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ミュヲラの拡大を観測する 幽体コミュニケーションズ×グソクムズ

7月26日、唐突にある曲がリリースされた。幽体コミュニケーションズの『ミュヲラ』である。この幽体コミュニケーションズというバンドは、4月頃に君島大空さんが名前を挙げていて、そこからずっと注目していたバンドだ。ポップな曲調のなかに、混沌とした雰囲気を持っている楽曲が多く、私はすぐにファンになった。

そんな幽体コミュニケーションズが、『ミュヲラ』7inchアナログのリリースを記念して、3都市でリリースツアーを行うとのことだった。そのうちのひとつが愛知鶴舞で行われる。この機会を逃すわけにはいかないと思い、私は急いでチケットを購入したのであった。

当日、幽体コミュニケーションズのプレイリストを聴きながら鶴舞へ向かう。今年は、太平洋高気圧の影響で9月でも暑い。車窓から見える山脈の上の空に入道雲が広がっている。JRの列車特有のくすんだ車窓も楽曲を拡張するまどろみにように思えてくる。と思った瞬間に隣に座っていた方にブラインドをおろされる。残念。

電車に揺られながら、幽体コミュニケーションズのプレイリストを全て聞き終えた。幽体コミュニケーションズの音楽は、喧騒と調和する音楽なのだと改めて実感する。まだ10曲ほどしか音源がリリースされていないので、これからの活躍も楽しみだ。
そして今回のライブは対バン相手として、東京吉祥寺を中心に活動しているシティフォークバンドのグソクムズも出演する。最近よく聴いている『いつか渚へ』も聴けるだろうかと期待しながら、名古屋へ向かう。

名古屋についた。会場へ行く前に、楽器店に寄ってギターを見ようと思い、地下鉄に乗り換える。

クロサワ楽器名古屋店。はじめて来たのだが、ビルの下にある綺麗なお店だった。並んでいるギターを見ていると、店員さんが話かけてくれた。
私はFenderのテレキャスターをそろそろ買いたいと思っている。幽体コミュニケーションズの吉居さんもこのギターだ。
「できれば、向井秀徳さんのような赤と白のものがいい。」店員さんにそう伝えると、ギターを紹介してくれた。私が欲しいと思っているギターだった。
店員さんはすぐに試奏の準備をしてくれた。弾いた瞬間にFenderのテレキャスター特有のジャキジャキサウンドがなって感動した。勢いで買ってしまいそうになったが、約13万円……。「バイト頑張ってまた買いに来ます。」と言って、店を後にした。

会場のK.Dハポン-空地-へ向かう。地下鉄鶴舞で降り、JRの高架に沿って進む。Google Maps では、線路上にピンが立っているが、いったいどこにあるのだろう。高架下を何度もくぐりながら歩くとたどり着いた。
高架下のコンクリートに小さいカフェが埋まっている。これは予想外だった。

ライブが始まる。ときどき線路を走る電車の音が聞こえるのも非日常的で新鮮だ。客席を含む全体が見渡せる二階席に座った。
まずは、グソクムズ。たなかえいぞをさんのボーカルに感動した。音源で聴いていた声をライブでそのまま目撃することができた。
楽しみにしていた『いつか渚へ』も最後の方で演奏された。この曲は、さっぱりとした歌詞も好きだ。会場の雰囲気と調和した演奏が聴けて、とても穏やかな気持ちになった。

次は幽体コミュニケーションズ。エフェクターがたくさん運び込まれて行く。さあエフェクター祭だと身構える。
オープニング。payaさんといししさんが向かい合い、詩の朗読を始める。iPhoneから流れるトラックとも相まって、なにかが召喚されそうな勢いである。payaさんの倦怠感のある歌声と吉居さんのギタープレイに魅了された。

ときどき詩の朗読を挟みながら、ライブが進んだ。音楽と文学を行き来する様なスタイルも幽体コミュニケーションズならではなのかもしれない。

アンコール。payaさんが『ミュヲラ』について語ってくれた。
「ミュヲラという言葉には意味がない。あえて意味がない言葉をタイトルにつけた。意味がない言葉が、世に放たれてどのように変化するか、どのような性格になるかに興味があった。」と話していた。そして未発表の楽曲『座礁(仮)』が演奏された。

物販でグソクムズのCDと幽体コミュニケーションのCD、Tシャツを買って帰った。幽体コミュニケーションズのCD『(汽水のコピー)』の歌詞カードはいろいろな形で焼きが入っている。アンコール後にミュヲラという言葉について語っていたことからも、消費される時間について考えているバンドなのだろうなと感じた。サインも書いてもらえた。嬉しい。

JRの駅まで走った。気分が高揚していたから、だけではない。あと10分でくる次の電車が終電だからだ。


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