ラジオドラマ原稿『憧れの先輩』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2023年4月18日オンエア分)

男M 「僕はライブハウスでバイトをしている。
明日は鍵当番なので他のスタッフが帰った後、戸締りの確認や照明をけしてから帰らないといけない。
全部の確認をし終えて外に出ると先輩がタバコを吸っていた」
女 「あ、お疲れ」
男 「お疲れ様です」
女 「明日鍵当番?」
男 「はい」
女 「そうなんだ」
男 「じゃあ、お疲れ様でした」
女 「ねえ」
男 「はい?」
女 「ちょっと話してこうよ、タバコ吸い終わるまで」
男 「え!? あ、はい」
男M 「先輩とはあまり話したことがない。
というかあまり人とお喋りをしない無口な人だ。
仕事が空いている時間も1人でタバコを吸いに行ってるし、バイト仲間の飲み会も来たことがない。
だからパパ活をしてるんじゃないかとかヤバい男と付き合ってるんじゃないかとか色々噂をされて、皆からは少し敬遠されている。
でも、僕は先輩のそのミステリアスな影のある感じに正直惹かれている。
そんな先輩に話そうと急に言われて期待感と何か緊張めいた感情でドキドキする」
女 「君もあたしのこと怪しいやつだと思ってる?」
男 「いや、そんなことないですよ」
女 「ふーん」
男M 「先輩は相槌をうちながら煙を吐く。
その姿は僕の否定を受け取っていないようだった」
男 「いや、本当ですよ。
先輩、あんまり人と話さないから不思議な人だなとは思いますけど、皆が噂しているような人だとは思ってないです!」
女 「あたしさあ、タバコを吸わないやつのこと信用してないんだ。」
男 「え?」
女 「君タバコ吸わないよね?」
男 「…はい」
女 「今言ったことが本当だったら、これ吸ってみてよ」
男M 「そう言って先輩は吸っているタバコを僕に差しだした。
僕はそれを受け取り、吸ってみる。
少しハッカのような味がする、と同時に肺が曇っていく感覚になり、思わずむせてしまった」
男 「こほっ、こほっ」
女 「ありがとう、君の言葉信じることにするよ」
男M 「先輩はそう言うと、僕の手からタバコを取りまた吸い始めた」
女 「人の噂話する奴らってさ、結局自分に自信がないんだよね。
だから誰かを落として自分を上げたがる。
それであることないこと言ってくるわけ」
男 「なるほど」
女 「そういうこと言ってくるのは、大体モテてこなかった男。
自分の青春がうまくいかなかったからって私に当てつけてるだけ」
男 「そうかもですね」
女 「って言ってるあたしも男運ないんだよね」
男 「はあ」
女 「今まで付き合ってきた男、みんなヒモ。
だから周りからヒモを引き寄せる才能があるとか言われたり」
男 「なるほど」
女 「あと、私がここであんまり人と話さないのはね、他人に興味がないから。
なんで皆他人に興味があるんだろうね」
男 「なんでですかね」
女 「他人に興味なくてもさ、私は私らしく一生懸命生きてるし、それだけで偉いと思わない?」
男 「はあ」
女 「そう、私は偉いし、あたしは学生時代もそこそこモテてきた。
誰になにか言われてもそれってビジュが良いあたしへの嫉妬だと思うことにしてる」
男 「はあ」
女 「あとね、やっぱり普段はメンタルつよつよでいきたいんだ」
男 「つよつよ?」
女 「あたしが好きって思えるものだけ目に入れるようにしてる。
それでもダメなときはお酒いれて寝ちゃうけどね」
男 「そうなんですね」
女 「ごめん話しすぎちゃったね。
じゃあ、また明日ね」
男M 「先輩はひとしきり話すと帰っていった」
男 「なんかあれだなあ。
…なんか、Twitterみたいな人だなあ」

おしまい

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