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【ブランディングは一貫性・理論性・具体性】RURIKO PLANNINGの星加ルリコさん(ミライ経営塾Wondersメンター紹介③)

3名のメンターと12の神戸市内の企業が、デザイン経営の視点で事業成長を目指す実践型のプロジェクト「ミライ経営塾Wonders」メンター紹介企画ラストは株式会社RURIKO PLANNING(ルリコプランニング)の星加ルリコさんです。

ルリコプランニング星加さん 写真

神戸新聞:キックオフセミナーでは「ミライ経営塾Wonders」名付け親として、パネルディスカッションにご登壇いただきありがとうございました。当時の参加企業さんの印象はどうでしたか。

星加さん:かなり“前のめり”で、こうした先行き不透明な時期だからこそ攻めの姿勢をとる経営者の方々が多いように感じました。「とりあえず様子見」の姿勢ではなく、「ピンチのときほど動き出そう」という印象ですね。選考開始以前にもかかわらず資料を持参いただいたりもしましたよ。

こういう時期だからこそ会社を変えられるチャンスですので、風穴をあけ一緒にもがいていきたいです。

というのも、セミナーでもお話ししましたが今回この「ミライ経営塾Wonders」という名前やロゴをデザインした際に主眼を置いたのは「12社一体のチームである」ことです。右肩あがりの経営を目指したく、躍動感あるロゴにもしています。

先行き不透明な時代においても、おどろきや不思議がる気持ちをもって(wonder)、夢やこれからのビジョンを描いたり、社会に対してどういう存在意義をもたらすのか未来志向で考える。1社ではできないことを12社(1ダース・ワンダース)で一緒にとりくむ。この「夢を描く」×「1ダース」=「ミライ経営塾Wonders」のビジョンを全社で共有しながら半年間、神戸市さんと神戸新聞さんと進めていきたいと思います。

神戸新聞:チームでとりくむことが大切で、この事業のかなめでもありますね。

星加さん:そうですね。実際の現場では、経営者にとって社員との相談しづらいことや、異業種との交流では自社にとりいれづらいことも少なくありません。しかしながら今までの延長では経営が立ち行かない昨今だからこそ、このWondersがなければ集まっていないようなメンバーが一堂に会し、まずは一緒にワークショップやプロジェクトを共に経験し、関係性ができてから経営課題について話し合うという流れをつくります。なにかを共有しなければ、人と人の関係性は生まれないとも思います。

神戸新聞社:なるほど。これまで数多くのプロジェクトにかかわってこられているからこそ「神戸っぽい」「神戸らしい」ビジネスの土壌など感じられることはありますか?

星加さん:大阪に近く、東京への交通も整い、世界にも開けているという点では強みであり、ある意味恵まれていると思います。東京ほどの商業的な密集地でないけれど、立地・環境に恵まれ、経済の流れのスピードが速すぎず遅すぎず、ちょうど良いと感じますね。「神戸と東京をわざわざ往復するのは大変じゃない?」とよく言われますが、情報過多でノイズが多い環境から離れ客観的になれるので、地に足をつけたクリエイティブができるとも思います。

ほかにも九州の地方創生プロジェクトなど、神戸より西エリアのご依頼もありますが、都心と地方、東西の文化の絶妙なバランスをとれる距離感にいられるのもメリットです。

神戸新聞:そういったものが神戸の土台にあるのですね。

星加さん:そうですね。たとえば神戸ビーフのブランディングの件も、首都圏を経ることなく直接海外をターゲットに見据えた計画を立てました。

神戸新聞:詳しくお聞かせいただけますか。

星加さん:はい。神戸ビーフのブランディングを請け負って13年になりますが、最初の3年くらいは依頼主さんから「この戦略でほんまにいけるんかいな?(大丈夫?)」「世界観が偏りすぎるのでは?」と心配されたことも実際ありました。

当時、リーマンショックで競りの価格が最安値になり、再度高級商材としてブランディングしていくために、現状把握を綿密に行い、ターゲット設定を明確にして、歴史や強みを再構築しました。

世界観も、他の黒毛和牛にはない、神戸ビーフならではの要素が必要でした。高級車のベンツやロレックスなどもあの高級感あるイメージを消費者に伝えるために「セクシーさ」をとりいれているように、具体的には肉の背景に黒を合わせるなど意匠を凝らし、ブランドデザインを積み上げてきました。

結果、神戸ビーフを長年守ってこられたご依頼主の方々にもしっかりご理解いただけ、双方向の信頼のもとお仕事を続けさせて頂いております。ブランディングはこの関係性がなければ成り立ちません。

神戸新聞:13年・・・!

