ショートストーリー ハンバーグくじ
好きなだけ付けれるタレをベチャベチャに塗る。
甘辛い濃いめのソースが安っぽい美味しさに拍車をかける。
ハズレの一本は、大切に食べる美味しさ。
当たりの二本は、あっという間になくなる美味しさ。
大当たりの三本は、皆で分ける美味しさ。
ハンバーグの味付けはクジに全てかかっている。
それぞれに味が違う。
それこそが美味しさの秘訣。
地方特有の屋台らしい。
確かに、串に刺さったハンバーグも、その本数をくじ引き形式で決めるのも、少し田舎臭く思える。
大人になって、都会を知れば知るほどそう思う。
だが、その田舎っぽさが私は好きだ。
都会とは真逆にあるからこそ、夏になると子どもに戻れる。
あの頃は、くじに願いを込めていた。
三本なら好きな子に会える。
二本ならいい事がある。
毎回ドキドキしてたし、一本でもハンバーグは美味しかったから、それだけで幸せだった。
お盆に帰る時の、一回だけのチャンスにドキドキする。
それは、夏休みに友達と運試しをした記憶と同じ緊張。
鉄板でせっせとハンバーグを焼くオジサンにお金を払う。
訛りの激しいお礼を聞いてから、スーハーと深呼吸をする。
なんだか分からない肉の焼ける匂いを鼻の奥まで感じる。
香ばしい匂いは、都会の忙しなさとカッコ良さに馴染むために毎日、必死で食らいついている私の肩の力を抜いてくれる。
今年の運を占って欲しい。
願いを込めたくじは、当たりの三本。
幸先良いスタート。
とりあえず、三本ともベタベタにソースを塗って地元の友達を探し歩いた。
約束はしていない。
でも、三本だったから会える気がした。
好きだった彼にも会う予感がして、お守り代わりのハンバーグをちびりちびりと味わった。
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