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呪われた劇団の最終公演①
ファンタスマゴリア(Phantasmagoria)
英語で、(走馬灯のように)次々と移り変わる幻影の意味。
18世紀末にフランスで発明された、幻灯機を用いた幽霊ショー。ファンタスマゴリー。
大学生の頃、私は演劇サークルに所属していた。
とはいえ、下北の小劇場で行われるような力の入ったものではなく、ほとんどが仲間内で楽しむことを目的とした、戯れの延長に過ぎないものだった。
私自身もさして演劇に興味は無かったが、一年生の時分にゼミの友人に誘われてサークルの見学に行き、雰囲気は悪くないと感じたので何となく所属するに至った。
キャンパスのあったH市では毎年夏に演劇フェスティバルが開催される。市のホールを貸し切って行われる無料イベントなのだが、例年観客の入りはまずまずといったところだった。
私の所属していた劇団も毎年参加していたのだが、他大学の演劇サークルや社会人劇団ともそこで知り合った。その中の1つに「劇団ラーメン横丁」(仮名)があった。
(仮名)としているのは、現在は活動を終了している劇団であるためだ。
そしてこれから記そうと思っているのは、結果として彼らの最終公演となった、ある作品の内容についてである。残念ながらこの作品については映像アーカイヴが存在しない。
彼らもこの作品については思い出したくないだろうから、迷惑を被ることのないよう、文中に登場する固有名詞については全て具体名を伏せさせていただく。
第17回「H市演劇フェスティバル」パンフレットのインタビューより
ーー「劇団ラーメン横丁」の皆さんには、本公演が発足した第1回より毎年ご出演いただいており、いわば本公演の「看板劇団」です。
佐々木「いえいえ(笑)、全く知名度のない我々を知っていただける大切な場ですから、本当にありがたいです」
ーー今回の作品のテーマはどういったものですか? いただいたあらすじを読む限り、結構怖い話なのかな、という印象ですが。
佐々木「そうですね。例年は演劇を見に来て下さる小さなお子様に向けたファンタジー色の強いものを発表してきたんですけど、今回は新しい試みとしてホラーというジャンルに挑戦してみようかと。夏ですし、涼しくなって帰ってもらえたらなと(笑)。物語は主人公の男が撮影した写真に男の霊が写り込んでいる場面から始まります。彼は最初、純粋な驚きを以て知人に写真を見せて回るんですけど、恐怖に慄く知人たちの反応に徐々に喜びを感じるようになる。そこで彼はさらに多くの心霊写真を撮ろうと試みるのですが、以後は全然霊が写ってくれない。そこで彼は心霊写真を捏造することを思いつくんです」
ーー佐々木さんご自身は実際にそういった、心霊写真を撮ってしまったみたいな体験をされたことはあるんですか?
佐々木「いえ、僕自身は全く霊感が無くて。この話を思いついたのも、ウィリアム・ H・マムラーという人物について本で読んだのがきっかけです。彼は死者との記念写真を撮影する技師だったのですが、戦争や病によって大切な人を亡くした遺族のために、心霊写真の捏造を行うようになります。興味深いのは心霊写真の存在が、誰かにとっての救いになっていること。今とは心霊写真の捉えられ方が全く異なるんです」
ーーなるほど。また、今回は舞台装置にもかなり力を入れられているとの事で。
佐々木「はい。ファンタスマゴリーと呼ばれる、18世紀末の映像表現があります。スクリーンの裏側から幻灯機と呼ばれる機械でゴーストの絵を投射し、幻灯機を前後させる事でゴーストが動いているように観客席からは見える。会場内にはスモークを焚いて、雷鳴や人の声を流して恐怖を高める演出も凝らしていたそうです。簡単に言えば劇場という空間をお化け屋敷にしてしまったわけですね。この手法を演劇に取り入れようというのが、今作『ノロイノイエ』のスタートでした。この先は実際に作品を見て驚いていただこうかなと思っています」
ーー楽しみにしてます!
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