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顔の見える関係性を目指して~地域に合った防災への意識づくり

神戸市では各小学校区を基本的な単位として、192地区で自主防災組織「防災福祉コミュニティ」が結成されています。
防災福祉コミュニティ、通称「防コミ」では、阪神・淡路大震災の経験から、災害活動の訓練などを実施し、初期対応に備えています。
2024年3月3日(日)には、名倉小学校で長田区総合防災訓練が実施されました。名倉地区の住民を中心とした参加者約350名が、土のう作成訓練や避難スペース、仮設トイレの組み立て、救護所運営訓練などを行いました。
名倉地区防災福祉コミュニティ本部長である植野久仁子さんに、名倉防コミでのお話をお伺いしました。

救護所運営訓練(長田区総合防災訓練)

-記者-
防コミとはどのような団体なのでしょうか?

-植野さん-
1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生した際、消火や救急活動・避難誘導などの災害活動は、消防や警察をはじめとした行政機関の力だけではどうすることもできず、地域住民の自主的な活動が大きな力となりました。この地震で学んだことや知恵を忘れず伝えていくために、神戸市では毎年1月17日を「市民防災の日」とし、同時に防災福祉コミュニティが結成されました。
防コミは自治会・民生委員・青少年育成協議会・PTAなど地域住民に関連する様々な組織が集まって構成されています。近隣住民同士で助け合い、いざという時に動けることを目的に活動する団体です。

-記者-
防コミの普段の活動の様子を教えてください。

-植野さん-
防災訓練をはじめとして、地区防災計画である「地域お助けガイド」が災害時に有効な内容であるかの見直しや、近隣の学校との連携により年間を通じて様々な活動を行っています。12月には、自治会や消防団の方と一緒に年末警戒で町内をまわりました。他にも、消防署主催のリーダー研修会に出席するなど、防コミメンバーの知識や経験の向上に励んでいます。
小さい頃から防災意識を高めてもらうために、子どもへの防災教育を特に大切にしており、防災に対する考え方を楽しみながら身に着けてもらおうと、名倉小学校の児童を対象に「名倉防災キッズ」を募集しています。夏休みになると「防災教育ツアー」を実施しており、例えば、人と防災未来センターや自衛隊の駐屯地など、子ども達とこれまで様々な場所へ行って防災や災害について学習しました。
3月3日の防災訓練の日は寒かったので参加者が集まるか少し心配でしたが、子ども達も大勢参加してくれたのがよかったですね。

丸山中学校の生徒達とも連携を深めており、災害時は即戦力として生徒達に大きな力を発揮してもらえることを期待しています。生徒会の生徒達を中心に、中学校内外の行事や訓練に積極的に参加して活動してもらっています。

丸山地区防コミと合同で、消防団の指導により長田区北部に位置する獅子ヶ池での放水訓練も行っています。

獅子ヶ池での放水訓練

-記者-
植野さんが防コミに入られたきっかけを教えてください。

-植野さん-

2002年の6月に、当時から本部長として就任しました。
名倉地域福祉センターができた時に、センターの防火管理者をしていたので、そのまま本部長も引き受けて欲しいと頼まれたのがきっかけです。その時、消防団に入っている人は本部長になることはできないという条件があったので。

段ボールベッドの組み立て(長田区総合防災訓練)

-記者-
災害に備えるために大切なことは何だと思いますか?

-植野さん-
地域の人同士で仲良く、顔の見える関係性を築くことだと思います。
いざという時に、いつも声をかけてくれている人の方が安心できると思います。そのためにも、日頃からの民生委員との繋がりも必要だと考えています。

名倉小学校への避難(長田区総合防災訓練)

-記者-
活動の中で、何か課題はありますか?

-植野さん-
名倉地域は商売人やサラリーマンの多い地域なので、防コミに限らず地域活動に参加できる男性が少ないことは課題だと感じています。そこをカバーできるように、小学校との繋がりを大切にして先生達に色々と助けてもらったり、逆に女性の力や優しさの部分を上手く活かせるように心がけています。
また、防災コミメンバーが70歳を超えている人が多いのが現状です。イベントそのものに参加すること自体は好きな人が多くても、企画段階から参加するとなると、若い人にとってはハードルが高いみたいです。日中は学校や仕事などがあるので無理もないことですが…。

炊き出しの配布(地域総合防災訓練)

-記者-
今後、力を入れていきたいことはありますか。

-植野さん-
名倉地区は地形の関係上、土砂災害への備えが大切だと考えています。長田区総合防災訓練では土のうを作成する訓練も行いましたが、今後はより本格的な訓練に取り組めたらいいなと考えています。
安全を確保して、無理せず自分たちでできる範囲で、安心してこの町で暮らせるまちづくりを目指します。

土のう作成訓練(長田区総合防災訓練)