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【先輩インタビューvol.3】木都・能代発。木製建具の若きスペシャリスト集団|「株式会社大榮木工」インタビュー

こんにちは!「KocchAke!(こっちゃけ)」編集部です。

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URL:https://note.com/kocchake_akita/m/m927f7c4e5dc7

秋田県内で活躍する「先輩」について第3回目をお届けします!

今回インタビューに伺ったのは、天然秋田杉材の製材、輸送港として栄えた、木都・能代市にある「株式会社大榮木工(だいえいもっこう)」。創業76年を迎えた木製建具・防火戸の専門メーカーです。施工実績は一流どころばかりで、国立競技場や伊勢神宮、外資系ホテル等々、手掛けた製品は多くの人の目に触れています!

今回ご紹介する「先輩」は、2022年より新しく立ち上げた組子細工ブランド「shinboku(しんぼく)」を担当する、入社5年目の小山美和(おやま みわ)さんです!また、代表の能登一志さんにもお話を伺ってきました!

▼インタビューに答えてくれた方
・能登 一志さん|代表取締役社長
・小山 美和さん|経営企画 (2019年度入社)


「木材加工のスペシャリスト集団」

──はじめに御社の事業内容について教えてください。

能登一志代表

株式会社大榮木工、代表取締役の能登一志と申します。
弊社は木製建具の専門メーカーとして、私の祖父が昭和22年に創業しまして、2023年で創業から76年目になります。主な取引先は国内大手ゼネコンや建装業者様で、高級ホテルや旅館、官庁向けの高級な木製建具を専門に製造、販売、取付工事まで一貫した体制で行っております。

主な施工実績としては、県外例では、東京2020オリンピックのメインスタジアムである国立競技場に、弊社の秋田杉の障子を納品致しました。県内ですと、秋田駅前にあるホテルメトロポリタン秋田・新別館のエントランス、エレベーターホール、各室に組子細工(※)を納品させて頂いております。

(※)「組子細工(くみこざいく)」について
釘やビスなどを使用せずに細かい木材のパーツを手で組み合わせて作る、伝統的な建具技術のこと。主に障子や欄間の一部として和室の装飾用に用いられる。光と非常に相性が良く、ホテルのエントランスなどで照明カバーに使用されるケースも増えている。

能登代表より
組子細工
幾何学的な文様が美しい

──ホームページの施工実績を拝見すると、県内外問わず名だたる建築物への納品実績が伺えます。

誰もが知っているような有名な建築物、歴史的な建築物へ製品を納品させて頂いていることは、やりがいであり魅力であると思います。製造に携わっている従業員の皆さんには誇りに思ってほしいですね。

作業場風景
組子細工のベースとなる地組を製造しているところ。
昇降盤で部材を加工中。危険な機械なので手元に注意し慎重に作業。
組子細工のベースとなる地組を製造しているところ。
組子細工のベースとなる地組を製造しているところ。
100年ほど前に製造され老舗ホテルで使われていた古い障子の修復作業中。


「平均年齢33歳の若き改革者達」

──事務所や作業現場を見渡すと比較的若い方が多いような印象を受けます。

木工という言葉を耳にした時に、どのようなイメージが浮かびますか?恐らく年配の職人が細々と作業をしているようなイメージを持たれるかもしれませんが、弊社従業員の平均年齢は33歳と同業界の中でもかなり若くなっています。
若手を採用できている理由は3つあると思っております。一つ目が、日本を代表する建築物に数多く製品を納め、業界の中で際立った存在であること。二つ目が、組子細工などの、年齢・性別を超えて感性や美意識に訴える製品を製造していること。そして三つ目が、地域の高校や大学からの長年に渡る採用実績、行政からの信頼と期待による後押しがあると思っています。

部材からはみ出ている余分な接着剤を綺麗に取り除いているところ。
障子の修復作業中。折れかかって弱くなっている部材をマスキングテープで一時補強しているところ。

「組子細工」のような伝統的な製品を作る一方で、火事になっても60分間燃えない「木製防火戸」のような先進的な製品を開発したり、若い力でこの業界をリードする製品も作っているのが弊社の最大の強みだと思っております。

木製防火戸

また、ものづくり業界は、”機械設備で大量製造するメーカー”と片や”少人数で昔ながらの物作りを行っている職人たち”とで両極端な状態となっています。弊社は機械設備を使いつつも、職人の手により付加価値の高い製品を作っており、業界における独自の立ち位置を保っていることも強みです。両極化している業界の中でも、その強みを打ち出して独自のポジションをより明確化していくということが大切だと思っています。

