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小さな涼を求めて メリケンパーク散策記

酷暑が続きますが、みなさんお元気ですか。ぶらっくまです。ちょっと涼しい気分を味わおうと先日、神戸の海側にあるメリケンパークを久しぶりにぶらりと散策してきました。市民が憩う公園なのですが、意外に見どころが多いのでご案内します。

神戸ハーバーランドの一角にある神戸新聞社からは、ハーバーランドの商業施設「umie(ウミエ)」や中突堤(上の地図にあるメリケンパークのすぐ西側、海に突き出した部分)を挟み、徒歩十数分ほどの距離にあります。

上の写真は、umie内のモザイクという施設の2階デッキから、メリケンパーク方面を見渡した景色です。写真中央の一番高い構造物は、改修工事中の神戸ポートタワーです。

ポートタワーの足元まで来ました。左の建物はホテルオークラ神戸です。ポートタワーの営業再開は、当初は2023年度中の予定でしたが、工事の遅れなどで24年春に延期されています。屋上に新設される展望施設など、ミナト神戸のシンボルがどんな新しい姿を見せてくれるのか、楽しみです。

まだしばらくは工事用のシートに覆われた状態ですが、姿が見えない間も魅力を発信しようと、夜はプロジェクションマッピングが行われています。

2023年5月の様子

23年秋まではプロジェクションマッピングが行われるとのことです。詳しい時間やプログラムなどは「神戸ウォーターフロントアートプロジェクト」の公式サイトなどでご確認ください。

散策に戻りましょう。ポートタワーの工事エリアとカフェの間を抜けると、メリケンパークです。正面に、白い網状の屋根が特徴の神戸海洋博物館(川崎重工グループの企業博物館「カワサキワールド」を併設)が見えます。

到着です。神戸海洋博物館の大屋根は、白い波をイメージしています。大屋根の真下の2階部分には神戸港を一望するレストランもあります。

2012年撮影

ポートタワーと共演した、上のような夜景の方がおなじみかもしれません。

右奥は中突堤の先端に立つ神戸メリケンパークオリエンタルホテル。左の茶色い建物が、17年4月にオープンしたスターバックスコーヒーです。休日には行列ができるときもある人気スポットです。

訪問時は平日の夕方でした。ちょうど昼間に、近畿地方の梅雨明けが発表されたばかりで、テラス席でゆったりとくつろぐ姿が気持ちよさそうでした。

スターバックスがオープンした17年は、神戸港が開港して150年の節目の年で、芝生広場を広げるなどメリケンパーク自体もリニューアルされました。

そのスターバックスのすぐそばにあるのが、人気の撮影スポットとなっている「BE KOBE」のモニュメントです。これも開港150年を記念して17年4月に設置されました。

「BE KOBE」というキャッチフレーズは、阪神・淡路大震災から20年に合わせて15年に制定されました。神戸市によると、「市民が神戸市民であることを誇り思う気持ち」を表しているそうです。

「BE KOBE」モニュメントも、今や市内5カ所に増えています。

この日のメリケンパークでも、写真を撮る観光客らの姿が見られました。私も何人かの方に頼まれ、記念撮影のお手伝いをさせていただきました。

周辺では若者らがアカペラの練習をしたり、海風に当たったりと、思い思いの過ごし方をしていました。市民も観光客もくつろげるのが、メリケンパークの魅力だと思います。

2019年4月撮影

メリケンパークができたのは、開港120年を迎えた1987年でした。それ以前は海だったところを埋め立てて整備されました。

造成中のメリケンパーク=1984年12月撮影
1964年3月撮影

埋め立て以前は、船から降ろした貨物を運搬するはしけと呼ばれる平底の小型船が数多く停泊していました。

その頃は当然「メリケンパーク」という呼称はなく、「メリケン波止場」と呼ばれていました。1969年発行の「神戸港」などによると、明治初期、当時のアメリカ領事館の前に木の桟橋として作られたため、アメリカ(アメリケン)がなまって「メリケン」へと変化し、そのまま地名として親しまれたといいます。

