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蓄電池設備の用途についての前段  (記事2)

ここからは、私が現在従事している産業用蓄電池についていろいろと書いていきます。
まず、蓄電池がこの社会の中でどんなふうに使用されているのかを書いていきます。

〇地絡及び短絡の対策


私たちの生活の中で電気はとても大切です。
身の回りには電気で動くものが無数にあります。
これらを動かすためには必ず電気を供給するための電源が必要になります。
電気は、発電所で作られます。ですから発電所は電気を使う人達すべてにとっての電源となります。
電気の流れを一般家庭を例にして考えてみましょう。

電気は発電所から変電所、電柱の上の柱上変圧器という流れで電線を伝わって各家庭の分電盤まで流れてきます。
そこからさらに分岐して、最終的に部屋のコンセントまで電気が送られてきます。
ですからこのコンセントに電化製品のケーブルを差し込めば、電気が使えます。

ビルや商用設備も同じような感じです。
電柱までは同様で、そこから商用設備の中の受電盤というところまで電気が流れてきます。
そしてそこからどんどんと分岐していくのですが、ビルになると分岐する箇所が無数にあります。

この電気設備を運用するためには、次のような安全装置が必要になります。

・短絡事故が起きたときに電気を遮断できる機能
・地絡事故が起きたときに電気を遮断できる機能


蓄電池は、これらの機能を持つ機器を動作させるための制御電源として使用されることが多いです。

もし短絡、地絡と言われてもピンとこない方のために、そこから書いていきます。
電気設備を理解するためには、まず家庭用の分電盤を理解するのが近道です。ですからそこから見ていくことにしましょう。
短絡や地絡は分かる方は、これ以降は読まなくていいと思います。

家庭用の分電盤は、写真のようになっています。

家庭用分電盤

カバーを外すと、こんな感じです。

家庭用分電盤

図解では下のようになります。

家庭用分電盤内部の図解

電柱上の変圧器から伸びてきた電線3本が、家の中の壁を通ってアンペアブレーカーの1次側に接続されています。(電気を受け取る箇所を1次側、電気を送り出す箇所を2次側と呼びます。)
※写真では白色の電線は、図解では青色にしてます。見難かったので。

そしてアンペアブレーカーの2次側から出た3本の電線は、漏電ブレーカーの1次側へと接続されます。
漏電ブレーカーの2次側から出た3本の電線は、銅バーと呼ばれるむき出しの銅製の細長い板へと接続されます。
銅バーに接続すると、下流側の電路を分岐させるための電線の接続が楽なので、よく使われます。
銅バーには電線とともに安全ブレーカーと呼ばれる小さいブレーカーが取り付けられます。
安全ブレーカーの2次側には2本の細い電線が接続されます。
この電線は家の天井裏や壁の中を通り、最終的には各部屋のコンセント裏へと接続されます。

このように接続されることで、変電所から各家庭のコンセントまでの電気の路ができています。

〇過電流遮断機能について


家庭内の電路を保護するための機能その1です。
一般家庭で使用される電化製品を動かすために必要な電流は、せいぜい数 A程度です。
電圧は100 V~200 V必要ですが。
ですが電化製品内や家庭内の壁の中の電線などに事故が起きることがあります。
具体的には、プラス線とマイナス線が予期しない箇所で接触してしまう事故です。
原因はさまざまですが、電線の経年劣化による絶縁被膜の破れがあります。
また電化製品内部の電線の経年劣化等があります。
本来は電気的に接触することがないように対策された状態を、絶縁されていると言います。
トラブルによりこの状態が破られると、短絡電流という通常よりもかなり大きな電流が流れます。


