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車椅子のおもちゃから考える障害理解と多様性をモチーフにしたおもちゃの必要性

こんにちは。車椅子の夫、6歳の息子と暮らす主婦こぶたです。どーも。

はじめに

車椅子のおもちゃなんてあるの?とお思いかもしれませんが実は海外にはたくさん多様性を持つおもちゃが発売されています。有名なところで言えば、2019年に発売されたマテル社の『バービーファッショニスタ くるまいすつき』通称、車椅子バービーがありますね。

これは日本でも発売され、トイザらス限定販売されています。車椅子のおもちゃが日本でも発売されたことに当事者の間では衝撃が走りました。

子どもをトイザらスに連れて行った際に、母娘連れが「ママ見てー!車椅子っ」「わぁー!こんなのまであるの?!」と驚いているのを何度か目にしました。

数年前までは見られなかった光景です。


車椅子のおもちゃがなんで必要なの?

障害のある子どもたちは、障害のあるおもちゃを愛して可愛がり遊ぶことで、そこに自身を自己投影して自己肯定感を育む助けとなります。障害や見た目の違いがある自分を認めるための手助けになるのです。

これは友人や家族に障害を持つものがいる子どもたちや、身の回りに障害を持つ人がいる子どもたちにとっても同じことです。車椅子や障害のあるおもちゃでごっこ遊びをすることで社会の中での障害者の存在を認め、イメージしやすくなるのではないかと考えます。

これは車椅子に限ったことではありません。

車椅子に実際に触れる経験のない子どもたちにとっては車椅子がどういった構造で、どう押せば動いてどうすればスムーズに動けるか、どうすればこのバービーが一ドールハウスの中で動けるかなどを遊びながら学ぶことができるのです。車椅子がどんなものでどんな動きをするのか、何が難しくてどういう性質をもったものかは、実際に触れなければわからないものなのです。


車椅子のおもちゃにはどんなものがあるの?

先にも述べた通り、2019年にマテル社から車椅子のバービーが発売されました。近年マテル社は肌や髪の色、体系、義足など多様なバックグラウンドを持ったバービーを登場させていますが、実は以前にもマテル社は車椅子のお人形・ベッキーちゃんを登場させていました。ですがベッキーはあまり売れませんでした。

現在でもフリマサイトやインターネットオークションで見かけることのある車椅子のベッキーですが、子どものおもちゃというよりはコレクターズアイテムと化し、高値で未開封のまま取引されています。

他にも海外ではレゴやプレイモービル、シルバニアファミリー(あこがれナースセットとして日本でも発売)、ホットウィールなどから車椅子のおもちゃが発売されています。

近年では日本でも販売されるようになってきた車椅子のおもちゃですが、どれも海外発で日本の大手玩具会社からは私が知る限りでは車椅子のおもちゃは販売されていません。

日本の子どもたちが長く親しんできた、ト〇カやリ〇ちゃんにはそれらがありません。


なんでこれまでなかったの?

ではなぜ、必要であるにも関わらず日本では販売されないのでしょう?それは『売れないから』ではないでしょうか?多くの子どもが車椅子のおもちゃで遊ばないからです。

ではなぜ子どもたちは車椅子のおもちゃでは遊ばないのでしょう??


ある日本の幼稚園でこんな実験が行われました。

女の子たちをいくつかのグループに分け1人1つずつバービー人形が行きわたるようにします。どのグループのものも、1体は車椅子のベッキー人形です。

「さぁ選んで!」子どもたちに声をかけ人形を選ばせますが、真っ先に女の子たちはバービーを手に取りグループに戻っていきます。

どのグループでも、最後に残るのはベッキー。ベッキーを手にした女の子は残念そうな顔をし、しばらくは髪をとかしたり車椅子を押してみたりして遊ぶのですがそのうち飽きてベッキーを投げ捨て、グループから外れどこかに遊びに行ってしまうか、ベッキーではないのバービー人形を取り合うようになるというのです。


なぜでしょう?

それは、子どもたちが車椅子ユーザーの生活を知らないからだそうです。車椅子に乗ったお人形をどう遊ばせればいいのか、何ができるのかがわからないのです。そこで大人が、車椅子でできることや遊び方を教えることで、車椅子のお人形で遊べるようになるというのです。

車椅子ユーザーの生活が想像できない。何ができるかわからない。

それは大人も同じことですね。


日本にはまだ車椅子をよく知らない子どもや大人がたくさんいます。その社会に対し車椅子のおもちゃを発売しても、今はまだ売れないのです。

一昔前は障害のある人がTVやCMに出ることはありませんでした。それは一種のタブーでした。パラリンピックでさえほんの数年前まではTV放送はなく、あってもダイジェストのみでした。

2008年の北京パラリンピックの際、夜に放送されるダイジェストが待ち切れず、現地に飛んだ友人知人からの速報のメールに一喜一憂したのは今となっては懐かしい思い出です。ですが東京オリパラに向け、日本社会も随分と変わり始めているのを肌で感じています。

共生社会に向け、今後もっとインクルーシブ教育が行われるようになり、障害のある人が当たり前に日常の風景に溶け込む日がいつか来るのかもしれません。その頃にはきっと、日本でも多様性のあるおもちゃ・車椅子のおもちゃの必要性が今より強く求められるようになるのかもしれませんね。