星加さん:ブランディングは時間がかかりますし、継続しているからこそ認知がひろがります。もちろん単発のプロモーションなどもありますが、ルーティンワークもずっと継続して続けています。

神戸新聞:「一貫してやり続ける」ということが大事なんですね。ブランディングをするうえで大切なポイントはありますか。

星加さん:3つあります。「言い続ける“一貫性”」、「なんでこうあるのか、社内と社外に伝える“理論性”」、この理論をもとに「キャッチや写真撮影などどうするかという“具体性”」。意識的にこの3つを車輪のようにぐるぐるまわせるように考えています。
神戸ビーフの事例でたとえるなら、神戸ビーフの価格や特徴をふまえ、「日本の観光商材・農産物のなかで、日本に来たときに一番食べたいと思わせるものにする」。そしてつねにトップであり続けるために、このブランドの世界観を変えずに発信し続けるということです。

神戸新聞:なるほど。「理論」と「具体」の差を埋めるのはなかなか難しそうにも感じます。

星加さん:具体的なところから考えて、理論へ落とし込むこともあります。「なぜこの世界観なのか」を頭で理解いただかないと腑に落ちないので、必ず理解できるような言語化をするという意識が必要だと思います。

ご依頼いただいた際には、経営者とのヒアリングに時間をかけます。当然のことですが、経営の仕方も組織の形態も千差万別ですので、そんなにすぐに企業のことなんてわかるはずがありません。ブランドの5年後、10年後のビジョンを丁寧にヒアリングし、会社の文化や社風に応じた実践を心がけています。

神戸新聞:「企業ブランディング」と「商品ブランディング」とでなにか違いはりますか。

星加さん:いずれにしても会社のことを理解しないことには商品やモノづくりの想いも理解できないので、必ず全体像の把握からはじめます。「存在意義は何か」「なんで会社を経営しているのか」の「かなめ」のヒアリングからです。

神戸新聞:「そんなこと考えてなかった!」というような方もいらっしゃいますか?

星加さん:考えていないというより、「言語化ができていない」「社内外に伝わっていない」ということはあります。個別の商品はヒットするが、なんでそれを作ったのかがぼんやりしている。中小企業だとなんとなくそうした靄がかった状態でも、経営がまわってしまうからこそなおさらですね。

今回、Wondersの参加者と事業成長を目指すうえで、そうした「かなめ」の再認識や言語化を伴走していければと思います。「いつか役にたつ」ということもあるけど、スピードアップしていかなければならない昨今、そのきっかけ・気づきを与えられればと思います。

このミライ経営塾Wondersはわたしの地元神戸での取り組みでもありますし、まだお会いしたことのない経営者さんと今後も会えるのが楽しみです。

神戸新聞:ブランディングはまさに「人と人」でやっていくものだという感じが伝わりました。星加さん、本日はありがとうございました。

(聞き手:神戸新聞社メディアビジネス局 三宅 鄭)

星加 ルリコ/Ruriko Hoshika
株式会社 RURIKO PLANNING代表取締役
武蔵野美術大学卒。
東京の都市計画コンサルタント会社を経て、神戸にてブランディング会社であるRURIKO PLANNINGを設立。企業ブランディング、店舗プロデュース、商品開発、デザイン制作、各種イベント企画・運営等をトータルで手掛ける。
〔 著 書 〕
「日本社会の活力再構築 まちづくり・流通・マーケティングからの提言」中央経済社(共著)
「ビジョナリーマーケティングThink Differentな会社たち」碩学舎 中央経済社(共著)
「中小企業の実践マネジメント 伸びる会社はココが違う!」中央経済社(共著)
主な実績は下記リンク参照
https://www.rurikoplan.com/works

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