電化製品など電気エネルギーを消費するものを抵抗もしくは負荷と呼んでいます。
負荷に到達する前の電気回路で電線2本が接触すると、大きな電流が流れます。
通常であれば負荷という抵抗があるために、流れる電流量は制限されます。
オームの法則から、電圧 / 抵抗=電流となるため流れる電流値は数アンペアです。
ですが短絡事故が起きると、負荷という抵抗が無くなります。
すると電線内の電気抵抗だけが電流の流れを阻害するものとなります。
家庭用の電気では電圧は100 Vとしましょう。
仮に電線の電気抵抗を1オームとすると、流れる電流値は100 V/1 オーム=100 アンペアになります。
通常2 Aしか流れないはずですが、短絡したために100 A流れるわけです。
このような電流を、過電流と呼んでいます。
電気が流れると、電線は必ず熱を発します。
電線の中を電子が移動する際に電子から電線内の金属イオンにエネルギーが渡されて発熱してしまうからです。
家庭内の壁などの中の電線は、通常流れるであろう電流が流れても耐えられるだけの太さのものを選んで配線されています。
つまりは、細いわけです。
電線を太くすると扱いにくいし、何よりもコストがかかるため、許容ギリギリの細さがいいわけです。
この細い電線に、短絡電流の100 Aやそれ以上の電流が数秒間流れた場合、電線が熱で燃えます。
後述のブレーカーが遮断してくれるまでの0.01 秒間~2 秒などわずかな時間なら、短絡電流が流れても燃えない電線を選定しています。
きちんと選定されていれば、ですが・・・・・

ですから、この短絡が発生した時には瞬時に電路を遮断する必要があります。
それをしているのが、アンペアブレーカー及び安全ブレーカーです。

ブレーカーの中にはバイメタルというものが入っています。
これはある温度になると形状を変える性質があります。
つまり、短絡電流が流れて電路の温度が上がるとそれを感知してバイメタルが形状を変えて、ブレーカーを自動的に落として電路を遮断する、というわけです。
この自動的に遮断されることを、ブレーカーがトリップする、と言います。

下の図は、簡易的なイメージ図です。
まず、通常時の動作です。

通常時の動作

続いて、過電流が流れてブレーカーがトリップした状態です。

ブレーカートリップ時

下の図は、Panasonic様のホームページより引用させて頂いたブレーカーの動作原理の図です。

Panasonic様より引用

ブレーカーは流れすぎた電流をバイメタルが感知して、電路を遮断します。
当然ですが、流れる電流が多ければ、バイメタルの温度上昇は早くなるため、ブレーカーが落ちるまでの時間は早くなります。
ここで1つポイントです。
ブレーカーには定格容量と遮断容量というものが個々に決まっています。

・定格容量
ブレーカーを投入したり遮断したりする操作部分をよくみると、数字が書いてあると思います。
下の写真の安全ブレーカーには、20と記載されています。20 Aということです。

20ATの安全ブレーカー

これは、このブレーカーは最大20 Aまで電流を流せる運用ですよ、ということです。電流を100 %流した(定格)状態は20Aです、という意味です。これが定格容量です。AT(アンペアトリップ)などと呼んでいます。

ではブレーカーにこれ以上の電流が流れた場合、どうなるのでしょうか。
定格が30A以下のブレーカーの場合は、以下のような動作をします。

・定格の1.25 倍の電流が流れる・・60 分以内にブレーカーがトリップする
・定格の2 倍の電流が流れる・・・・2 分以内にブレーカーがトリップする
・定格の10 倍の電流が流れる・・・瞬時にブレーカーがトリップする

電流値が10倍より小さくても瞬時にトリップするかもしれませんが、それはブレーカーによります。
瞬時遮断か時限遮断(瞬時でなく時間がかかる)かは、ブレーカー製造メーカーのカタログを確認する必要があります。

定格電流を超えても、ブレーカーがすぐにトリップするわけではありません。またブレーカーが瞬時にトリップする電流値は、ブレーカーによって異なります。

・遮断容量
そして短絡電流があまりに大きい場合、ブレーカーの中の電路が瞬間的にかなり高温になります。そしてブレーカー内部の接点が熱で溶接してしまい、電路が遮断できなくなる可能性があります。
予想される短絡電流よりも大きい遮断容量を持つブレーカーなら、溶接されずに確実に遮断できます。
下の写真のアンペアブレーカーは、定格容量60 Aで遮断容量は2500 Aです。
2500 Aまでなら溶着せず確実に遮断できる、ということです。
ブレーカーの遮断時間は、瞬時動作の場合は0.01秒~0.2秒の間でトリップして電路を遮断します。

定格遮断電流2500 Aのアンペアブレーカー

ブレーカーを選定する際には、短絡電流がどの程度流れるかを計算し、それよりも大きな遮断容量を持つブレーカーを使用します。

・電線の太さ(許容電流)
ブレーカーはこのような機能があります。
そしてこのブレーカーの下流に接続する電線の太さにも注意する必要があります。
電線は、その太さによって流せる電流量が違うからです。
細ければ少ない電流しか流せません。
許容電流以上を流し続ければ、電線の被膜が熱で溶けだしますし、最悪燃えます。
太さと許容電流値は、製造メーカーのカタログに記載があります。
また短絡した際には、この太さに電線ならどの程度の電流値に何秒間耐えられるかを計算で出すことも可能です。
ブレーカーと電線の組み合わせを正しくすることが重要になります。


