補助金について

今回は補助金関係の話をしようと思う。
昨今のコロナ禍により補助金や助成金といったものが以前より身近になったように感じる。多くの人が利用しているところで言うとGo to travelやGo to eatが挙げられるかと思う。一方で、中小企業や個人事業主が使うことができる補助金や助成金は、いざ利用しようと思ったところで、申請が面倒くさくスルーしてしまう人も多いだろう。そこで今回は助成金のひとつであるものづくり補助金について、概要と申請にどのような事が必要かまとめていこうと思う。

1.概要
まずはものづくり助成金について説明していく。ものづくり助成金は四半期毎に募集される助成金であり、事業を進める際の、商品の開発やシステム開発費用、システム導入や知財関係の費用等幅広い用途に使用できる補助金である。直近の募集期限は11/11、その次は23年2/8となっている(8/28現在)。助成金として受給可能な金額は会社規模により変わるが750万〜1250万ほど受給が可能である。補助率に関しては、後述する申請枠と従業員数によって決まるが、1/2もしくは2/3となっている。
申請枠の種類は5種類あり、「回復賃上げ枠」「雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル展開型」となっているが、「グリーン枠」(温室効果ガス低減等)と「グローバル展開型」(海外進出等)に関しては、使用可能な会社や個人が限られるため、「回復賃上げ枠」「雇用拡大枠」「デジタル枠」についてさらに詳しく説明していく。

2.申請要件
申請要件についてだが、「回復賃上げ枠」「雇用拡大枠」「デジタル枠」それぞれで申請要件が異なる。この章で要件を確認し、各々の事業に当てはめて申請可否を確認してもらえればと思う。
「回復賃上げ枠」と「雇用拡大枠」の要件は被っており、以下の3点が要件となっている。

要件1:前年度の事業年度の課税所得がゼロであること
要件2:常時使用する従業員がいること
要件3:補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支払額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること

要件1が最も問題となる要件かと思われる。昨年度に業績を上げてしまっている場合、「回復賃上げ枠」「雇用拡大枠」での申請は難しい。一方会社を作ったばかりの場合や昨年度事業がうまくいっていない場合、これらの枠は非常に申請しやすいかと思われる。
なぜなら要件2は個人事業主の場合本人、中小企業の場合にはある程度の従業員がいることが想定でき、要件3については、要件1を満たしている時点で昨年度の時点では利益が出ていないことが想定されるためである。
もちろんそれだけで申請できる訳ではないが、ここまでで申請可能な見込みがあるのであれば、「デジタル枠」ではなく、「回復賃上げ枠」もしくは「雇用拡大枠」での申請をお勧めする。
次に「デジタル枠」の要件について説明していく。「デジタル枠」の要件は以下の通りである。

要件1:DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること、デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善であること
要件2: 経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DX推進に向けた現状や課題に対する認識を共有する等の自己診断を実施するとともに、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構に対して提出していること
要件3: 独立行政法人情報処理推進機構が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」いずれかの宣言を行っていること(参考URL https://www.ipa.go.jp/security/security-action/mark/index.html)

要件1については、IT系の内容であればほぼ問題ない。一方で要件2,3については少し手間がかかる。それぞれのサイトにて登録が必要となっており、内容は難しい内容ではないものの工数がかかってしまう。「回復賃上げ枠」「雇用拡大枠」をおすすめした理由はここにある。ただし、事務処理手続きが面倒なだけであるため、後述の申請書類を作成できるのであれば、申請することを検討する価値はあると思われる。

3.申請書類
申請に必要な書類は以下の7種類
・事業計画書(A4 10枚程度)
・賃上げの声明書(直近の最低賃金と給与支給額を明記して、それを引き上げる旨の誓約書)
・決算書(直近2年の貸借対照表・損益計算書など)
・従業員数の確認資料(個人事業主の場合:青色申告書の写し)
・労働者名簿(応募申請時の従業員情報)
・課税所得の状況を示す確定申告類(「回復型賃上げ枠」「雇用拡大枠」のみ)
・その他加点に必要な資料
①成長性加点:経営革新計画承認書
②政策加点:デジタル技術の活用及びDX推進状況(デジタル枠)
③災害等加点:事業継続力強化計画認定書
④賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大の場合)

上記のうち「決済書」「従業員数の確認資料」「労働者名簿」「課税所得の状況を示す確定申告類」の準備は容易かと思われるので説明を割愛する。最も工数が掛かるのが事業計画書の作成である。
この事業計画書の内容が助成金の審査が通るか通らないかの一番の評価ポイントである。そこで以下に事業計画書に盛り込み必須な事項を以下にまとめる。審査ポイントについては次章で詳しく説明する。
まず事業計画に折り込み必須内容が以下3点である。
①事業者全体の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)を年率平均3%増加
②給与支給総額(給与・賃金・賞与)を平均年率1.5%増加
③事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円の水準にする

こちらの内容も「回復賃上げ枠」「雇用拡大枠」であれば達成はある程度見込みを立てられるかと思う。一方で、「デジタル枠」の場合、それなりに事業も軌道に乗っている状態が予想されるため、それなりの事業計画とそれを遂行する能力が必要とされる。
もし事業計画を立てることができたとしても、遂行できなかった場合には、返還が要求されることがあるため、注意してほしい。ちなみに具体的な返還要件は以下にまとめる。
① 申請時点で、賃上げ計画を策定していないことが発覚した場合は全額返還
② 事業計画終了時点で給与支給総額要件が未達の場合、「残存簿価等 ×補助金額/実際の購入金額」を返還
③ 毎年度末(毎年3月)時点で最低賃金要件が未達の場合、「補助金額/ 計画年数」を返還

次に「賃上げの声明書」だが、こちらは事業計画書を作成することで自然と内容は決まることが想定されるため、こちらも作成は容易である。最後に「その他加点に必要な資料」についてだが、こちらは可能な限り作成し、提出することが望ましい。ただし、事業を行っている人数によっては、そこまでの工数を割くことは難しい可能性もあるため、各々の判断に任せる。基本的に事業計画書を作成した時点で、審査ポイントの内容で足りない点が有ればこちらで補足はしておきたいところである。

4.審査ポイント
ものづくり助成金の審査ポイントは下記の3点である。
① 技術面
・取り組み内容の革新性
・課題や目標の明確さ
・課題の解決方法の優位性
・技術的能力
② 事業化面
・事業実施体制
・市場ニーズの有無
・事業化までのスケジュールの妥当性
・補助事業としての費用対効果
③ 政策面
・地域経済への波及効果
・ニッチトップとなる潜在性
・事業連係性
・イノベーション性
・事業環境の変化に対応する

事業内容にもよるが項目①,②は比較的書きやすい内容かと思われる。自分たちが行なっている事業の強みを整理して、以下にして業績を増やしていくことが出来るかを上手く整理して欲しい。一方で項目③については、通常の事業計画を策定する際にはあまり考慮しない点かもしれない。特にIT事業となると地域経済との関わりやニッチトップとなる潜在性は低いかと思う。そこで書きやすい点としては、技術面と絡めたイノベーション性やその他事業との過去の携わり方を踏まえた連携性、またコロナ影響を含めた事業環境の変化などの内容が書きやすいかと思われる。

5.まとめ
今回はものづくり助成金について、概要と申請方法を整理した。助成金の申請は最初は大変かと思われるが、一度行えば他の助成金の申請にも併用可能な資料となる場合が多い。そのため、このコロナ禍という機会に是非申請することをおすすめする。また、時間があれば別途併用可能な助成金や補助金についても詳細を整理できればと思う。

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