ショートストーリー 石焼きビビンバ

キムチ以外で初めて食べた韓国料理。
鍋に押し付けられて焼かれる飯に、潰していいのかとハラハラした。
それまで、飯を潰すなんて餅かおはぎくらいだったからだ。

肉やナムルをグチャグチャに混ぜるのも、不安になった。
ご飯を汚すなの文化で育った私とは、真逆の食べ物。まさに未知だった。

とはいえ、食欲そそる香りには抗えない。
欲望のまま、一口食べれば世界は変わる。
甘辛な肉とナムルの虜だ。

シャキシャキのモヤシ、コッテリ味の肉と、香ばしく焼けたおこげが混ざり合う触感。
一口目から完成されたうま味。
もっともっとと飲み込むのも早くなる。
同時に、噛むときの音を永遠に楽しみたくなる。
満腹になるのが惜しいのに、考えに反して鍋の中身は猛スピードでなくなる。

最後の一口が名残惜しくなる。
この気持ちは、初めて食べた時も韓国料理が普及してきた現在も変わらない。
飯を潰して焦げを作るのも上達し、具とご飯を混ぜることにも抵抗なくなった。
気付けば、韓国料理の文化が一部になっていた。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。