VVFケーブル(一般家庭でよく使われる電線)で、1年中電流をずっと流し続けても問題ない許容電流(定格許容)は、以下の通りです。
2芯 直径2.0 mm 許容電流 23A
2芯 直径2.6 mm 許容電流 32A

また、短絡事故がおきた場合に0.2秒間電線に流せる電流値は、以下になります。
2芯 直径2.0 mm  許容電流 692A(目安)
2芯 直径2.6 mm  許容電流 1169 A(目安)
※1秒流したら燃えるかもしれません。

もし家庭内の電線で完全短絡が起きた場合、どの程度の短絡電流が流れるでしょうか。
家庭内の電圧なので、100 Vと仮定しましょう。そして電線の長さは30 m程度だったとします。
電線は細ければ細いほど抵抗値が上がり、太ければ抵抗値は下がります。
2芯 直径2.0 mm 抵抗値 0.55Ω 短絡電流 181 A
2芯 直径2.6 mm 抵抗値 0.097Ω 短絡電流 1030 A
実際にはもっといろいろな条件が加味するので、ここまでは流れませんが。

20ATの安全ブレーカーであれば、遮断容量は1500 A程度あります。
つまり直径2.6 mmの電線を使用すれば、短絡した場合でも電路を保護することができますね。

さらに、20 Aの2 倍の電流値の40 Aが流れた場合、ブレーカーは2分以内に遮断します。
つまり最大2分間は電路に40Aが流れます。
2分間限定として、電線に流せる許容電流は以下のようになります。
2芯 2.0 mm 許容電流 27 A (2分間限定)(目安)
2芯 2.6 mm 許容電流 46 A (2分間限定)(目安)

※2分間限定なので、定格電流よりも多めに流せます。

つまり、20ATの安全ブレーカーの2次側に接続して使用する電線は、2芯2.0mmではダメとなりますね。
27 Aしか流せない電線に40 A流してしまえば、火災になる可能性がありますので。
2芯2.6 mmなら、大丈夫そうですね。

・保護協調
家庭用であれば、どこかの部屋で短絡事故が起きればまずは安全ブレーカーが電路を遮断します。
そうすれば、他の部屋は電気を使えるからです。
しかし万が一安全ブレーカーが壊れていたり、接点が焼き付いて遮断できない場合は、その上流のアンペアブレーカーで電路を遮断します。
するとこの家の中は全部屋で電気が使えなくなってしまいます。
何が言いたいかというと、安全ブレーカーはアンペアブレーカーよりも先に電路を遮断する必要がある、ということです。
異常時は分岐先が個々に電路を遮断し、それがダメな時は大元のブレーカーで電路を遮断する仕組みを、保護協調と呼んでいます。

このような機能を持つブレーカーで、各家庭の電路は保護されています。

〇接地(アース)について


家庭内の電化製品内の電線の絶縁被膜が劣化等により破れたり、接続箇所のビスが外れたとします。
するとむき出しになった電線が電化製品内部の筐体に接触します。

電化製品内部でこのようなことが起きても、外見上では異常を判断できません。
そしてこのような状態の筐体に人間が触ると、体に電気が流れて感電するおそれがあります。
何気なく電子レンジに触ったらビリビリと感電したのでは、たまったものではありません。
20 mA程度が人体に流れるだけで、死亡する可能性があるため、危険です。
それを防ぐために、特に水回りに置く電気製品の筐体には接地をとることになっています。

と言っても、なぜ人間に電気が流れる事故が起きてしまうのでしょうか。
それについて見ていきましょう。

まずは、そもそも接地線とはどのように接続されているかを、簡単に書いておきます。
一般家庭用で使用されているのは、保安接地と呼ばれるものです。
電化製品の筐体(外箱)を接地線(アース線)という緑色の被膜の電線で接続し、それを地面に接続しています。
電気回路ではなく、それを覆っている外箱に接地線を接続しています。
といっても実際に地面と接続しているわけではなく、分電盤まで接地線を引っ張りそこで接続します。
分電盤からは家の壁の中を伝わって地面まで接地線を延ばせば、結果として家電製品の筐体と地面とを接地線で接続することができます。