そんな歴史を持つメリケンパークには、神戸の歴史にちなんだモニュメントも多くあります。いくつかご紹介します。

上は「神戸港移民船記念碑(「希望の船出」像)」です。1908(明治41)年、ブラジルへの第1回移民781人を乗せ、笠戸丸が神戸港を出港しました。以降、明治末期から昭和にかけ、日本政府が国策移住を進める中で、神戸から南米を中心とする海外へ多くの移住者が旅立ちました。碑はそのことを記念して2001年に建てられました。

1928年には、移住者が渡航前に1週間ほど滞在し、教育を受ける施設として「国立移民収容所」が神戸に開設されました。その建物は、メリケンパークから北側(山側)へ、元町駅を過ぎてトアロードをのぼりきった諏訪山の麓に今も残っています。現在は「海外移住と文化の交流センター」となっています。日本で唯一現存する移住関連施設です。

海外移住と文化の交流センター=神戸市中央区山本通3

同センターは移住の歴史を紹介しているほか、増加する南米系日系人を中心とした在住外国人の支援、国際芸術交流といった機能も担っています。

再びメリケンパークに戻って、上は「映画記念碑 メリケンシアター」です。1896(明治29)年、エジソンが発明したキネトスコープ(活動写真)が神戸に輸入され、日本で初めて上映された歴史にちなんだ記念碑です。スクリーンに見立てた穴は、子どもたちの遊び場にもなっています。

このモアイ像のようなモニュメントは「神戸海援隊」と名付けられています。幕末、勝海舟や坂本龍馬らが関わった「神戸海軍操練所」で、志を抱いて学んだ若者たちの姿を表現しているそうです。

これは「神戸港震災メモリアルパーク」。1995年の阪神・淡路大震災で被災したメリケン波止場の一部が、当時のまま保存されています。この日も外国人観光客らが熱心に見入っていました。もちろん無料で見学できます。

噴水広場もあります。午前10時~午後11時に20分間隔で約3分間、水が噴き出し、音と光の演出もあります。この日は子どもや若者が気持ちよさそうに水を浴びていました。私はびしょ濡れになるわけにもいかず、水しぶきだけで我慢しましたが。

メリケン波止場の北側には「メリケン地蔵尊」があります。先述したように、メリケンパークの埋め立て前、この辺りの海は小型船の「はしけ」が集まる「艀だまり」でした。艀は乗組員家族の住居も兼ねており、海に転落して亡くなった子どもらもいたといいます。海難事故の犠牲者を鎮魂するため、1975年ごろに地蔵が安置されました。

メリケンパークの北端です。元町駅側からアクセスすると、ここが入り口になります。カフェの裏に、尾ひれのようなものが見えます。

正体はこの魚です。「フィッシュダンス」と命名されたオブジェで、モチーフはなぜか海の魚ではなく、コイだそうです。1987年の神戸港開港120年の際に制作されました。建築界のノーベル賞とも称される「プリツカー賞」受賞者であるフランク・ゲーリー氏がデザインし、安藤忠雄氏が監修しました。

メリケンパークにはステージもあります。イベントや野外ライブで使われます。

2023年7月16日撮影

7月中旬の2日間、メリケンパークで開かれた「Kobe Love Port・みなとまつり」では、神戸新聞で連載中の創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」の主人公マルが、アカペラグループ「チキンガーリックステーキ」と共に音楽ライブに登場しました。

以上、メリケンパークをぐるりと一回りしてきました。上は、メリケンパーク側から見た神戸ハーバーランドです。中央のやや平べったいビルが神戸新聞社です。

今回は紹介できませんでしたが、メリケンパーク周辺のウオーターフロントは大規模な再整備が計画されており、神戸ポートタワーと直結する中突堤中央ビルの取り壊しなども進められています。また機会を改めて、変わりゆく神戸の姿を投稿したいと思います。

〈ぶらっくま〉
1999年入社、神戸出身。夏バテのせいではないのですが、今回はちょっとゆるめの(?)ブログ風記事をお届けしました。まだまだ暑い日が続きますが、体調管理や気分転換を心がけながら、みなさんもどうか健やかにお過ごしください。