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中高生時代に調べたクマムシのこと

クマムシは私にとって、少し特別な生き物だ。「特別」とか書くと、お笑い芸人のクマムシが漂うが、今回は、生き物のクマムシについてである。私は、中高生の頃クマムシについて探求していた。

1年ほど前のnoteでもクマムシについてのエッセイを書いた。今回は、探究を通じて調べたクマムシの最強たる由縁や当時調べていたことを書いていきたいと思う。

私は今大学生だ。バイオミメティクス(自然界の生物学的なプロセスや構造から学び、それを人工的な技術やデザインに応用する学術分野)に興味があるが、中高生の頃調べていたことが、私の考え方によく反映されているなと感じる。クマムシについても、この最強たる特徴をどのように応用できるかを考えていた。

まず、クマムシが最強と言われている由縁を10個ほど挙げてみる。

・151℃に耐える。
・-273℃(絶対零度)にも耐える。
・75000気圧にも耐える。
・真空にも耐える。
・放射線にも耐える。
・宇宙空間でも生存する。
・量子もつれ状態になっても生存する。
・ガス銃で飛ばされても生存する。
・DNAに電気シールドを張る。
・共通テストに出現して受験生を困惑させる。

放射線耐性は人間の1000倍ほどもあるらしい。DNAに電気シールドを張るという研究は、近年、そのインパクトの強さからも話題になった。なぜ、このような耐性を獲得できたのか不思議でならない。有り余るスペックである。
10個目は、ネタみたいになってしまったが、このように科学者たちにいじめられたり、受験生から嫌われているかわいそうな(?)生き物である。

これほどの耐性は、クマムシのクリプトビオシスに由来する。クリプトビオシスは、「隠された生命活動」という意味らしい。なんだか、かっこいい。体内の水分を3%ほどまで減らした状態である。このような働きは、体内に蓄積されるトレハロースによるものであると言われている。

クリプトビオシスを行う生き物は、クマムシのほかにネムリユスリカやワムシなどがいるが、これらは、クマムシほどに耐性を持たない。どうやらクマムシは、さらにクマムシに特異的に存在するタンパク質によってこれほどの耐性を獲得しているらしい。

私は、この耐性がコケ植物の乾燥耐性と関連するのではないかということを調べていた。一般的なクマムシはコケ植物に生息している。生息場所となる植物の乾燥耐性とクマムシの乾燥耐性に何か関連があるのではないかと考え、植物ホルモンのアブシシン酸についてなどを調べていた。

残念ながら、クマムシを培養しようとしたところで、研究は終わってしまった。しかし、学校での「浅く広く耕す」ような学習ではない、「深い井戸を掘る」ような探究活動ができたのは、私にとって大きな経験となった。

最近観察したクマムシ。久々のご対面。

クマムシは、共通テストに出現したことやお笑い芸人のクマムシなども相まってコンテンツ力もある。今でも、クマムシについて簡単なプレゼンテーションをすることがあるのだが、質疑応答で、「芸人のクマムシとの違いはなんですか」といった冗談まじりの質問をされることがある。これに対して、「自然界のクマムシは乾燥しても復活するが、芸能界のクマムシは復活しない」といったブラックジョークで返すのが私の十八番になりつつある。そうすると、だいたい聞いている人たちは笑ってくれる。あったかい方々で良かったな、と言ってからいつも安堵する。


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