このように接地線を接続すれば、分電盤も電化製品の筐体も電気的には0 V電位となります。
地面は0 V電位と決められています。

電化製品は家の中にいくつもあります。
大抵はコンセントに接地線を接続する箇所があるので、そこと電化製品の筐体を接地線で接続します。
(下の写真の接地線の被膜は、黄色と緑となっていますが接地線です。)

そして各コンセントの接地線接続部分からは家の壁の内側を接地線を配線し、分電盤まで引っ張ります。
そして分電盤の中で1まとめにしています。
ここまでが家庭内での接地線の接続です。

次に、家庭の外の接地線の接続を見てみましょう。
家庭用の電気は電柱の上にある変圧器(トランス)を介して送電されてきます。
この変圧器の2次側の中性相には接地線が接続されており、これが地面へと接地されています。
変圧器のケース(外箱)ではなく、電気回路に接地線を接続している点がポイントです。

法令で、そのようにしなさいと定められているためです。
この理由は、いずれ書きます。

ここからは、なぜ人間に電気が流れる事故が起きてしまうのか、を見ていきましょう。

下の図は、電化製品をすごく簡単に書いたものです。

外箱の中は人間がむやみに触れる想定はしていません。
ですから、箱の中は電気配線や基盤などがむき出しで収納されています。
ですが、配線等は電気的に外箱と接触することは基本的にはありません。
人間が触れて感電してしまうような製品では、とても使えませんからね。

仮に今、電化製品の内部で漏電したとしましょう。

内部の配線の一部が外れたり、劣化により配線の被膜が破れたりした状態で外箱に触れてしまうと、漏電する状態になります。
内部には配線が複数ありますので、そのうちの1本が外れても他の配線が繋がっていれば電気回路が形成されて電気が流れ続けます。
本当に主要な部分が外れることで電気回路が形成されなくなる可能性もありますが、それはその時々で変わるので不確実です。

漏電電流は接地線を通って地面へと流れます。そして電柱の上の変圧器へと戻っていきます。
この電流を地絡電流と呼んでいます。

ちなみに、漏電も短絡の一種とみなすことができます。
接地線を取っている地面はある程度の電気抵抗があります。
仮にですが、家庭の接地線と、電柱の上の変圧器から地面へと伸びている接地線を電線で接続した場合には、電気抵抗はかなり小さくなります。
この状態で電化製品内部に漏電が起きた場合には、短絡電流のような大きな電流が流れます。
実際には地面の抵抗がある程度の大きさになっているため、結果としてあまり大きな電流が流れません。

〇変圧器について


変圧器とは、交流などの変化する電圧を上げたり下げたりできる機器です。
6600 Vを200 Vに下げたり、逆に200 Vを6600 Vに上げたりできます。
電力は電圧×電流で表します。
6600 V×1 A = 200 V×33 A と書くと、イメージできるでしょうか。
変圧器に入る電力量と出ていく電力量は同じですが、電圧と電流の比率が変わります。
下の写真は、柱上変圧器ではありませんが、変圧器の写真です。

下の図は、変圧器を簡単に書いたものです。
分かりやすいように下の図のように書いてますが、実際の構造はちょっと違います。
実際の構造については、下の補足で書いておきます。

変圧器がある場合、変圧器の2次側から電気の流れはa点をスタートして、分電盤に流れてから負荷をめぐり、変圧器の2次側のb点へと戻って1サイクルが終了になります。
変圧器の1次側へは流れません。
2次側だけで完結します。
1次側と2次側は電気的に絶縁されているため、電気が流れることができないためです。

変圧器の1次側も同様です。
その上流の変電所内の変圧器の2次側からスタートし、変圧器の1次側A点まで流れたらそのままB点へと流れます。
その後引き返して上流の変電所の変圧器の2次側へと戻っていきます。
1次側と2次側は、電流と電圧が直接作用しません。
磁界と磁束によって作用し合っています。

※補足です。
変圧器では、鉄心に銅線を巻き付けています。
この銅線に電圧をかけて電流を流すと、磁界が発生します。
磁力線の束が発生するわけです。
鉄心は磁束をよく通します。
変圧器の1次側の銅線に電流を流すと、この磁束が2次側の銅線を通ります。
すると2次側の銅線は、この変化を妨げるような動きをします。
具体的には、自分で電流を流して磁束を発生させて、1次側で発生した磁束を打ち消そうとします。

