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迷い込む愉楽 魅惑の「路地」
皆さんは「路地」と聞いて、どこを思い浮かべますか。
近所の散歩道、行きつけの横町、旅先で偶然訪れた路地裏。関西なら京都の路地(ろうじ、とも読みますね)を連想する方も多いかもしれません。
大通りから一歩入り、人々の暮らし、日常が息づく細い路地には、えもいわれぬ魅力があります。そして、ここ兵庫県にも素敵な路地がたくさんあります。今回は路地好きの私、ぶらっくまが、過去記事にマイ・フェイバリット路地もちょっと交え、歩きたくなる、迷い込みたくなる路地を紹介します。
海と坂と人情と 神戸・塩屋
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「塩屋から舞子の海べりは空気が澄んできれいや、いうてな。移り住んだ外国人の間でも評判やったと聞いたことがある」
以前、神戸・塩屋の洋館を取材した際、地元に住む70代の男性がそう言っていたのを思い出した。夏空が広がる日の午後、JR神戸駅から普通電車に乗り、西へと向かった。
須磨駅を過ぎると、青い海と空が目に飛び込んだ。無機質なビルばかりだった車窓が一変し、都心から離れていく感覚だ。開放的な気分で塩屋駅に着くと、仕事ということも忘れてしまった。
塩屋には、明治時代から外国人貿易商や日本人実業家らが移り住んだ。かつては70軒を超える洋館があったが、今は10軒以下。とはいえ、路地を歩くと、洋風建築を思わせる民家や、おしゃれな門扉に何度か出くわした。
海を背に、旧グッゲンハイム邸、旧後藤邸といった洋館に挟まれた細道へ入る。民家の壁沿いに茂る緑に囲まれた路地。何だか宮崎駿の映画に出てきそうな風景だ。
振り返り、海を眺める。すれ違ったミニバイクのミラーが、西日にきらめいた。
少し古い記事ですが、上の写真のような情緒ある景色は今も変わりません。記事に出てくる洋館「旧グッゲンハイム邸」は 個性的な音楽やイベントの場として使われ、最近では2020年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)に輝いた黒沢清監督=神戸出身=の作品「スパイの妻」のロケ地としても注目されました。
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明治以降、外国人居住地として発展した歴史を持ち、異国情緒が漂う塩屋の街ですが、そこに下町の風情が混在するのも大きな魅力です。下の写真のような、路地に小さな店が連なる商店街もあります。
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郷愁誘う迷路 姫路・家島諸島
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漁船が並ぶ漁港の風情が、夏空に似合う。姫路沖に浮かぶ家島諸島の一つ、坊勢島。面積は約1・9平方キロ。島の周囲は約12キロで、1時間半もあれば徒歩で1周できる。
だが少し横道に入れば、何とも奥深い世界が待ち構える。平地が少なく、小高い丘が多いこの島では、斜面にひしめく家々の間に、迷路のような細い路地が延びる。胸を高鳴らせるのは旅情か、童心か―。一歩また一歩、島の奥へ歩を進める。
玄関に面した道があれば、縁側に通じる道や勝手口につながる道もある。それは通学路だったり、散歩道だったり。公道と私道の区別さえおぼつかない。
「どの道も生活に密着し、懐かしい匂いに満ちている。それが新鮮でもある」と話すのは今春、坊勢小学校に着任した校長(57)。駆け回る子ども、立ち話をする住民、軒先の夕げの香り…。路地で垣間見た島の日常を教えてくれた。
細い坂や急な石段をいくつ抜けただろう。方向を見失い立ち止まっていると、中学生たちに出くわした。
「船着き場への近道は」と尋ねると、顔を見合わせ「抜け道が多すぎて。どれがええかな」。たゆたうような島の時間に身を任せ、ゆっくり帰ろうか。
家島諸島は、瀬戸内海東部の播磨灘、姫路市の南西約18キロに位置し、大小40余りの島々から成ります。姫路港から高速船で約30分の距離です。人が住んでいるのは「家島(えじま、と地元の人は呼びます)本島」「坊勢島」「男鹿島」「西島」の四つで、上の写真は記事中にある坊勢島です。
それにしても、何とも旅情をかきたてられる光景です。思わず「いい路地だなぁ」というつぶやきが漏れてしまいます。先述の神戸・塩屋と同様、路地の先に海が見える、というのもポイントです。所々にある階段もいいですね。路地好きの私としては「路地階段」というのも好物の一つです。
細い路地や階段が入り組んだ光景は、家島本島でも多く見られます。近年は島ならではの景観を観光資源の一つとしても発信しています。
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こうした地形から、家島本島や坊勢島では約10年前、軽ワゴン車を改造した「軽救急車」が全国で初めて導入されました。その後、広島・江田島や神奈川・江ノ島にも軽救急車の運用が広がりました。
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新旧混在 夜の「ネオ三宮」
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SF映画に登場する近未来都市のような光景が、高さ約120メートルの「神戸三宮阪急ビル」の足元に出現した。神戸の中心部にそびえ立つ同ビルは2021年4月26日に開業予定。高架下の区画では装い新たに和洋さまざまな飲食店が開業準備を進めている。
阪急とJRの高架の間に位置する横町は以前、昔ながらの看板やのれんが並ぶ一角だった。今回の建て替えで阪急側の軒並みが一新された。夕刻には青紫色の電飾が輝き、JR側の雑多な雰囲気と相まって非日常的な光景をつくり出す。
再整備でにぎわい創出の期待がかかる「ネオ三宮」。新たなランドマークの魅力は昼間だけではなさそうだ
次は神戸の都心・三宮。高層ビルの足元の路地、というのも魅惑的ですね。ネオンが輝く夜になると一層、「迷宮」感が高まります。SF映画の金字塔「ブレードランナー」や、同じリドリー・スコット監督が大阪でロケを行った「ブラック・レイン」をほうふつさせる光景です。
上の記事・写真は2年前のものですが、三宮では今も再整備が進められ、神戸の魅力の一つである鉄道の「高架下」エリアもその対象になっています。昭和の面影が薄れつつある区画もありますが、人や店が「密」でわい雑な路地の風情は失わずに、新たな魅力を生み出してほしいところです。
異国情緒の光源 神戸・北野
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まだまだご紹介したいところですが、私の好きな路地スポットをもう一つだけ。神戸の観光名所・北野です。北野といえば異人館ですが、訪れた方はご存じの通り、路地の宝庫でもあります。
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異人館の隙間を縫うように、車も通れない細い路地が走っています。まるで迷路のようで、観光客がマップを手に「どっちに行けばいいのか」と立ち止まっている光景にもよく出くわします。
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こうした路地は、この地で暮らした外国人たちの生活道でもありました。異人館巡りもいいですが、ちょっと裏側へ回り、気の向くままに路地を歩くのもオススメです。遠い異国の地で暮らした居留外国人たちの息遣いに触れられるかもしれません。急勾配の坂が多く、夏場は汗だくになりますが…。
最後に、この季節の北野天満宮からの絶景を。
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<ぶらっくま>
1999年入社。昔、神戸・北野の古アパートを借りていた頃はよく、用もないのに路地を行ったり来たりしていました。北野同様、長崎や広島の尾道など、坂の多い街の路地は、迷路のようなワクワク感があります。海外だと、イタリアのベネチアはまさにラビリンス(迷宮)ですよね。一度しか行ったことはないですが、名物のゴンドラに目もくれず、地図も持たずに「この路地はどこにつながっているんだろう」と歩き回りました。