車椅子のバービーちゃん

2019年に発売された車椅子バービーの驚いた点は、バービーが車椅子に乗っていながらも自立していることが見てとれるというところです。

どのようなことからそう思うかですが、車椅子が固定車(折りたためないもの)で仕様がアクティブだからです。車椅子には色んな分類方法がありますが、大きく分けて介助が必要な人が乗るタイプと、車椅子である程度自立して動ける人が乗るタイプがあります。

後者をアクティブ車などと呼ぶことがありますが、バービーちゃんの乗る車椅子はこのアクティブの作りになっていたのです。

低い背もたれ(バックレスト)、肘置き(アームレスト)もグリップ(車椅子を押すときに握るハンドル部分)もありません。固定車と言って、折りたためないタイプで足を置くフットレストも跳ね上げではなく、自分で操作しやすい作りになっています。車椅子を見ればある程度、どのくらいの障害の程度か、どのくらい動けるのかということが推測できますが、このバービーちゃんはバービーちゃん自身が自分で車椅子を操作する前提で作られていることが車椅子を見ればわかるのです。

つまり、車椅子ユーザーが介助される存在ではなく自立した存在であることをこの人形からは感じ取れるのです。

以前発売された車椅子のベッキーちゃんと比較するとそのことが実によくわかります。(以前比較記事を書きました↓)


「知らないからコワい」を「知っている」から関心へ

時代は確実に変わりつつあります。そこに生きるひとりひとりの意識が変化するにはまだまだ時間がかかります。ですが新しい世代から変えていくことはできます。

これまでは車椅子や障害は知らないから怖いもの、身近にないから受け入れがたいものでした。

多くの子どもは車椅子に興味を持っています。

街でお子さんが車椅子見て「あれなに?なんで乗ってるの?」と指を指し、ヒヤッとした経験のある親は多いと思います。

このnoteを読んでくださる多くの方は「見ちゃダメ」「こら!やめなさい」と子どもの口をふさぎ、怖い顔で手を引いて足早に立ち去るような方はおられないかとは思いますが、きっと子どもにキチンと説明をできる自信がある方は多くはないのではないかと思います。私もその一人です。

前者の親は子どもにどう説明していいかわからないからそういう反応をしてしまったり、または本当に車椅子や障害のある人を忌み嫌っていたりするのかもしれません。障害のある人や車椅子をよく知らないから触れたくないのでしょう。誤解があるのかもしれません。

ですがそうした反応は子どもに対し「障害のある人、車椅子の人に触れてはいけません。見てはいけません」ということを教えているのと同じなのです。

触れなければいいのかもしれませんがそうもいきません。

内閣府によると、国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有しています。医療や科学の発展に伴い近年、障害を持つ人は増えています。また、多くの人は老いていつかは車椅子や人の手が必要になっていきます(身体障害者の72.6%が65歳以上)。

障害の世界・車椅子の世界は他人事ではありません。とても身近なことなのです。

知らない未知の世界は怖く、近寄りがたく、またそこに飛び込むことは先が見えず不安なことかもしれません。


ですがそれが、既にある程度知っている世界なら先の見通しを持つことができるのです。

もしお子さんが車椅子や障害に興味をもったら、否定せず受け止めることが大切だと言われています。それがたとえネガティブな発言であっても、「あなたはコワイと思ったんだね」と認め、その上で「でもそれは良く知らないからだよね。言われたら悲しいと思うよ?お母さん(お父さん)はこう思う。こういう理由でそうなってるんだね」など大人の意見を伝えることができます。

その場ですぐに対応するのが難しければ、「今度一緒に考えようね」でその場をやり過ごし、時間のある時に子どもと一緒に考えてみる、車椅子に乗る人はどんな人かを調べてみるのもいいでしょう。

そうした助けになるように、車椅子ユーザーについてを簡単にまとめた絵本冊子も販売していますので興味のある方は是非、お買い求めください。


話は反れましたが、子どもたちの意識を「知らないからコワイ」ではなく、「知らないから深く知りたい」につなげることで、未来は少しづつ共生へと続いていくのかもしれませんね。車椅子のおもちゃもまた、そうした理解への手助けにもなるのではないでしょうか。


まとめ

障害を理解すること、知ることは人間の本能に組み込まれたものではなく、学習し意識していかなければ身につかない感覚です。

障害や多様性を理解するというのは、『他者を理解すること』のように見えて実は、『他者を知ることで自分を知ること』に深くつながっていきます。色んなバックグラウンドをもった人を知り、認めることで、自分も『どんな自分でもいいんだ』と自信を持つことができるのではないでしょうか。

これからの時代を生きていく子ども達にとって車椅子を含めた多様性を持つ人たちを知り、それらのおもちゃで遊ぶ経験は、これからの時代を生きていくための大きな力になるのではないでしょうか?

男の子に人気のある車のおもちゃで車椅子駐車場や車椅子の形のものを発売したり、レゴブロックやL〇Qで車椅子をくみ上げて遊べるようなものがあっても、構造を学んだり、色んな新しい発想が生まれて楽しそうですね。

車椅子がもっと身近なものになり、誰もがその困難さも楽しさもを理解し共有できるようになれば素敵ですね。



障害理解や車椅子ユーザーとその家族のための活動をしています。より良い情報提供のためにサポートしていただけると嬉しいです。



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