作業風景

「新事業の舵取り役」

──自己紹介と業務内容を教えてください。

小山美和さん

株式会社大榮木工 経営企画部の小山美和と申します。
弊社の新事業である「shinboku(しんぼく)」というブランドの業務全般を担当しております。メイン業務は製品デザインですが、ECサイトやSNSの管理、パンフレットや製品を入れるパッケージの監修も行ないます。また、地元高校生や外国人観光客向けに組子を作るワークショップを定期的に開催しており、その講師も担当しております。

──「shinboku」が誕生した背景を教えてください。

2022年に立ち上げた組子の小物製品を製造販売しているブランドです。立ち上げた理由の一つに、今まで弊社は取引先であるゼネコン様や、設計事務所様には“建具を取り扱っている会社”として名前を知って頂いていたのですが、一般のお客様にもブランドを通して「大榮木工」という会社を知ってもらいたいという想いがあります。

組子細工のカードケース「Enishi」
制作途中段階の様子

◎「shinboku」について能登一志代表からもコメントを頂きました!
「shinboku」は建築の垣根を越えて自社のものづくりの可能性、そして新たな出会いを広げていくために行なっている取り組みです。建具屋としては創業から76年間、とにかく自分たちの技術を磨いて、深く深く掘っていくようなイメージで会社を続けてきましたが、それに対して「shinboku」は横の繋がりを広げていくイメージです。
広がりを見せた一例として、2023年4月に大手セレクトショップのBEAMSさんとコラボレーションして組子細工入りの名刺ケースを販売致しましたが、大変好評の売れ行きです。
建築の世界ではお陰様で会社がある程度認知されましたが、建築に限らず、それ以外のさまざまなフィールドで大栄木工を知って頂きたいと思っております。「shinboku」のブランドを新たに掲げ、建具に限定されないものづくりを通して、自分たちの可能性や出会いの幅を広げていきたいです。

──「大榮木工」に就職を決めた理由を教えてください。

学生時に参加した会社説明会で弊社の能登代表と出会い、「新しいものづくりを一緒にやる人を募集する」というお話を聞きました。私は大学で彫金を勉強しておりましたが、彫金と木工、組子細工を並べた時に、一見全く別々の物のように見えますが、実は、繊細なものづくりという点では共通点があるのではないかと考え始め、木工という素材だとか、組子という技法の新しい分野にも挑戦してみたいとの想いから入社を決めました。

──入社5年目ですが、これまで苦労した点や成果を感じたエピソードはありますか?

1年目の頃は製品の試作を繰り返したり、慣れないプロダクトデザインに苦労しました。ですが、「shinboku」が満を辞してデビューしてからは、東京にある百貨店・大丸さんで展示販売をしたり、大手セレクトショップのBEAMSさんと名刺入れでのコラボレーションしたりと、少しずつ成果が出てきているのを実感しております。また、商品を購入頂いたお客様に喜んで頂くことが一番嬉しくやりがいを感じますね。

製品企画中の様子

「好奇心が視野を広げる」

──プライベートはどのように過ごされていますか?

私は秋田公立美術大学の学部を卒業後に「研究生」枠で同校に進学し、一年間通いました。研究生の時から毎年一回の頻度で同級生と展覧会を開催しておりまして、休日には自宅で展示作品の制作活動をしています。最近はもっと新しいことに挑戦したいと思い、刺繍や編み物を始めてみました。手を動かすのが疲れたら、自宅近くのカフェでコーヒーを飲みながら本を読む、といった時間を過ごしています。

休日の小山さん

──最後に就活生の皆さんへメッセージをお願いします。

美術大学を卒業すると作家になる道が一つの選択肢になると思いますが、企業に属して働くメリットもたくさんあります。例えば、自分が考えたデザインを図面に起こすまではできても、それを実際に形にするとなると難しい部分もあります。会社は隣に職人さんがいて、自分が考えたものを形にしてくれるんですよね。役割が仕組み化されている点が会社で働く面白さであって、組織の強みであると思っています。
“ものづくり”と一口に言っても、作家や職人になる道だけではなく、私のようにデザインをしたり、図面を描いたり、会社の広報を担当している者もいます。手先が器用じゃないからこの業界は難しいな、と思う前にちょっとだけ視野を広げて、ものづくりの業界に興味を持って頂けたら嬉しいです。

仕事中の小山さん

──二人のお話から共通して見えたのは「チャレンジャー」の姿勢。会社のバックグラウンドにある伝統技術を次代に受け継ぎつつ、先進的な製品を生み出す。全国各地の一流どころから声がかかる所以は、その果敢な姿勢と技術力が一流だからこそ。大榮木工が在る限り、木都・能代の木材産業の火が絶える事はないでしょう。

◯取材・文・写真/KocchAke!(こっちゃけ)」編集部


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