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一人で東南アジアに行った話(全能感のホーチミン)

 22歳の春、私は一人で東南アジアに行った。

 一人で行こうと思ったきっかけがある。学生時代に一番仲が良かった友人の一人と台湾旅行に行ったときに、旅行観がなかなか合わなかったことだ。友人は旅行会社を通してツアーを予約し、確実に観光を楽しみたかったのに対し、私は宿も観光も食べるものも全て自分で何とかしたかった。海外旅行なんて、韓国しか行ったことなかったのに。今考えたら非常に尖っているし拗らせている。しかし当時は頑固でなかなか譲り合えず、ほろ苦い旅行となった。

 そんな台湾旅行から帰ってきた次の日にはもう2週間後に出発するベトナム行きの飛行機を取っていた。海外から帰ってきたばかりの私は、もう何でもできる気がしていた。

 ベトナムのタンソンニャット国際空港には、夕方ごろ到着した。

 空港で適当に来たバスに乗り、だいたいこんなもんかなというところで下車した。無鉄砲すぎる。日本でも、何なら家の最寄り駅からでもそんなバスの乗り方しないだろ。当然道に迷ったが、色んな人に道を聞き続けて予約していた小さなホステルに到着することができた。よかった、これでいい。ここで私はまた成功体験を重ねてしまい、ついに全能感がカンストした。

 エクスペディアで予約したホステルは9人用の女性用ドミトリールームで、イタリア、アメリカ、ミャンマー、スウェーデンなど様々な国から来た人たちが楽しく英語で会話をしていた。遅れて到着した私にも歓迎ムードで、すぐに仲間に入れてもらえた。私は臆することなく果敢に会話に飛び込んだ。しかし、目まぐるしく変わっていく話題、飛び交う流暢な英語に全くついていくことができない。そうだ、私は英語が喋れない。全能感絶賛爆発中だったのですっかり忘れていた。何か聞かれても「Yeah」「I'm japanese」「Nice!」の3つを発するので限界だった。そんな私でも、ミャンマーから来たという女性が何を言っているのか多少聞き取ることができた。

 「日本人は英語が下手って聞くけど、本当だったのね!」

 全ての日本人の皆さんごめんなさい。そして、ここまで無敵だった私はやっと遅すぎる挫折を経験し、謎の全能感は身を潜めていった。

 ◇

 翌日、私はるるぶを片手にいそいそとホーチミンの街へ繰り出した。「ハメられるもんか」という謎の敵対心を持ち、現地の人から「コンニチハ!アリガトウ!」と声を掛けられても聞こえないフリをした。そんな簡単にホイホイついていって騙されるわけにはいかない。しかし結果だけを先に言えば、カタコトの日本語を喋るバイタクのおじさんに散々カモにされ、よくわからないマッサージ店の前で捨てられた。海外旅行は難しい。

 ここまでしょっぱい経験ばかり話してきたが、それなりにベトナムを楽しむことはできた。ベトナムは19世紀フランス統治時代に建てられたコロニアル建築が多く残っている。そんな美しい建物のすぐそばには庶民的な暮らしが根付いていて、そのギャップを感じたり、えげつない数のバイクに轢かれそうになったりしながら楽しく過ごした。

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 ピンクで可愛らしいサイゴン大聖堂とこういう風な街並みがすぐ近くにあったり。

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 信号なんてないし常にこの数のバイクが走っているので、どこかで腹を決めて前へ進まないとマジで一生渡れない。

 そんな感じで薄っぺらく3日ほどホーチミンで過ごしたあと、飛行機でカンボジアへ向かった。その話はまた次の機会に。

 写真はホーチミンのショッピングセンターにあった、不気味すぎるゲームセンターへの入り口です。ウサギの表情も左の人らしき何かも怖すぎて、中に入る勇気はなかったです。

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それではさようなら。

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