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シン・長田を彩るプレイヤー(番外編)~下町芸術祭で長田の魅力をシン発見!~(前編)

2023年11月3日(金祝)~19日(日)の17日間で開催された「下町芸術祭2023 COMMONS HACK」。まちを歩けばアートと出会い、日常と芸術の溶け合いを楽しむことができるイベントでした。
そんな下町芸術祭、実は私たち「KOBE007」もツアー企画者として参加していたんです!
今回はシン・長田を彩るプレイヤー番外編として、私たちが運営したツアーを中心に下町芸術祭当日の様子をお届けします!


「下町芸術祭2023 COMMONS HACK」とは



下町芸術祭とは、神戸市長田区のまちを会場として開催しているアートフェスティバルです。2015年より2年に1度開催しており、今回で5回目となります。
「多文化共生」をテーマに掲げ、ジャンル・業種やコミュニティの垣根を越えて、地域が協力し開催してきました。

期間中は神戸・新長田に点在する古民家や福祉施設、町工場などを舞台に、現代アートやパフォーマンスの展示・公演を行いました。

参加アーティストは総勢24組、挑戦的かつ先鋭的なアーティストが全国から集まりました。

2023年11月3日(金祝)~19日(日)の17日間で開催され、展示のみならずトークイベント、まち歩きツアーなどの催しも行い大盛況のうちに終わりました。

大盛況のツアー


下町芸術祭イベントのひとつとして、下町芸術祭と市内の「まち歩き愛好会」がコラボした8つのツアーが行われました。
私たち「KOBE007」も長田にゆかりがある「まち歩き愛好会」としてツアーを企画!
2023年の11月11日に実施し、定員上限いっぱいの10名の方にご参加いただきました。

私たちが企画したツアーのテーマは「自分の手で感じるアート」。

絵の具を注いで完成させる「ポーリングアート体験」を軸にツアーを行いました。

ポーリングアートに使用する色の獲得方法は、指定された会場を回ること。
目当ての色が割り当てられた作品を鑑賞することで絵の具を獲得できます。

選ぶ色や傾け具合によって様々な表情を見せ、絵の具を重ねて注ぐだけのシンプルな手順だからこそ、自由度が高く感性が色濃く反映されます。
みなさんオリジナルの表現を編み出してそれぞれ全く違った作風になりました。


今回のツアーには、子どもから大人まで幅広い年齢の方々に参加していただきました!
自分の手で自分だけの作品を作り上げたことで、より身近にアートを感じることができたのではないでしょうか。

ツアー対象の作品レポート!

絵の具の色を割り当てた作品について紹介していきます。
今回ツアーの対象になったのは新長田合同庁舎付近にあるこちらの9つ!

① 「他人の始まり、と終わり」
② 「愛おしいものたち The Adorable」
③ 「喫茶 鳩駒」
④ 「Their Breathing」
⑤ 「下町の風と共に」
⑥ 「遡及空間」
⑦ 「猫屋敷」
⑧ 「symbiotic garden」
⑨ 「house」

下町に溶け込みながらも異彩を放っており、どれもが個性的な作品でした。
前編である今回は①から④の作品まで紹介していきます。
⑤以降の作品紹介は後編の記事をお楽しみに!



① 「他人の始まり、と終わり」


アーティスト:笹埜能史+八郎(ささのよしふみ はちろう)さん
会場:オルタナティブスペース JSR

兄弟によるインスタレーション作品で、遠く離れた土地で美術に携わっている2人の共同展示です。
長田で青春時代を過ごした笹埜さん兄弟が、それぞれの中にある「記憶」と「家族」を考え、「私にとってあなたとは何か」を表現することをテーマに制作されました。


1階のガレージは兄・笹埜能史さん中心の展示になっています。
穴の空いた跳び箱の中にはモールス信号の通信の機器があり、過去の記憶と現在を繋いでいるようでした。
2階を含めた屋内には弟・笹埜八郎さんが制作した人形をはじめ、絵、ジオラマなどの小物、かつて2人が住んでいた丸山団地の模型などが展示されていました。
「兄弟」の持つ共通の想い出と、それぞれが別々に歩んだ美術への向き合い方が交わった作品だと感じました。


② 「愛おしいものたち The Adorable」


アーティスト:浅山 美由紀(あさやま みゆき)さん
会場:角野邸

和紙と赤い糸で制作した作品です。
和紙に線香で穴を空け、 そこに赤い糸を通しインスタレーションとして表現されています。
「今、世界は不穏で、あたりまえと思っている日常は永遠でない。
この作品を観て、かつて存在した大切なものを思い出してほしい。
という想いで制作されました。

かつて迎賓館だった角野邸の和室と、和紙で制作されている浅山さんの作品が非常にマッチしていると感じました。
和紙を通した光はあたたかくやわらかい雰囲気で部屋をぼんやりと照らし、赤い糸の力強さとの対比が際立っていました。
和紙に空いた穴も、線香で空けているため一つ一つの形に個性があり、じっくりと眺めていたいと思って、つい見とれてしまいました。


③ 「喫茶 鳩駒」


アーティスト:内田 結花(うちだ ゆか)さん
会場:喫茶 初駒

新長田駅前広場にて行った、“鳩”のフィールドワークをもととした研究成果が展示されていました。
普段は振付家・ダンサーとして活動している内田さん。
フィールドワークに初挑戦し、新長田に住まう鳩を通して新長田のまちを見つめなおしました。喫茶初駒は鳩だらけに!BGMは鳩の鳴き声、鳩の写真集や観察スケッチブックなどそこかしこに鳩があふれていました。

新長田にいる鳩の丁寧な解説を読むと自然と愛着が湧いてきます。
普段は身近すぎて気に留めていない「鳩」ですが、この喫茶店を出た後はなんだか気になる存在になってしまいました…。知らぬ間に鳩の虜に!


鳩駒鑑賞後に出会った鳩をパシャリ

④ 「Their Breathing」


アーティスト:小畑 亮平(おばた りょうへい)さん
会場:角野邸

長田全域を対象にしたリサーチ活動を元に構成するインスタレーション作品です。
道端に落ちている見知らぬ他者が残したごみの形を写し取り、そこに樹脂を流し固め透明な立体作品をつくりあげています。
誰かが存在した「確かさ」と、人間が無意識のうちに作り上げている「創造性」を表現した作品です。


潰れたペットボトルや空き缶をかたどったものが配置されていましたが、ひとつとして同じ形のものはなく、このごみを生み出した「誰か」の存在を感じることができました。
ここにごみを放った人だけでなく、雨に打たれ、風に吹かれて特有の形になっている背景にまで思いを馳せることができる作品でした。



前編はここまで!
身近なものから着想を得ながらも、今まで見たことがない斬新な作品になっているものが多かったです。
後編でもまだまだ個性溢れる作品たちを紹介していきます!お楽しみに!

(編集/あみてぃ)