があるが、これを評価すると制度の形骸化につながることを懸念する。

その他の意見
・評価を拡充しても算定件数は横ばいであり、地域で求められている役割が認識されていない。
・現実的に一人で見るのは不可能。「かかりつけ薬局」として見るのが現実的だと思う。

服用薬剤調整支援料

支援料2における「減薬」評価の検討
服用薬剤調整支援料1の算定実績が少なく、要件が困難と考えられる。支援料2は算定実績があるが提案時に算定可能とするため、「減薬達成」に関する評価もない。

・オンライン資格確認により薬剤データの共有が始まる。慎重に議論を。
・オンライン資格確認によりリアルタイムデータの確認ができると、当然の責務に代わる。
・オンライン資格確認はすぐに普及する者ではない。当面の評価として検討をしてはどうか。

入退院時の連携

退院時共同指導のオンライン化、入院時における薬薬連携の評価
退院時共同指導については現在、医療資源の乏しい地域でオンラインによる実施が認められているが、現在の状況も踏まえ、オンライン実施を可能としてはどうか。

・参加する薬局が少なくオンライン参加の方向性は理解できるが、慣れや気持ちの問題ではないか。対人の良さ、重要さもあるので全てを可能とするのはどうか。

入院時における服用薬の把握、整理の重要性が求められている。入院時における薬薬連携について評価をしてはどうか。

日本薬剤師会:入院時の一層の連携が必要。薬局としても入院前に薬局に来てもらうこと、薬局にも入院するという情報提供をしてもらうことを進めていく。手帳の共有なども必要。

その他の意見
・オンライン資格確認で入院時の服用データは確認できるようになる。
・情報提供をするのは薬局の務めであり、薬を整理する医療機関にこそ評価をつけるべきでは。

まとめ

今回の記事は中医協の議論をまとめたものであり、すべては中医協での発言に基づき作成をしたものです。薬局業界に対する厳しい意見がある中、プラス改定が続いてきましたが、プラスにする要素が見受けられないのが、2022年度改定における議論の印象です。

対物から対人への業務の転換が求められる中、「調剤料」に含まれる薬学管理業務を「対人業務」として、実際に対人業務はこんなにもある!っという主張が果たして求められていることなのか疑問に思います。

また、地域連携薬局と地域支援体制加算の整合性が問われていますが、「地域支援体制加算」は何を評価する加算なのかを改めて考える必要があります。

これらの資料をどのように、かつ他の会議とリンクさせて来年4月に向けた戦略を作っていくのか。もうすでに準備は始まっています。

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