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Theme 6: 検査(全3話 その2)

examination

医師/精神分析家(慶應義塾大学環境情報学部)
岡田暁宜(おかだ・あきよし)さんが綴るワンテーマ・エッセイ
《ぼくたちコロナ世代》避密ライフのこころの秘密

1: マスク~2: 検温~3: 消毒~4: 自粛~5: リモート と進んできた“ぼくコロ” 6: 検査で山場をむかえます


2/3 コロナの検査をめぐって


 現在のコロナライフにおいてPCRという言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、私は、2000年代の結核診断におけるPCRの経験から、「PCRなら間違いない」というPCRに対する若干の理想化があったように思います。
 国際的にコロナに対するPCR検査が推奨されているにもかかわらず、日本では検査の実施数が増えないという報道がされていました。その理由として、① PCR検査が可能な機関・機器・人材が不足しているという物理的な理由、② 医療崩壊を防ぐためにPCR検査の対象者を絞っているという戦略的な理由、③ 検査で陽性になった場合の隔離や偏見に対する不安のために検査を避ける傾向にあるという心理的な理由、などが指摘されていました。その他に、「PCR検査で陽性になっても有効な治療法がないので、個人のレベルで検査を受ける意味がない」という意見や「PCR検査の感度があまり高くない」という意見もありました。


 コロナのPCR検査の“特異度”は99%といわれているようですので、PCRで陽性であれば、コロナに感染していると考えてよいと思いますが、“感度”は50~70%といわれているようですので、PCRで陰性であってもコロナに感染している可能性は否定できない(つまり偽陰性の可能性がある)と考えられています。検査を受ける立場になって考えれば、検査を受けて陰性でも安心できず、陽性なら隔離になるような検査なら、顕著な症状がなければ、検査を受ける意味を感じられないのかもしれません。
 実際には、PCR検査をする前に「その人がコロナに感染している可能性がどれくらいあるか」という「検査前確率」を十分に考慮することで、PCR検査の結果における“的中率”を高めることが可能になるとされています。コロナにおける「検査前確率」は、その人の生活や環境について十分に理解することであると思います。

(Theme 6:検査 次回につづく)


「偽陰性」「偽陽性」との言葉を昨年はじめて知りました。
検査をするか、しないか、必要なのか、必要ないのかは
個々に意見がわかれるところですね。
そして、ワクチン接種をするか否かも、個人の意思に委ねられています。
PCR検査に限らずこれまで長年なされている様々な検査も100パーセントとはいかないのでしょう。
「絶対(=安心)」という言葉が欲しくて、可能性がどのくらいなのかを
どうしても知りたくなりますが、それには「検査前確率」で的中率を高めるために、受ける側もしっかりと情報提供していくことが望まれるのですね。

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