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シン・長田を彩るプレイヤー~木を愛し、新長田を愛する建築家~(前編)

今月は合同会社r3の合田昌宏さんの記事をお届けします。
※過去にKOBE007が取材した記事のリメイクです。
合田さんは長田区の六間道商店街でレンタルスペース「r3(アールサン)」を運営しながら、「創る人」として活躍されています。
古民家再生から、建築設計、まちづくり支援など幅広く活躍される一方で、地域団体の役員を複数かけ持つなど、まちの多様な担い手としても活動しておられます。前編では、合田さんが長田に来たきっかけや、建築に興味をもったきっかけなどについてお届けします!
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「酒屋のおばちゃんから紹介された新長田の変な家」

-記者-
合田さんが長田に来られたきっかけについて教えてください。

-合田さん-
出身は神戸なんですが、長田は僕ら夫婦ともに縁もゆかりもなかったんです。
この長田のまちに来たのが16年前なんですが、当時新開地にある親の家に同居していて、そろそろ出ようかということで、
当時から自分で家を作れる自信があったので、古い家を探してたんです。

今では、リノベーションとかDIYが流行ってるけど、
16年前に不動産屋に
「賃貸で安くて自分で内装をさわれる古い家がないかな」と聞くと、
「そんなんあるわけないやん」って言われてました。
当時は家って借りたら壁に穴開けるのもあかんねんっていう時代でしたしね。

半年くらい探したんやけど、不動産屋を通じては見つからなかったんです。
そんな時に知り合いの酒屋のおばちゃんから電話があって、

「あんた、ええ家あるで」
「まじで!ええ家ってどういうこと?」
「なんか新長田にあるアパートやねんけどな、4軒がつながってて」

もう聞いたときはさっぱりわかりませんでした(笑)

-記者-
それが新長田に来られたきっかけだったんですね(笑)

-合田さん-
ほんで、嫁と見にいったら、もうひとめぼれ!

なんか変な家なんですよ、
ぱっと見は木造2階建ての一軒家なんやけど、玄関扉が2つあって。
1つ目の扉が1階の入り口で、奥と手前の2軒あって。
もう1つの扉を開けると、階段があって、左右に1軒ずつ。
だから4軒分、ポストが4つあって。
ほんで風呂なしのミニキッチンとトイレがそれぞれ4つずつある家。

-記者-
変わった構造ですね!

-合田さん-
それでその家を手に入れて、そこに住みながら1年くらいかけて自分で工事しました。
うちの嫁にちょっと手伝ってもらったりして、DIYというか、見よう見まねでやってみた。

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「5年働けば一人前になれる!?」

-記者-
合田さんが独立しようと思ったきっかけは何だったのですか?

-合田さん-
僕は大学卒業して、5年間だけゼネコンに勤めてたんですけど、
入る前から「5年間は会社が投資してみんなを育てる、5年後は返してね」っていう話を聞いたんです。

それを「5年で一人前になれるんや!」となぜか勘違いをしてしまって・・・
5年経った時にものすごい大きな仕事を取ったんですよ。
それで、もう一人前になれたんじゃないかって思って、5年でやり切って辞めちゃった。

独立したものの、一人前にはなってないですよね。
そんな甘くなかった27歳の時です。

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「看板屋でのアルバイト経験が原点」

-記者-
元々、建築に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

-合田さん-
建築に興味持ったというか、中学の時から看板屋さんでバイトしてました。
色彩とかって難しい言葉では習ってないけど、色の配置であるとかバランスとかはそこで学んだというか、なんとなく教えてもらった。
しかも、お金もらいながら。そこが僕の原点というか。

-記者-
看板屋でバイトをしようと思ったきっかけはなんだったのですか?

-合田さん-
物作りが好きな親戚のおじさんがそこの看板屋さんに出入りしていて。
そのおっちゃんが「おもろいとこあるから連れてったるわ~」言うて、連れていかれたのがきっかけです。

行った日から、「お前これ書いてみい」って言われて
いきなり看板を下書きもなく書かされたんですよ。
それでその日に2,000円もらえたんですよ。

その頃中学生の僕は、なんか書いてこれが商品になるってすごい仕事やなと思っちゃって。
「これまた明日も来ていいですか」って言って、そこからどんどん続くようになって。
今でも僕がデザインしたり、そこの作業場を使わせてもらうことあったり、
そこの息子さんたちと一緒にものづくりをやってます。

-記者-
すてきですね!
中学生でその経験ができるってすごい貴重な経験ですよね。

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「r3のシンボル・黄金に光る木」

-記者-
この事務所は木を最初に建てたと聞いたのですが、この木ですか?

-合田さん-
この木ですね。
手あかがついて黄金に光ってきてる。

-記者-
そうなんですか??
絶対塗ってるんやと思ってました。

-合田さん-
塗ってないあれ自然の木の色で。

-記者-
ああいう風になるもんなんですね!
これを最初に置いた理由は何ですか?

-合田さん-
「木を立てて人が集まるみたいなイメージ」があって、
邪魔やけど「店の真ん中に木立てたいな」って思っていたんです。
そんな時に、ある銘木屋さんの一番奥にもう使われなくて眠ってた木があって、一目ぼれして持って帰りました。
工事中に横に倒しとったら邪魔なんで、先に立てたんです。
そしたらみんなが外側から見てて「あれ、こんなとこに木立っとったっけ」みたいな。
そこから話題になって。
陽が当たってなかったこの木が、みんなのシンボルになって、みんなが集まってくれて。
僕の手掛ける空間はほぼこういう木とか緑とかを必ず提案で入れさせてもらってて、「木を立ててよければ仕事受けますよ」って言うんです。

-記者-
それが条件なんですね(笑)

-合田さん-
「それがあかんかったら他の人に頼んで」って。

-記者-
木にこだわるのは人が集まるものにしたいっていうことからですか?

-合田さん-
「あそこの店、木あったよね」みたいな、そういうみんなの印象に残る所になればっていうのがあって。

「r3」ってよう分からん名前やけど、「あの、店の真ん中に木あるところ!」ってなってくれたらなぁと。
自分も木を触ったり見てたりしたらなんか安心感があるし。
シンボルツリーにもなるし、みんなに覚えてもらえるしみたいな。
それで「木って素敵やな」って。

-記者-
確かに!
色んな方が集まって、凄いぬくもりがある印象ですね!

木が大好きな合田さんらしいエピソード満載でお届けしました。
事務所に一番最初に木を立てたというお話も合田さんならではですよね!
木の色の正体はまさか…(笑)でしたが、それだけたくさんの人が集まってきたということですね。
中学生の時に看板屋さんでデザインをされていたということですが、
そもそも小学生の頃から、犬小屋や本棚を作って、学校の友達にプレゼントしていたそうです。
後編では、地域とのつながりや、合田さんが考える新長田の可能性などについてお届けします。
お楽しみに!