電流が流れるということは、当然電圧も発生します。
この現象を、電磁誘導と呼んでいます。
電圧の大きさは、鉄心に巻き付けた電線の巻いた回数に比例します。
いっぱい巻けば電圧は大きくなりますが、電流は小さくなります。
巻き数が少なければ電圧は小さくなります。

本来の変圧器の構造は、下の図のようになっています。

鉄心に厚紙(プレスボード)を巻いて、そこに銅線を巻き付けています。
これが2次側になります。
その後その上からさらに厚紙(プレスボード)を巻いて、そこに銅線を巻き付けます。
これが1次側になります。
1次側のほうが高圧になる場合、鉄心からなるべく離して絶縁を取りたいので外側にします。
厚紙だけでは破れやすいので、ワニスという特殊な溶剤を染み込ませています。
下の写真が鉄心部分です。

下の厚紙にワニスが含有されています。

鉄心に厚紙を巻いて、そこへ2次側の銅線を巻いていきます。
平形の銅線になります。

その後さらに厚紙を巻き付けたら、1次側の銅線を巻いていきます。
丸い銅線です。

巻き付ける銅線は、下の量になります。
白色の銅線は2次側、銅色は1次側の銅線になります。

地面って電気を通すの?と思うかもしれません。
接地線は、その先端に銅の棒を接続しそれを地面に埋め込んでいます。
地面の土は水分を含んでいます。
そしてこの水分にはいろいろな物質が溶け込んでいます。
つまりイオンが含まれているわけです。
電圧がかかればイオンが移動します。
つまり電荷が移動するわけです。
電荷の移動が電流なので、電流が流れることになります。

次に、電化製品の筐体に接地がとられておらず、なおかつ家電製品内部で漏電した場合を考えてみましよう。
人間が触れた瞬間に、人間が電気の通り道となって電気回路が形成されてしまいます。つまり感電します。
人体は大部分が水分です。そしてその水分にはさまざまなイオンが含まれているため、電圧がかかれば電気を通してしまいます。

※参考
人体の抵抗値は、およそ5500 Ω と言われています。
身体が濡れていたり、床が濡れていたりすれば、抵抗値はもっと下がります。
また、どの程度の電流が人体に流れると、どんな症状が起きるかは、以下になります。
・1 mA ピリっと感じる
・5 mA あれ?痛いな
・10 mA 我慢できないほどの痛みを感じる
・20 mA 痙攣、呼吸困難が起きる
・50 mA 短時間でも命が危険
・100 mA 死亡

これを見た上で、下の状況を見てください。

・100Vが人体にかかった場合(一般家庭でよく使われる電圧)
流れる電流は、電圧/抵抗=100 V / 5500 Ω =0.018 A およそ18 mA

・200Vが人体にかかった場合(エアコンや電子レンジはこれに該当)
流れる電流は、200 V /5500 Ω =0.036 A およそ36 mA  危険な電流値

・6,600 Vが人体にかかった場合(商用設備などの高圧部分、送電線などの電圧)
流れる電流は、6600 V / 5500 Ω =1.2 A およそ1200 mA 死亡する

〇床下の構造について


人間が電気に触れてしまう、つまり感電は家庭用の電圧であってもかなり危険です。
家の床は地面と接していないから、電気は流れないのでは?と思うかもしれません。
家の基礎部分はコンクリートですが、この中には鉄筋という金属がかなりの本数入っています。
下の図は、家の床下のイメージ図です。
赤い部分は金属ですから、電気を通します。

下の写真は、コンクリートを流し込む前の土台です。

これが地面の中と接しているので、電気を通す可能性があります。
また、鋼製束を通じて床とコンクリートは接しています。
下の写真は、鋼製束です。

床下はこんな感じになっています。

コンクリートが劣化してきてヒビが入らないとも言えません。
また、わずかの隙間すらないとも言えないので、電気が流れる可能性は残るわけです。
そして木材は水分含有率が15~30 %もあるので、電気を通さないわけではありません。
もし床が水道水などで濡れていれば、より電気を通します。
水道水にはミネラル等が溶けています。
つまりイオンをふんだんに含んでいるわけです。
これに電圧をかければ、イオンが移動するために電気が流れてしまうわけです。
つまり、床が濡れていてそこに人間の足がついた状態で、漏電した電化製品に触れてしまうと電気が流れる可能性が高いわけです。
仮に床に絶縁物のゴムマットを敷き、ゴムの靴を履いていればおそらく感電はしないと思います。
ですが日常生活でそんなことをするとは思えません。

