ショートストーリー マンゴープリン

南国の濃厚な甘さ。
本物とは程遠いであろう人工的な滑らかさと甘ったるい香り。
ホンモノとは遠いソレ。
だけど、目を瞑って舌に乗せるだけで私を遠い南の国に連れて行ってくれる夢の味だ。

数年前に購入したパンフレットを私は、ベッドに寝転がって見返した。
橙色のマンゴープリンは零さないよう、気をつけて。

私が動くたびにベッドの足が、ミシミシと悲鳴をあげている。
買い換えようと思って先伸ばして一年。
この頃は、本格的に危なくなってきている。

右に左に体の重心を傾ければ、プリンよりも容易くベッドが揺れ動く。
まるで、ハンモックだ。
私の髪を悪戯に揺らすのは、南国の風ではなく小型扇風機。
数年前に頓挫した南の国の旅行を夢見て、私はマンゴープリンを味わう。
ゆらりゆらりと体でベッドを揺らして。
ベッドが駄目になる前に、また行けるようになるかしら?
と呑気なことを考えながら。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。