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記者を魅了する二つのメロンパン

定期的に紙面に登場する話題があります。メロンパンです。ふっくらとしてサクサク、表面には網目が入って…ではないメロンパンが神戸にはあります。神戸市外出身の記者が必ずといっていいほど引かれます。そんな二つのメロンパンについて播州人3号が紹介します。

「メロンパン」であって「メロンパン」ではないところが話を複雑にしています。

街中の疑問に記者が挑む「まちある調査団」というコーナーで取り上げられていました。

メロンパンは〝通称〟神戸では…
サンライズ 由緒正しき名
考案の老舗 「日の出の模様原点」

 円いパン生地の上に、甘いビスケット生地を載せたパン。全国的には呼び名はメロンパンなのだが、神戸では、なぜか「サンライズ」と呼ばれている。さらに、その発祥店の流れをくむ神戸の老舗では、同じパンが「ス」に濁点のない「サンライス」という名前で並んでいるというから、ややこしい。いったい、どういうことだろう?
 サンライズのルーツが分かると聞き、神戸市兵庫区の東山市場にあるパン店「金生堂」を訪ねた。1924(大正13)年の創業で、棚には、いろんな種類のパンがずらり。「サンライス」もその上段に堂々と並ぶ。
 「もともとはちゃんと『サンライズ』やったんやけどね」。2代目店主の男性(69)が笑いながら説明する。
 金生堂は男性の父が開業。大阪や名古屋などにも店舗を設け、広島県呉市の店は伯父が切り盛りした。男性によると、サンライズの生みの親はこの伯父という。
 伯父は戦前、ビスケット生地を使ったパンを考案。当時の呉といえば、軍艦の製造が盛んだった。そこで、軍艦に掲げる「旭日旗」を参考に生地表面をデザイン。朝日の光が放射状に伸びる様子を表しており、名前も日の出の英訳でサンライズに。それを東山市場の店でも売り始めた。
       ○     ○
 ではなぜ、サンライズの「ズ」が「ス」になったのか。
 「戦前にはもう変わっていたらしい。お客さんが『サンライス』って言うたとか。サンライズは発音しにくかったんやろな。皆がそない言うから『サンライス』になったんや」
 かつては他のパン店も、金生堂にサンライズの作り方を習いに来たという。兵庫県パン協同組合によると、サンライズは神戸を中心に関西に広まったという。
       ○     ○
 その後、生地表面に格子模様を施したパンが普及し、その見た目から名前をメロンパンに変える店が増加。金生堂でもサンライスの名前は残ったものの、日の出模様のパンの金型が入手しにくくなり、格子模様に変えた。
 一方、神戸などでは、アーモンドの形で中に白あんが入ったパンを「メロンパン」と呼ぶことが多い。現在のコープこうべのパン職人が52(昭和27)年に考案し、名前が定着。かつてメロンは変種の「マクワウリ」を指し、その形に似せたとか。金生堂でもこちらがメロンパンの名前で販売されている。
 ところで金生堂って、どう読むんですか。
 「ほんまは『きんしょう』堂やねん。でも、みんなが『きんせい』って言うから、そっちに合わせてん」

(2016年10月12日夕刊より)

書いたのは神奈川出身の記者です。

ある日、こんなふうに尋ねられました。

神戸のメロンパンって知ってますか

「また1人、神戸のメロンパンにとりつかれたか」と心の中でつぶやきました。
それまでにも何人もの若手と同じような会話を交わしました。
そして播州人3号も20年ほど前、得意げに先輩に尋ねたことがあります。

記事にある通り、神戸にはメロンパンが二つあります。
初めて読んだ人にとっては???ではないでしょうか。
かなり古いですが、ルーツをまとめた記事です。

メロンパン
発祥の地に2つの“顔”
神戸

 コンビニの売り上げが一番というメロンパン。神戸が発祥の地と聞き、1925(大正14)年創業のパン屋を訪ねた。
 同市兵庫区下祇園町の平野市場。「ハナムラパン」は、路地裏のような狭い通路に面していた。
 2代目の男性(71)は、その道53年のパン職人。「神戸では2種類あって、一般に知られるメロンパンはサンライズのことですわ」
 違うのは表面の模様。数本の線が放射状に伸び、日の出に似ているため、店によっては英語の「サンライズ」を使う。
 見た目だけではない。パンはイースト菌が発酵して膨らむが、お米からつくった「酒種」と呼ばれる液体も混ぜる。この効果で「ほんのり甘い風味が醸し出され、日持ちもようなった」。
 「昭和20年代の初めには、すでに市内でいくつかの店が焼いてた。その後、神戸から岡山、大阪方面へ広がったんちゃうやろか」と男性。
 では、もう一種類のメロンパンって、どういうものか。ラグビーボールを半分に切ったようなだ円形で、表面がしっとりなめらか。中に白あんが詰まっている。
 同市長田区東尻池町に本店を置くパンメーカー「オイシス」の前身は、1948年創業の「キンキパン」。会長の男性(68)が、いわれを解説してくれた。
 「だ円形なのは、日本に古く伝わったメロンの一変種、マクワウリにヒントを得たという説がある。美濃国の真桑村(現在の岐阜県真正町)でよくとれ、そう呼ばれたとか。白あんはその果肉に見立てたみたいやな」
 神戸とパンのかかわりは深い。業界関係者が32年前に出版した「パンの明治百年史」に、こんな記述をみつけた。「神戸のパン食文化の中心は、神戸港メリケン波止場沿いの外人居留地と、これに隣接した内外人雑居地域だった」
 それから1世紀。神戸のパン屋は、組合加盟だけで75五店。独、仏、英と各国の味が楽しめる一方、日本人の口に合うようにアレンジされた。総務省の2000年家計調査で、パンへの支出額は、神戸が年間39160円で全国1位だ。
 男性は言う。「この町の職人は昔から、おいしいパンを食べてもらおうと、いろんなアイデアを考えた。メロンパンも、そのひとつやった。そう思いますな」
 帰り道、サンライズを一口。とろける甘いビスケット生地。幼いころに戻ったような、懐かしい気分になった。