ですが接地をしていれば、電流は人間ではなく接地線を通ります。電気は抵抗が少ないほうに流れていく性質があるからです。電線と比べれば、人間の電気抵抗はかなり大きいですから。
これが保安接地の役割です。

〇漏電遮断機能について


前置きが長くなりましたが、家庭内の電路を保護する機能その2です。
地絡電流が発生しても、接地線に流れているから安心というわけではありません。
人間に電気が全く流れないという保証ができないからです。
ですが主幹ブレーカーの下流にある漏電ブレーカーで電路を遮断してしまえば、安心です。
漏電ブレーカーが動作したということは、どこかで漏電していることがわかるからです。
そこを突き止めて対応すれば、感電する心配がなくなります。
漏電ブレーカーの仕組みを簡単に書いておきます。

通常時は、漏電ブレーカーを通り電化製品へ供給されて電流値と、そこから戻ってくる電流値は同じです。
ですが地絡が発生すると、電化製品へ供給される電流値と電化製品から戻ってくる電流値が変わります。
漏電ブレーカーはこの電流値の差を絶えず監視しています。
この電流値に差が無ければ漏電していませんが、差があれば漏電していることになります。
漏電を検知すると、漏電ブレーカーは自動的に電路を遮断します。

と、こう書かれてもわからない方もいると思います。
ちなみに私は、以前はさっぱりわかりませんでした。
ですので、もう少し砕いた説明をしたいと思います。

漏電遮断器は、上の図の丸い輪っかの中を電線が通るように配置しています。
電流が流れる際には、電線の周りには磁界が発生します。
中学校の時に習ったかもしれません。渦のような磁界が発生します。
電流は負荷へ向かって流れて、負荷から戻ってきます。
その際の電子の量つまり電流量は、漏電していなければ同じになるはずです。
向かい合った2本の電線に発生する磁界の向きは、逆向きになります。
つまり漏電していなければ、逆向きに流れる電流同士の磁界は打ち消し合い、0となります。
この丸い輪は、それをずっと監視しているわけです。

仮にこの輪の後で漏電したとします。すると打ち消し合っている磁界のバランスが崩れます。
するとこの輪は、その状況を制御回路へと知らせます。
具体的には電線に流れる磁界が0でなくなり磁界が発生すると、この輪っかに巻き付けてある電線にも電流が流れます。

電線に発生した磁界は、そのまま輪っかの中にも磁界を発生させます。
そこに巻き付いている電線も、当然その磁界の影響を受けます。
すると電線は、この磁界を打ち消すような動きをします。
磁界を発生させるためには、電線に電流を流す必要があります。
つまり、磁界の影響を受けて電線は自分で電流を流すのです。
これは電磁誘導と呼ばれる現象です。
ですがこの信号は微弱なので、増幅する必要があります。
ですから、制御回路で増幅しています。

ここで、いったん視点を変えます。
電気回路というのは、電磁石とスプリングがよく使われています。
電磁石は、鉄心にコイルを巻いたものです。
コイルに電流が流れていれば磁石になりますが、電流が流れなくなれば磁石の機能を失うものです。

電気回路の一部にレバーを配置し、その端の一方にスプリングをくっつけたと考えてみてください。
スプリングで金属レバーを引っ張れば、電気回路は問題なく成立します。
電気が流れる通路が金属レバーによって邪魔されないからです。

ここで電磁石の出番です。
まだ電流を流していない電磁石を、この金属レバーの近くに配置します。
そして電流を流すと、電磁石になりこのレバーを引っ張ります。
スプリングが金属レバーを引っ張る力に打ち勝って金属レバーを引っ張れれば、金属レバーによって電気回路が開となり電気が流れなくなります。
しかし、電磁石に電流を流すのをやめれば、再び電気回路は閉となります。

このように、電磁石とスプリング、金属レバーをうまく使うことで、電気回路を開いたり閉じたりを、自動的に制御できます。

このようにして、家庭内の電路は保護されています。

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