ショートストーリー 三色団子とみたらし団子
「あなたの方が人気だよ」
「いえいえ、あなたこそ」
彼らが集まると始まるのはロマンス。
「だって、あなたは見た目鮮やかだ。誰もが羨む彩り。美しいものに惹かれない人間なんていません」
確かに彼女は、桃色と白色とうぐいす色を纏い、目に優しい色を持つ。見れば誰もがときめく。
「そんなことを言っても、貴方だってキラキラと輝く衣を纏っているではありませんか。光を帯びた黄褐色は、誰の目をも奪います」
彼は、優しい言葉をかけられ、照れくさそうだ。しかし、すぐに憂い帯びた瞳になる。
「それは、僕が纏う衣が美しいというだけです。僕は、衣で焼けた肌を隠しているに過ぎません。あなたのように、本来の自分を前に出すことが出来ないのです」
淡色の彼女も彼の悲しみに当てられ、目を潤ませた。
「そんなことは、ありません。私など、見た目は確かに綺麗に彩られているかもしれませんが、中身はただ甘いだけです」
彼女は、彼の黄褐色の衣の隙間から見える焼けた肌を見つめ、こう続ける。
「それに焼けた肌は、私には無いあなたの個性。私には、とても素敵に思えます」
彼女の桃色がさらに色づいた。
彼は、ハッとし彼女と目を合わせる。
「三色団子さん」
「みたらし団子さん」
互いの目しか見えない彼らは、この時間は永遠のように思えた。
『いただきまーす』
一人の女が桜の木の下でモチモチの団子を頬張る。
花より団子なんて、同僚には笑われるが好きなんだから仕方がない。
今日は花見の場所取りで、先に団子を食らう。
『今日の三色団子は少し赤みが強い気がする。みたらし団子も、いつも以上に照りがあるような……。製法変えたのかな?』
団子達がロマンスを繰り広げているなか、それを食べる女は、ロマンもムードもなくビールで流し込んでいた。
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