砂糖と酒と時々みりん #3
「砂糖」、「酒」と試合をつくって、いよいよ最終回、抑えの切り札マイケル中村投手、みりんの話です。
「本みりん」と「みりん風調味料」
我が家では、熟成期間の明記が特にない、「本みりん」を使っています。
「みりん風調味料」という商品もありますが、使ったことはありますが、これも料理酒と同様にお店でも家でも買ったことはありません。
「伝統製法」と「工業製法」
本みりんは製法で大きく2種類に分けることができます。
「伝統製法」と「工業製法」。
僕が家庭料理で好んで使っている、熟成期間の明記が特にない(およそ40〜60日)ものとは、工業製法のみりんです。
「工業製法」と聞くとなんだかとってもネガティブな印象を受けますよね。そして逆に「伝統製法」の方がすごく美味しそう…(笑)
その通り、旨みの質も甘みの質も基本的に伝統製法のものの方が優れているものが多いと思います。
では何故……?「伝統製法」のみりんを使った方が、美味しい料理ができるのでは?と思いますよね。
回答としては、僕は「甘み、旨み、特に香りに関してみりんに頼るスタイルで料理を作っていないから」と、「単純に高価だから」です。
(上手な使い方をする場合は値段が高くても平気かもと書きながら思ったり…)
家庭料理のみりん
僕が家庭料理で使うオーソドックスな調味料に求めることは、旨過ぎない、クセが強過ぎない、高過ぎないということです。
僕はレストランでの食事と家での食事の分別をはっきりさせているので、買い物から料理まで割り切っている部分があります(この話はまたどこかで…)。
しかしながら美味しいみりんというものは、本当に料理を簡単なものにしてくれます。
僕が最初に勤めた料亭では、「料理が簡単になるから、まかない飯ではみりんをあまり使うな」とよく言われました。
味のバランス、調味料の投入のタイミングさえ間違わなければ、水や出汁、砂糖、醤油、だけで十分に美味しい煮物料理は作れる。
「そしてそれが出来るようになりなさい」という教えです。
「じゃあみりんいらなくね?」という話になりそうですが…。
みりんの良さ
みりんの良さは、「旨みと甘みを兼ね備えている」、「料理に艶やテリ、濃度をもたらしてくれる」ところです。
そして、特に煮物などにおいて、甘さを補いたいと思った際、「味なじみが良い」ところが最大の魅力です。
ちなみに僕が家で煮物を作る際は、みりんを入れる前提で作っていません。
煮物を炊き上げる際の味見で、甘みと旨み、塩味のバランスが良く、そのままでも美味しく仕上げられそうな時は、見た目のテリや艶は捨て置き、みりんを入れることをやめます。
しかしながらいつもそんなに上手くはいかないのが料理です。そのため、結果みりんの力を借りて試合(煮物作り)を締めることの方が多いような気がします。
それでも甘さにおいて、「砂糖と酒、もしくは砂糖だけの完投勝利」といったところを目指してみるのも面白いと思います。
みりんの注意点
みりんは、とても複雑な味の調味料です。
途中、「料理が簡単になる」と述べましたが、美味しいみりんに頼り過ぎると、全ての料理がみりんに支配されてしまいます。
甘みや旨みや香りの観点でも、食材を打ち消してしまうほどの力があることを、理解した上で使うことが大切だと思います。
なんとなく同じような味付け、「調味料の味の料理」にならないためにも…。
みりんを使う際の注意点は、製法で異なりますが、「使用量」と「加熱して使う」ことが最大のポイントです。
使用量に関しては、特に3年熟成などの高級みりん。直前で述べた通り、美味し過ぎる問題です。
熟成期間の短いみりんを使う際にはネガティブな「アルコール臭さ」が残ってしまわないよう、加熱調理に用いることが大切です。
ちなみにこの2つ、互いの欠点にはあまり当てはまらないため、「自分が使っているみりんへの理解」がとても大切です。
「使用量」に関しては、甘みや旨みを他の食材や調味料(シンプルなもの)の力も借りつつ、みりんを減らすことで解決できると思います。
「アルコール臭さ」の対策に関しては、ほぼお酒と同様ですが、アルコール分は同じでも、お酒以上に比重が重たいのがみりん。
そのため、揮発しにくく、お酒以上にしっかりとした加熱、熱い状態での投入が必要になってきます。
ちなみに料理屋さんでは、この問題を気にせずにみりんの味を加えたい時のために、「煮切りみりん」というみりんだけを加熱してアルコール分を完全に飛ばしたものを用意して使ったりもします。
もちろんお家でも同じこともできますが、「煮切りみりん」は常温では日持ちしないため注意が必要です。
「甘さ」だけの話という訳にはいかず、旨みや香りに及ぶ内容になってしまいましたが、少しだけでも日々の料理の手助けになれれば嬉しいです。
それではまた。
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