(2002年4月6日付朝刊より)

神戸には、楕円形で白あん入りの「メロンパン」と、神戸以外ではメロンパンと呼ばれている「サンライズ」があることが分かります。

「ひょうごのロングセラー」と題し。兵庫でお馴染みの商品を紹介するコーナーにも登場していました。
「コープさん」と市民に親しまれる「コープこうべ」でも「(神戸の)メロンパン」が人気商品であることが分かります。

神戸ハイカラメロンパン
コープこうべ
和洋折衷、独特の味と形

 生活協同組合コープこうべ(神戸市東灘区)には、約60年前に商品化されてからずっと、菓子パン部門で売り上げ断トツ首位のパンがある。
 「神戸ハイカラメロンパン」。メロンパンといえばまん丸で、表面が堅くて甘いのが一般的。ところがこれは、アーモンド形で表面はふわふわ。中には、なぜか白あんが入っている。
 食べてみると、白あんのまったりとした食感が独特だ。「こんな味、ほかにないでしょう」と菓子パン部門チーフの男性(40)は自信たっぷり。白あんにはマーガリンを混ぜ、口当たりをなめらかにしているのだという。
 コープこうべの独自商品で、コープの六甲アイランド食品工場(神戸市東灘区)で製造している。軍手の従業員らがオーブンから出てきたパンに乗った焦げ色の型をはずしていくと、焼き目のきれいに入ったパンが顔を出す。甘い香りがふわり、鼻をくすぐる。「ぼく、パンの中ではこれが一番好きです」と男性。
 1952年、当時17歳だったパン職人が発案した。かつてはメロンといえばマクワウリを指したので形は楕円だれん。焼き型には、三宮の道具店で見つけたオムライス用の型を使った。白あんは、くりまんじゅうを応用したアイデアという。
 先人の知恵とハイカラな神戸の気風が詰まったメロンパンは、半世紀にわたって神戸っ子に愛されている。
<メモ>
 コープこうべは単独では日本最大の生協。2008年度のパンの販売個数は、神戸ハイカラメロンパンが265万個、2位の「小倉あんパン」は79万個、3位で一般的なメロンパンの「サンライズ」は33万個。1位と2位以下の差は大きい。

(2009年12月22日付朝刊より)

これだけ売れているのに、兵庫でも神戸以外ではあまり馴染みがないから不思議です。
知名度を上げようと、その形態に注目した取り組みもありました。

神戸発祥ラグビーボール形メロンパン
県内パンメーカーなど9社・団体
新商品開発でスクラム

 神戸発祥のラグビーボール形メロンパンを〝ご当地フード〟として広めようと、兵庫県内のパンメーカーなど9社・団体が1日、新作商品を発表した。生みの親の生活協同組合コープこうべ(神戸市東灘区)が呼び掛けて実現。神戸市内でも試合のある「ラグビーワールドカップ2019」を盛り上げ、若者への知名度アップを狙う。
 同生協が立ち上げた「神戸メロンパンご当地フード化計画(KMG)実行委員会」が主催。ニシカワ食品(加古川市)やイスズベーカリー(神戸市中央区)、神戸山手女子高校(同)などが参加した。計8種類の新商品が開発され、各社の店舗で販売する。
 同生協と同校が共同開発した「神戸ハイカラメロンパン チョコメロワッサン」(138円)は、昨年9月の同生協の商品開発コンテストに同校の生徒が出したアイデアを商品化。クロワッサン生地にチョコレートを挟み、食べ盛りの若者が満足できる商品に仕上がったという。
 ラグビーボール形メロンパンは同生協の前身、神戸消費組合のパン職人が1952年に考案し発売。2001年からは「神戸ハイカラメロンパン」の新しい商品名で販売し、長年人気を誇っている。しかし、昨年1月に街頭でアンケートしたところ、20代~30代への認知度の低さが判明し、今回のプロジェクトにつながった。

(2018年2月2日付朝刊より)

4年に1度のラグビーW杯が今年はフランスで開催されます。
楕円形のメロンパンが再び注目されるかもしれません。

<播州人3号>
1997年入社。あんパンとメロンパンが好きです。専門店の個性的なメロンパンも好きですが、コンビニなどに並ぶ袋入りのメロンパンもどんどん「進化」しています。特に外側のサクサクの部分は各社の工夫が感じられ、「食パンの耳」のように「メロンパンの耳」としてまとめて売ってくれればと妄想を描くことがあります。

#神戸のメロンパン #メロンパン #サンライズ #コープこうべ #ラグビーW杯