ショートストーリー チキンナゲット

五つだけの幸せ。
もったいぶって、チマチマかじる。
マッチ売りの少女みたいに、一つとっては願掛けをする。
早く来い。早く来い。
先週のバーベキューを思い出すソースをつけて、また一口かじる。
サクッと、ジュワッと、フワッと。
肉のうま味がソースと混じる。

バーベキューがあったから、彼と会えた。
ある時、大学の友達に誘われて行ってみたら、知らない男の子まで居合わせて、人見知りの私は思わず身構えた。
影で友達に抗議すると、人見知りの矯正だと笑われて終わった。

確かに、就職活動では不利になる性質だけど、今知った人と急に仲良くできるわけなんか無い。
そうやってふてくされて、ひたすらに肉を焼いていた。
彼は、そんな私のことを気にかけてくれた。

最初は、彼が何を言おうと、不機嫌を隠すことなく返事を返していた。
とっつきにくかっただろうと自分でも思う。
それでも、めげずに面白い話を隣りで語ってくれた。
帰る頃には、別れ惜しむほどになっていた。
気付けば、自らデートに誘っていて。
何度かデートを重ねて、ファーストフード店の二階窓際がお決まりの待ち合わせ場所になった。
だけど、まだ彼女にはなってない。
最後の一つに願いをこめる。

食べ終わる頃に、店に入ってくる彼の姿が見えた。
私のところにやってきた彼は、すぐに先週の話を喋りだす。
バーベキューソースの香りは、彼にも先週のバーベキューを思い出させたようだった。

沢山の記事の中から読んで頂いて光栄に思います! 資金は作家活動のための勉強(本など資料集め)の源とさせて頂きます。